VW問題→ドイツ経済に大打撃

独フォルクスワーゲン(VW)<VOWG_p.DE>の米排ガス規制逃れはドイツの産業界や政界を揺るがしており、アナリストの間からは欧州随一のドイツ経済にとって最大の脅威になりかねないと危惧する声も出ている

VWはドイツ最大の自動車メーカー雇用も最大級で国内の雇用者数は27万人を超え、部品納入業者も加えればさらに膨らむ。しかし米当局の排ガス規制試験での不正が明らかになって23日にはウィンターコーン最高経営責任者(CEO)が辞任に追い込まれたことからアナリストはドイツ経済への影響を推し量り始めた

INGのチーフエコノミストのカルステン・ブルゼスキ氏は「突如としてVWはドイツ経済にとってギリシャ債務危機を凌ぐ下振れリスクになった」と指摘「VWの北米での売上高が今後数カ月で落ち込めば、その影響はVWだけにとどまらずドイツ経済全体に及ぶだろう」とした。

VWの昨年の米国での販売台数は約60万台で、全世界の販売台数(950万台)の約6%に相当する

米環境保護局(EPA)はVWに最大180億ドルの罰金を科すとしている。これは同社の昨年の営業利益を上回る。

VWの手持ちのキャッシュは210億ユーロ(240億ドル)に上り、罰金を支払って余りあるが、それでも今回のスキャンダルで大量人員削減の不安が高まっている

ドイツ政府にとって大きな懸念はダイムラー<DAIGn.DE>やBMW <BMWG.DE>など他の国内大手への影響の波及。ただ今のところ両社の不正を示す材料は出ていない。

ドイツ経済省の報道官は自動車業界について「ドイツにとって極めて革新的で成功を収めた産業だ」と述べた。しかしアナリストは、こうした自動車産業への依存体質こそがドイツの経済見通しを脅かしかねないと指摘する

ドイツ経済研究所(DIW)のマルティン・ゴルニク氏は「自動車の販売が落ち込めば部品納入業者も打撃を受け、その影響は経済全体に及ぶだろう」とした。

昨年のドイツの自動車産業全体の労働者数は77万5000人で、全労働者数の2%に近い

さらに自動車・自動車部品セクターはドイツにとって最も優良な輸出産業だ。昨年の輸出は2000億ユーロ(2250億ドル)と、全輸出の約5分の1を占める

IW経済研究所のミヒャエル・ホイサー所長は「今回のスキャンダルを軽視できないのはこのためだ。ドイツ経済の核を直撃した」という。

<「メード・イン・ジャーマニー」に傷>

一方で今回の問題の経済全体への影響を過度に見積るべきではないとの見方もある。

コメルツ銀行のチーフエコノミストのイェルク・クレメル氏は「ドイツの自動車産業全体が道連れになることはない。企業1社のせいで景気後退に陥ることはありえない」と話す。

ドイツ卸売り・貿易業界連合会(BGA)も「メード・イン・ジャーマニーの表示に全般的な疑念が生じているわけではない」(マネジングディレクターのアンドレ・シュワルツ氏)と事態の鎮静化に躍起だ。

しかしそのシュワルツ氏もドイツ企業の間に今回のスキャンダルが連鎖反応を起こし、メード・イン・ジャーマニーの表示が傷つくのではないかとの懸念がある程度あることは認めている

INGのブルゼスキ氏はユーロ債務危機や中国経済の減速など外部からの危機をものともしなかったドイツ経済が国内要因に脅かされるとは「皮肉なことだ」と述べた。

参考 ロイター 2015.09.24

【関連する記事】