VW→あまりにも大きい代償の不正

 フォルクスワーゲン(VW)が、排気ガス基準をクリアするために不正を行った問題が世界中に波紋を投げかけている。米環境保護局(EPA)が不正の疑いを18日に発表したことを発端として、23日にはマルティン・ヴィンターコーン会長兼最高経営責任者が辞意を表明し、24日には米国だけではなく、ヨーロッパでも不正が行われていたとVW側からドイツの運輸相へ報告があった

この不正はディーゼル車排ガス審査の時にだけ有害物質の排出を低く抑えるソフトウエアをVWとその傘下のアウディの直列4気筒ターボディーゼル「TDI」エンジンに搭載されていたというものだ。該当する車種は2009年から15年までに発売されたVWのゴルフ、ビートル、ジェッタ、アウディのA3と、14年から15年に発売されたパサートの計5車種でこのソフトを搭載した車両は世界でおよそ1100万台に上るとされている

日本においてもドイツ車のブランドイメージはすこぶる高いが、米国でも同じだ。特に「環境に対して厳しい目を持っている」という意味では、日本車以上に信頼を長きにわたって米国で得ていた。そう「ドイツ車なら環境対策は万全だ」とユーザーは考えていたのである。それが今回の不正で裏切られた形となった。VWのブランドイメージの失墜はいうに及ばす、メルセデスやBMWなどにも悪影響を与えるのは必至である

ヨーロッパを旅した経験のあるクルマ好きならわかると思うが、街を走る多くのクルマがディーゼル車である。燃費がいいのが受けて、新車販売の約半分のシェアを占めている燃費は、ハイブリッド車のほうが有利だが、車両価格がまだまだ高く、それほどポピュラーでないのが現実である

それでは、どうしてVWは、このような不正を行ったのか。ドイツ自動車業界の帝王といわれ、同社の監査役会会長であったフェルディナント・ピエヒ氏を巡る権力闘争や、米国市場での不振を挽回するためともいわれている。現時点では捜査の進展を待つしかないが、これらふたつの要素を始めとして様々な原因が複雑に絡み合っていることは間違いないだろう。そうでなければ、こんなリスクの大きい不正を行うわけがないからだ。

またVWは、シェア首位を誇る中国での販売不振が響いて、8月まで5ヶ月連続で世界販売が前年実績を割り込んでいる。そこにこの不正スキャンダル。VWが信頼を回復させるまでの道のりは、長く曲がりくねったものになるだろう。(編集担当:久保田雄城)

参考 Economic News 20154.09.27

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