TSUTAYAの格安スマホ→1000円/月

TSUTAYAでは「TONE」という格安スマホが販売されています。通信料金は月額1000円という安さですが、どれほどの実力を備えているのでしょうか?

都市部にお住まいの人は、「TSUTAYA」の店頭でスマートフォンが販売されているのを見たことがないだろうか。MVNO(仮想移動体通信事業者)として今年誕生したばかりの「トーンモバイル」が出している、「TONE」という格安スマホだ。

トーンモバイルは、「TSUTAYA」の運営などを手掛けるカルチュア・コンビニエンス・クラブと、インターネットプロバイダー「DTI」などを傘下に持つフリービットが共同出資する企業だ。オンラインや電話受付でTONEを販売する他、全国16カ所のTSUTAYAでTONEを取り扱っている。実店舗を持たないMVNOも多い中、全国に広く展開するTSUTAYAの店頭で新規契約の受付やアフターサポートを展開できることは、同社にとって一つの強みだ。

そのサービス内容は、他のMVNOとはやや異なる。トーンモバイルでは格安SIMの単体提供を行っておらず、格安スマホ「TONE」とのセット契約が前提となっている。端末のラインナップも執筆時点では「TONE」の1機種のみだ

気になる料金プランも、月額料金1000円(データ通信のみ)の1プランしか用意されていない通信速度は500~600kbpsと低速だが、1GB当たり300円の「高速チケット」を購入することで、最大3Mbpsでの通信が可能とする

また、携帯電話番号を取得できる「音声通話オプション」(月額953円)も用意されており、番号を変えずに通信会社を乗り換える「携帯電話・PHS番号ポータビリティ(MNP)」も利用できる。

端末は低スペックながらも5.5型の大画面

まずはハードウェアからチェックしてみよう。TONEの本体カラーはホワイトのみで、カラーバリエーションはない。画面サイズは5.5型とやや大きめ。重さは189gとなっており、同じ5.5型液晶を搭載するiPhone 6 Plus(アップル)よりも17gほど重い。

この重さのおかげで、TONEにはズッシリとした存在感がある。大人でも片手操作はやや難しく、手の小さな女性や子どもの場合は両手での操作が前提になるだろう。

●大画面だが解像度は低め、処理性能は標準レベル

以下の表は、TONEのハードウェアスペックをまとめたものだ。

5.5型の液晶画面の解像度は960×540ドット(約200ppi)となっている。同じ5.5型の液晶を搭載するZenFone2(ASUS)やiPhone 6 Plusなどは、フルHD(1920×1080ドット/約400ppi)対応となっており、スペック的にも低い。

実際の表示画面もスペック通りで、フォントの縁がにじんだように表示される場合もあるし、写真や動画などの映像コンテンツでは粗さが気になることもあった。ただ、操作中、常に画面の荒さが気になるということはないので、実用上問題のないレベルといえそうだ。

CPUは1.3GHzの4コアで、メモリー容量は1GBだ。ベンチマークアプリ「AnTuTu Benchmark」のスコアは20559ポイントだった。

ちなみに「ZenFone 2」(CPUは2.3GHzの4コア、メモリー容量は4GB)のスコアは47627ポイントだった。ハイスペックモデルと比較すればTONEのスコアは低いが、実際に使ってみると遅いと感じることはあまりなく、メモリー容量が1GBの割にはサクサク、キビキビと動く印象を受けた

●microSDを入れることが必要だ

TONEのハードウェアにおける最大のネックは、本体メモリー容量だ。本体の記憶容量はトータルで4GBほどあるのだが、その内の2.5GBほどがシステムに占められている。プリインストールアプリも多く、初期の空き容量が400~500MB程度しか確保されていないのだ。ファイルサイズが大きいアプリも少なくない中、この容量でやりくりするのは正直つらい。

ただし、Google Playストアからアプリをインストールする際、端末にmicroSDカードが挿入されていると、一部のデータをmicroSDカードへ移動させることで、本体の記憶容量を節約できるアプリがある。microSDカードが挿入されていればデータの移動は自動的に行われるので、ユーザーが意識して操作をする必要はない。そのため、一部のアプリについてはTONEの空き容量を上回るサイズでもインストールできる場合があるが、全てのアプリで可能とは限らないので注意したい。

また、アプリの本体をmicroSDカードに移動できる場合もある。アプリの移動は、「設定」アプリの「アプリ」の項目にある「SDカード」タブで行う。移せるアプリを積極的にmicroSDカードへ移動させることで、端末本体のメモリーを節約することが可能だ。アプリ1つずつではわずかな節約量でも、インストールしたアプリの本数が増えるほど効果が出てくるだろう。

なお、microSDカードには、写真や動画、文書ファイルの保管などにも使用できる。端末本体のメモリーが少ないため、事実上microSDカードが必須といえるだろう。TONEの購入と合わせて入手することをおすすめする。

●体感の通信速度は公称値よりもずっと速い

続いて通信品質をチェックしてみよう。前述のように、トーンモバイルの通信速度は500~600kbpsと低速だが、実際はどれくらいの速度で通信できるのだろうか。通信速度の測定には、株式会社イードの速度計測アプリ「RBB TODAY SPEED TEST」を使用した。

時間帯を変えつつ何度か測定してみたが、いずれも1.2~1.4Mbps程度の速度が得られた。公称の通信速度に対して2~3倍ほどの速度が出ていることになる

実際にWebサイトを閲覧したり、Twitterアプリでタイムラインを読み込んでみたりしたが、体感速度は公称値よりもずっと速く、予想外に快適だった。写真や画像が多用されているPC向けのWebサイトでは読み込みに時間が掛かる場合もあったが、スマートフォン向けのサイトであれば概ねストレスなく閲覧可能だ。

ただ、Webサイト上の画像ファイルに対しては通信の最適化による圧縮が掛けられることが多く、画像の「荒れ」が少々気になった。YouTubeの動画も再生してみたが、2~3分程度の動画でも読み込みに2~3分ほど掛かったり、動画によっては全く再生できないものもあったりした。

また、TONEでは別途高速チケット(300円/1GB)を購入することで、通信速度を最大3Mbpsの高速モードに切り替えられる。実際に高速チケットを購入し、その速度を計測してみると、最大でも1.5M程度。スタンダードモードの通信速度とほぼ変わらない速度しか得られなかった。

高速モードといいながら、Webサイトの読み込みにおける体感速度やYouTubeの読み込み時間も、スタンダードモードとほとんど変わらない。通信速度の高速化という観点からは、スタンダードモードと高速モードに違いは見られなかった。

ただし、スタンダードモードには「1日あるいは3日間の合計通信量が300MBまで」という短期間の制限が設けられている。高速モードにはこうした制限がないので、使いすぎによる通信速度規制を受けないための機能とすれば、実用性も見えてくる。なお、筆者は長野県の佐久市という地方都市に在住しており、今回の回線速度測定も佐久市内で行っている。都心などの大都市部とは3Gの通信環境が異なっている可能性があることをお断りしておく。

●独自のホーム画面は3種類から選択可能

続いてはTONEにプリインストールされている独自アプリや、TONEから利用できる独自サービスをチェックしてみたい。

最初はホーム画面だ。TONEにはAndroidの標準ホーム画面の他に、「TONEホーム」という独自のホーム画面アプリがインストールされている。

TONEホームでは3種類のテーマが選べる。「スタイル」はらくらくスマートフォン風のテーマで、「カメラ」「電話帳」「調べる」といった動作の目的別にアプリへのショートカットボタンが配置されている。目的別ボタンの下には任意のアプリや電話番号・Webサイトへのショートカットを配置できるボタンがあり、標準ではトーンモバイルの各種サービスやTSUTAYAに関連したアプリやショートカットが配置されている。

「シンプル」も機能的には「スタイル」と同じだが、大きめの文字で機能を示しており、シニア層を意識した作りになっている。

もう1つの「Teen」は、後述する「TONEファミリー」と連携したテーマ。起動できるアプリや利用時間に制限を施すペアレンタルコントロールに対応している。テーマ名が示すように子どもの利用を想定しており、TONEファミリーで許可されたアプリしか起動できない仕組みになっている。

なお、いずれのテーマもタップ時の振動や反応するまでの時間などを好みに合わせて変更できる。また、Androidの標準ホーム画面に変更したり、任意のホーム画面アプリをインストールしたりすることも可能だ。

●通話料の安いIP電話サービスを標準提供

TONEには050番号のIP電話サービスが標準機能として付帯する。070/080/090の携帯電話番号が利用できる「音声オプション」(月額953円)を契約しなくても、IP電話を使った音声通話が可能だ。通話料は携帯電話宛てが1分当たり21円、固定電話宛てが3分当たり13円。音声オプションの通話料(30秒当たり18円)よりもお得に通話ができる。

TONEホームの「IP電話」をタップすると、IP電話アプリが起動する。一般的なスマートフォンの電話アプリと同様、キーパッドから番号を入力して発信したり、着信履歴を参照したりできる。また、電話が掛かってきたときはIP電話アプリが自動的に起動して着信を知らせてくれるので、携帯電話番号と同じように待ち受けられる。

IP電話はインターネット回線を利用して音声通話を行う。通話品質は回線の品質に左右されるが、低速のトーンモバイルではどうだろう。実際にIP電話で通話を行ってみたところ、相手の声が一瞬欠けるように抜け落ちたり「ザー」というノイズが入ったりすることもあったが、携帯電話回線での通話と比べて極端に劣るほどの品質ではなく、常用できるレベルだと感じた。

●コンテンツの一括管理やPC連携に便利な「One」

スマートフォンでは写真を撮ったり音楽を聴いたりメモを作成したりできる。一般的なスマートフォンではそれぞれ別々のアプリで写真を見たりファイルを開いたりするが、TONEの場合は「One」という1つのアプリだけで、ファイルの表示やメモの作成ができる

Oneは「聴く・視る」「つくる」「買う」の3つのセクションに分かれている。「聴く・視る」のセクションでは、撮影した写真やオフィス文書の表示、TONE上にある楽曲の再生ができる。「つくる」セクションではシンプルなテキストメモの作成が可能だ。

最後の「買う」セクションでは、「TSUTAYAミュージコ♪」で配信されている楽曲を購入して、Oneの「聴く・視る」セクションの「音楽」で再生できる。楽曲の代金はトーンモバイルの月額料金と合算される「TONE mobile決済」を利用する。

TONE端末上のコンテンツは、Oneを介してパソコンから利用することも可能だ。パソコンのブラウザーからWeb UI版(https://one.tone.ne.jp/)にログインすると、TONEで撮影した写真をパソコンにダウンロードしたり、パソコン上の楽曲ファイルをTONEにアップロードしたりできる。TSUTAYAミュージコ♪で購入した曲をダウンロードして、パソコンで楽しむことも可能だ。

●ペアレンタルコントロールに対応する「TONEファミリー」

TONEでは、見守り機能とペアレンタルコントロール機能がセットになった「TONEファミリー」が利用可能だ。TONEファミリーでは、家族が持つTONEの位置情報を定期的に取得して現在地を表示したり、プリインストールアプリの「ライフログ」で計測した歩数が一定の値に達しなかったときにメール通知を受け取ったりできる。

子どもが使うTONEのホーム画面を「Teen」テーマに固定して、利用できるアプリに制限を設けることも可能だ。単にアプリの利用可否を決定するだけでなく、アプリごとに起動できる時間帯や累計時間を細かく決められる。さらに、TONEそのものにも時間帯によるロックを掛けられるので、夜更かしの防止や授業中の利用阻止にも役立つ。また、保護者と子どもがどちらもTONEのユーザーであれば、無料で利用できるのもありがたい(子どもだけTONEユーザーの場合は月額200円)。

●TONEの総合評価は?

トーンモバイルはTSUTAYA店頭での販売を実施しているが、取扱店舗はまだまだ少なく、地方在住者である筆者もこれまで実機を手にする機会に恵まれなかった。今回実際にTONEを使ってみたところ、想像以上に機敏に動作するので驚いてしまった。子どもだけでなく、大人がメインのスマートフォンとして使ってもいいのではないかと思わせるほどの仕上がりだ。

最大通信速度500~600kbpsという低速の通信回線も相応のものだと思っていたが、実測値はその3倍近くに達する。オンデマンド配信の動画視聴や大容量ファイルのダウンロードには向かないが、WebサイトやSNSの閲覧、IP電話の通話において不自由することはなかった。

ただ、記憶容量の少なさはTONEにとって最大のデメリットだ。microSDに移動できないアプリもあるので、インストールできるアプリの本数は他の格安スマホに比べれば少なくなる。

また、通信の最適化によってWebサイトの画像が劣化することも多いし、最大通信速度の向上を期待してしまう「高速モード」は、実際には短期間制限を回避するための容量追加オプションといった位置付けだ。

ハードウェアのスペックや回線品質だけを見れば、TONEに勝る格安スマホや格安SIMはある。例えば、NTTレゾナントが販売する「gooのスマホ g02」は、Android 5.0を搭載してLTEにも対応していながら、端末価格はTONEより4000円安い2万円だ。

だが、TONEは「端末」「回線」「サービス」が三位一体となって価値を生み出している。プリインストールされている「TONEファミリー」のペアレンタルコントロール機能は、子どもが初めて手にするスマホに最適だ。一方的に制限を課すのではなく、保護者が子どもと相談しつつ、年齢や生活パターンに応じてペアレンタルコントロールを調整していくとよいだろう。

最近は中学生に格安スマホを持たせるケースもあるようだが、ペアレンタルコントロールを標準搭載している格安スマホは限られる。例えば、ASUSの「ZenFone 2」と「ZenFone 2 Laser」には「キッズモード」が搭載されていて、起動できるアプリや端末の利用時間を設定できる。しかし、TONEのようにアプリ1本ずつに対する細かな設定はできない。

また、GPSによる位置情報と歩数計測アプリ「ライフログ」を組み合わせたTONEファミリーの見守り機能は、一人暮らしの高齢者もサポートできる。1日の歩数が一定以下の場合にメールを送る機能があるので、もし何らかの理由で身動きが取れなくなっていても、1日あれば家族や親戚の元に歩数異常の通知がもたらされる。

デジタル好きなユーザーにとってはTONEのスペックと回線速度は物足りないかもしれないが、子どもや高齢者などにとっては、暮らしをサポートするスマホとして適していると感じた。

参考 日経トレンディネット 2015.09.25

【関連する記事】