LINEモバイルは救世主になれるのか?

メッセンジャーアプリとして国内で圧倒的に支持されるLINEがMVNOに参入する。どれだけ期待できるのか? 専門家に聞いた。

⇒国内スマホ普及率と利用率のグラフ

◆「月額500円」でどれだけできるかが成否の分かれ目

今年3月、LINEは新たにMVNO事業に参入し、「LINEモバイル」として今夏のサービス開始を発表したなかでも世間を驚かせたのは「月額500円から」の利用料金を打ち出したことだ

MVNOは自社で通信回線を持たず、NTTドコモやauといった携帯電話事業者から回線の帯域を借り、独自サービスを格安で提供する「LINEモバイル」はNTTドコモの回線を利用し、月額500円の料金やLINE、Facebook(以下:FB)、Twitterの通信が無制限であることを売りにする

『LINEモバイル』がユーザーから歓迎される一方で、熊本地震の際にLINE通話を10分無料と告知したことは、回線への負荷が集中すると批判の対象に今や通信インフラの一端を担う同社だけに、常識外の“社会貢献”に対し、LINEは通信については素人と言わざるをえません」と話すのは、モバイル評論家の法林岳之氏

そんな通信事業に参入する「LINEモバイル」の魅力は、ワンコインから利用できること。それは実現可能なのか?

MVNOは価格競争が激しく、月額1000円以下は当たり前このタイミングの参入ならば、月額500円にそれほど驚きはありませんドコモがLINEにだけ特別価格で回線を提供することはできないので、一定の帯域に多くのユーザーを囲い込むなどして一人あたりの単価を下げるしかないドコモで契約すると5000円以上かかるのに、LINEモバイルだと500円で済むと何も考えず飛びつくと、あとで痛い目に遭う可能性は高いです

そもそもスマホ利用で気になるのが毎月のデータ通信量だ通信速度が低下し、快適に使えなくなる格安スマホもあるなかで、「LINEモバイル」はお得なのか?

多少のメリットはありますが、通話やメールの代替として、ビジネスでLINEが中心となることはないでしょう。まず基本的にログが残らない。電話番号ベースだけど、機種変更のたびに内容を引き継ぐのは面倒くさい。だったら、どこからログインしても使えるFBメッセンジャーや他のSNSで十分ですよね。LINEは個人のプライベートなやり取りに対してのものであって、ビジネスユースで軸になる可能性は低いです

過去の事例はどうだろうか。米国で話題となったFBフォンの売れ行きが大不振だったように、メッセンジャーの雄であるFBでさえも、通信事業への参入は失敗に終わっている

ネット上のサービスを提供する企業が、通信事業に参入してうまくいった例はほとんどないです。まず1社でやることではないし、自社のことしか考えていない事業主が多いので、ビジネスとしてなかなか受け入れられない。FBが米国でFBフォンを出すと発表したときも大騒ぎになりました。これでiPhoneは駆逐されるといった記事もありましたが、冷静になるとFBフォンを持つ必然性がないから誰も買わなかった

15年の国内スマホ普及率は49.7%であり、人口の過半数がスマホを利用していない状況で、LINEはスマホの普及率向上を目論む。しかし、端末とSIMをセット販売するかどうかは未定だ

「最初からLINEの端末で契約すると、あらかじめLINEも登録されているフルパッケージで提供するのか、従来のMVNOと同様にSIMだけの販売で、端末は自前で用意するのか、素人にもわかりやすいサポートをしないとシェアは伸びないでしょうね

MVNO参入に対しては手厳しい法林氏だが、実は注目している新サービスがあると話す。

『LINE Pay』は凄い可能性があると思いますポイント還元率が高いだけでなく、プリペイド式なので、クレジットカードを持たない層や審査に落ちる人でも持てる。それで手数料を稼げれば巨大なビジネスになります。例えば、モバイルで500円かかるけど、それはペイで貯めたポイントで払えるなど、ペイとモバイルを結びつけて事業を展開すると可能性は広がるでしょうね

今ではスーパーや家電販売店、プロバイダーなど200社以上が参入するMVNOだが、’16年はどんな一年になるだろうか?

過当競争が始まって淘汰され、売却される事業者が出てくると思います。LINEのネームバリューには期待できますが、MVNO業界は勝負の一年ですね

【法林岳之氏】

パソコンや携帯電話の評価や解説を手がけるフリーランスのITジャーナリスト。「できるシリーズ」など著書多数

◆LINE広報に直撃!「LINEモバイル」はどうなる?

LINEはコミュニケーションインフラ提供者かつ、コンテンツプロバイダーの立場から、ユーザーごとの楽しみ方に応じた最適なプランが提供できると判断しMVNO参入を決定しました。LINEらしいサポート体制やポイントといったプラットフォームとしての充実化も進んでおり、ユーザーの皆様にメリットのあるサービスを提供できると考えております

また、LINEは若年層だけでなく、幅広く全世代に、スマホ利用者のほとんどの方にご利用いただいている状況です。そして、ユーザーからは「LINEを使用するためにスマホを利用している」という声や「LINEだけを利用できればいい」といった声を頂いています。こうした状況から弊社がMVNOへ参入し、コミュニケーション・価格・品質などの点からスマホにおけるより良い利用環境を提供することで、フィーチャーフォンユーザーをスマホへと移行させることが可能だと考えます

LINE、FB、Twitterは、App Annie社による「’15年月間アクティブユーザー数ランキング」において上位5位以内に入る、スマホ利用で不可欠のサービスです。ユーザーの皆様が求めるサービスを提供すべく、データ通信量をカウントしないプランを提供するという判断をしました。端末のセット販売の有無や「月額500円」といったサービス内容の詳細については、サービス開始時に改めてお知らせします。 (LINE広報)

取材・文/神田桂一 北村篤裕(本誌)

週刊SPA!2016.06.06

 images-3-48-150x150images

【関連する記事】