AIIB が日米に迫るTTP前進

中国が主導するアジアインフラ銀行(AIIB)の創設メンバーが計57か国となることが確定した中国の存在感を世界中に見せつける結果となり、AIIBへの参加を見送った日米はアジアでの影響力を維持するため、環太平洋連携協定(TPP)交渉の前進を迫られる構図となっている

日本国際問題研究所の高木誠一郎研究顧問は13日の電話取材に対し、英国なども参加するAIIBをめぐる一連の動向から、同盟国に対する米国の抑えがそれほど大きくないことが分かった、と指摘TPPについては「単純な経済問題ではなく、安全保障や戦後の国際秩序に関わる問題」と述べ、「妥結できない限り、中国の影響力拡大と米国の影響力縮小という印象は正されない」と語った

日米やベトナムなど12カ国が交渉しているTPPは参加国間の関税撤廃のほか、知的財産の保護や国有企業改革などを含めた共通ルールの整備を掲げており、中国は参加していない。日米両政府は15日から、都内で交渉の早期妥結に向けた事務レベル協議を再開した。

自民党の木原誠二財務金融部会長代理(元外務政務官)は16日の取材で、「アジアを中国だけが主導する経済圏にしないため、米国をコミットさせ続けることが必要TPPはそのための有効な手段で、ぜひ進めていくべきだ」と語った

石川昭政外交副部会長も14日の取材に対し、AIIBを通じた中国の影響力拡大は逆に「TPP早期妥結のテコになる。交渉が加速すればTPPが対抗軸として存在感を持てる」と話した。石川氏は「TPPは対中包囲網になりうる」とも指摘した

AIIBの創設メンバーになるための期限とされていた3月31日、安倍晋三首相は加入を見送ったうえで、自民党の秋葉賢也外交部会長らに党内議論を活発化させるよう指示。同部会は財務金融部会などと合同で有識者などからの意見聴取を開始しており、5月末までに党内意見をとりまとめる予定だ

日米両政府はTPPをアジア太平洋の安全保障にも絡む問題と位置付けている

安倍首相は3日、官邸で米民主党のペロシ下院院内総務ら米議員団と会談TPPはアジア太平洋に新しく自由な経済圏を築き、地域の経済発展及び安全保障に資する戦略的意義も有しており、交渉の早期妥結に向けて日米が主導的役割を果たしていくべきとの考えを示した

カーター米国防長官も8日、中谷元・防衛相との会談後の会見で、「軍事力は究極的には経済力が基盤になっている」と指摘。そのうえでTPPについて「米国のリバランシングの最も重要な要素の一つ」と説明し、「オバマ大統領とコミットして必ず通したい」と語った

ただ、ベトナムやフィリピンなど中国と領土、領海をめぐる問題を抱える東南アジアの国々もAIIBへの参加を表明している。フィリピンのドミンゴ貿易産業相は先月30日、日本経済新聞社のインタビューで、現政権でのTPP交渉参加は不可能との認識を示した

当初は途上国ばかりが加入を表明していたAIIBだが3月12日に英国が参加する意向を表明ドイツやフランス、オーストラリアも続いたカナダも参加に前向きな姿勢を示しており、実現すればG7諸国でAIIBへの参加を表明していないのは日米のみとなる

自民党の秋葉賢也外交部会長は13日の取材に対し、英国が参加する背景について「自国の企業にとってはビジネスチャンス。5月7日の総選挙に向けた前向きな宣伝材料になる」との見方を示した。その上で、英国の動きを予想できなかった日米の対応について「ふがいなさ」を指摘した

TPP

TPP交渉は正念場を迎えている安倍首相訪米時の28日に行われる予定の日米首脳会談ではTPPも主要テーマの一つとなる見通しだ日米両政府は15日に都内で再開した事務レベル協議で決着がつけば、安倍首相訪米前に甘利明経済再生相と米通商代表部(USTR)のフロマン代表による閣僚級協議も開催したい考えだ

貿易交渉の権限を政府に委ねる貿易促進権限(TPA)付与法案の米議会での審議の行方も交渉に影響を与える。TPAは大統領に通商交渉の権限を与え、合意すれば議会に修正を認めず一括で賛否を問えるようにするもので、議会によるその付与は米政府が他の11カ国とTPP交渉を取りまとめるためにはほぼ不可欠だ。法案は16日、超党派で議会に提出された。

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参考 Bloomberg  2015.04.17

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