20代男女「恋人いない=過去最高」の理由

事件や出来事、流行した商品、音楽、ドラマ……生きた時代によって、人間の経験には違いが生まれる人生観、金銭観、恋愛観も、時代と環境によって、大きな影響を受ける
だとすれば、「各世代の特徴と違い」を的確に知ることで、「年が離れた人」とも会話が弾み、相手への違和感も消える。ビジネスシーンや商品開発にも有効な武器になる。
新刊『日本初! たった1冊で誰とでもうまく付き合える世代論の教科書』は、戦後70年の6つの世代――「団塊世代」「ポパイ・JJ世代」「新人類世代」「バブル世代」「団塊ジュニア世代」「さとり世代」――を日本で初めて1冊にまとめて解説した本で、今、話題を呼んでいる。新刊の発売を記念し、「世代論」の連載をスタートする。それぞれの世代の特徴とは何なのか?  「自分の世代」と「あの人の世代」との違いは?  共通点は?
今回のテーマは、「20代男女が『恋人いない=過去最高』の理由は何か」。
その「若者らしくない」行動は、いったいどこから生まれてくるのか。背景と理由を探ってみたい。

20~30代の独身男性の75%、同独身女性の65%が「交際相手がいない」――

そんな衝撃的な数字(オーネット調査)が発表され、少し前に話題になりました。これは2011年の数字ですが、調査以来15年間で、いずれも過去最高を記録したようです。

「恋愛離れ」は30代前半~40代半ばの「団塊ジュニア世代」あたりから徐々に浸透してきた傾向ですが20代の「さとり世代」で「恋愛離れ」が決定的に定着した、と言えます。「さとり世代」というのは私の造語で、1983~94年生まれの、現在20代前半~30代前半の若者20代後半のいわゆる「ゆとり世代」を含む世代になります

私自身、たくさんの「さとり世代」に会い、ヒアリング調査を重ねてきましたが、多くの20代の若者から直接、「恋愛は面倒だからしない」という言葉を聞いて、衝撃を受けました

ただし、彼ら彼女らは、異性に興味がないわけではありません。本音のところでは「恋人が欲しい」「結婚したい」のです。にもかかわらず、なぜ「恋人がいない」が過去最高値を記録し、「恋愛は面倒だ」と避けてしまうのか?

それには、この世代ならではの「特有の事情」が潜んでいます。

 

■ 「恋愛をしにくい」3つの理由

1.経済的な事情、収入や雇用が不安定
1番目の理由は、不安定な雇用や給料が少ないという「経済的な事情」です

さとり世代は、バブル崩壊後の1990年代以降の「失われた20年」に生まれ、育ってきた、いわば「不景気しか知らない世代」です

中でも、20代前半は「第2次就職氷河期世代」。収入も雇用も不安定で、結婚・恋愛をしたくても、将来をまじめに考えれば考えるほど、簡単には踏み出せなくなっています

先に挙げた調査で「結婚相手に求める年収はいくらか」と20代女性に聞いたところ、「400万円以上」が26.2%、「300万円以上」が23%でした。さとり世代の女子も、この数字を見るかぎりかなり現実志向と言えますが、同世代の男性たちの給与はさらに低水準で、非正規雇用の比率も高くなっています

同じ調査で「現在の収入では恋愛も結婚も難しい」と答えた独身男性が、なんと63.4%に達しました「経済的な不安」「雇用の不安」から、さまざまなプレッシャーを感じ、結婚・恋愛におよび腰になってしまうのです

2.SNSによる「つながりすぎる」人間関係
さとり世代の最大の特徴は、「中高生のときから携帯電話を持ち始めた、日本で最初の世代」ということです。この「ケータイ」、とりわけ「SNS」が、20代の人間関係の形を大きく変えています

 誰かに会うと、まずSNSでつながるいったんつながると、関係は途切れずに続く。大げさにいえば、「『絶縁宣言』をしなければ、過去の知り合いとは関係が途切れない状況」に置かれているのです

SNSでつながると、連絡がとりやすく、恋愛も盛り上がるのでは?」と上の世代は想像しがちですがそれはまったく逆です

誰もがSNSでつながる「SNS村社会」では、いろいろな情報が「筒抜け」です。「AくんとBさんが2人で街を歩いていた」「彼氏彼女がいるのに、違う相手と食事をしていた」という情報は、SNSによって一瞬に仲間内に広がります

また、「Aくんは、Bさんに告白して振られた」「Aくんは、Bさんに対して、ひどい別れ方をした」という情報も、SNSを通じて瞬時に駆け巡ります

 そんな状況では、なかなか異性にアタックできないし、告白して失敗したときのダメージが大きすぎます誰もが恋愛に一歩踏み出すことを躊躇する情熱を燃やしてひとり暴走するような「イタイ」人にはならないようにと、過剰に周囲に配慮してしまうのです

 つまり、「つながりすぎる」人間関係が、恋愛のブレーキになっているのです

3.情報過多による「既視感」で、「妄想力と行動力」が低下
SNSによって、相手の過去の情報にも簡単にアクアスできるので、恋愛にはつきものの「一方的な妄想や情熱」も膨らみにくい。いざ付き合っても、SNSで何かと不必要な情報まで耳に入ってくるので、疑心暗鬼になったり、相手への束縛が激しくなったりします

「既視感」というキーワードを使うと理解しやすいのですが、ネット上に氾濫する情報によって、まだ体験していないのに体験したつもりになったり、知ったつもりになったりする傾向があります。その分、「妄想力」や「行動力」がそがれてしまう恋愛に限らず、20代の間で海外旅行などへの意欲が減退しているのも、この「既視感」が一因と考えられます

さとり世代」とはかつての若者がよくも悪くも持つことができた、「無謀さ」を失った世代と言えるのかもしれません。リスクヘッジやコスパについて考えすぎてしまい、「野性的行動」や「無駄」という名の豊かさまで失ってしまっているのです

■ 恋愛離れの結果、「異性重視」から「同性重視」へ

以上、3つの視点から「さとり世代が恋愛しにくい理由」を考えてきました。では、「恋愛離れ」の結果、20代若者の間で何が起こっているのか。

それは「異性重視」から「同性重視」へのシフトです

異性よりも同性とつながり合うほうが、リスクも少なく居心地がいい。「女子会」という言葉が社会にすっかり浸透しましたが、「同性重視の人間関係」はさらに広がりを見せ、今では「男子会」という言葉も生まれています

「気持ちはわかるが、気になる異性がいれば、もっと自分から声をかければいいだろう?」「『当たって砕けろ』じゃない?」などと、つい上の世代は考えがちですが、20代には20代の「事情」があります

人間はついつい「自分たちの価値観」「自分が過ごした時代背景」を基に物事を考えてしまいがちですが、相手が置かれている状況を知らなければ、きちんと理解することはできません

逆に言えば、各世代が置かれた時代背景や歴史を知り、特徴や価値観を知ることができれば、「違う世代」と付き合うための、理解するための「大きな武器」になります

「20代の若者のことはよくわからない」とあきらめる前に、あるいは「ゆとり世代だからダメなんだ」と決めつける前に、ぜひ、彼ら彼女らが置かれている状況を知ってください。そうすれば、部下や後輩、息子や娘など、「身近な20代」が違って見えてくるはずです

参考 東洋経済オンライン 2015.10.23

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