1400棟の家屋全半壊の西原村

 16日未明にマグニチュード(M)7・3の大揺れが熊本県を襲った夜から2度目の朝、本紙清水優記者(40)が、約1400棟の家屋が全半壊した西原村に入った同村布田(ふた)地区は、布田川断層の真上にあり、古くから地震が起きる可能性を指摘されていた。築50年の家屋が倒壊した惨事の中、九死に一生を得た農家の丹波茂さん(80)一家に当時の様子を聞いた。熊本県では17日午後2時現在で約11万人が避難。14日以降の地震による死者は42人となった

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「バリバリバリいってるうちにドーンたい。どぎゃんもできません」。16日未明の地震で、村内の家屋の6割以上の約1400棟が全半壊した西原村。被害の大きかった布田(ふた)地区の丹波茂さんは、1階寝室で、天井につぶされそうになった。14日の地震ではビクともしなかった木造2階建て、築50年の日本家屋が、16日未明の「本震」で、一気に崩れ落ちた

茂さん一家は、妻と息子夫婦、孫2人の6人暮らし。15日夜は仕事で外出していた孫娘以外の5人で、家にいた。茂さんが1階寝室の布団、妻久子さん(79)が同じ部屋のベッドで寝ていた。大きな揺れに続き、ガラガラガラという音、バリバリバリという音が聞こえ「ドンと天井が胸の前に落ちてきた」。

太い梁(はり)が屋外の石垣の上に乗り、1階の床と天井の間にわずかな隙間を作っていた。そこから自力ではい出て助かった周辺では、石垣が崩れ、道路を寸断している。「石垣が崩れていたら、つぶれとった。もう死んだと思うたですね」

布田は阿蘇山から流れる布田川の北岸の集落気象庁が16日未明の「本震」の震源と指摘した布田川断層の真上だ川に向けて低くなっており、石垣の上に日本家屋が立ち並ぶ風情のある町並みだった。「昔からの年寄りの話で、100年に1度大地震があると聞いとったけんな」。地震はいつか来るとは思っていたという。「まさかこぎゃんことなるとは」。バールを手に、つぶれた家の前で、何もできずにつぶやいた。

息子の辰巳さん(57)は1階の別の部屋でこたつに入ってテレビのニュースを見ていた時に被災した。ものの十数秒で、天井が落ちてきた。「考えるひまもにゃーたい」。やはり大きな梁が床との間に作った隙間で助かった。「オヤジと息子を呼んで声がした。あとは家内とはい出した」。米と繁殖牛の農家。田んぼも割れず、牛舎は崩れたが牛は無事だった。「あとは解体に何百万かかるか。オヤジは、別の土地に家を建てた方が早いかもしれんと言っている。どうするか」。家族全員が無事だったことが何よりだった。辰巳さんは、先の不安を振り払うように、片付けの作業を続けた。【清水優】

西原村(にしはらむら) 熊本県の中心部にある熊本市から東に約20キロ離れ、東は南阿蘇村、北西部は阿蘇くまもと空港、南は御船町と山都町に隣接。今年4月1日時点で、人口は7070人(男性3448人、女性3622人)で世帯数は2530縄文時代の土器が出土しており、1万年前から人が住んでいたとされている。九州最大級の風力発電施設「阿蘇にしはらウインドファーム」で知られる

日刊スポーツ2016.04.18

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