高齢者、5人に1人が貧困→どう老後を守る

 OECD(経済協力開発機構)の日本に関する資料を見ると、日本の相対的貧困率は約16%でOECD加盟国全体の平均である11%を上回っています。中でも、66歳以上の高齢者の相対的貧困率が最も高く、約19%に達しています。つまり、高齢者の5人に1人は貧困ということです

年代別金融資産残高(出典:財務省)

OECD加盟国の中で高齢者の貧困率が最も高いのは韓国(49.5%)。次いで、オーストラリア(35.5%)米国(21.5%)ですが、4番目が日本。昔、日本と米国はアリとキリギリスに例えられ、「米国の人は貯金せずにお金を使ってばかりいるから老後に貧乏な生活をする人が多い」といわれていましたが、今や数字上では、日本はその米国に肉薄しているという状況です

その一方で、総務省の家計調査を見ると、65歳以上の6世帯に1世帯は金融資産で4000万円以上持っています。しかも、金融資産のほかに65歳以上の多くは持ち家で不動産があり、中には田畑を持っているという人もいます

ちなみに、2014年12月末の家計の金融資産残高は1694兆円ですが、この約7割は、世帯主が60歳以上の家計で占められています。つまり、潤沢な資産を持っているご老人も多く、二極化して“老後格差”が進んでいるということです

なぜ、高齢者が貧困に陥りやすいのか

高齢者の貧困率が高い一つの要因は、日本という社会が急速にグローバル化しているからです

ヒト・モノ・カネが自由に国境を越えて行き交うグローバル化の中で、企業は人件費の高い日本から安い労働力が確保できる海外に移転し、また、外国人の日本企業への投資も増えていますこれは、日本の企業の外国人持ち株比率の急増と比例しています

外国人株主には、金を出すのだから口も出すという「物を言う株主」が多く、企業はこうした株主の意向で、利益を確保するために給与カットからリストラまであらゆることをしなくてはならなくなっています

米国カリフォルニア州職員退職年金基金などの海外投資家グループが、トヨタ自動車、住友不動産、三菱UFJフィナンシャル・グループなど日本を代表する企業に対して株主としての要求書を突きつけたのは有名ですが、これらの企業の外国人の持ち株比率を見ると、トヨタ自動車が30.3%、住友不動産が36.8%、三菱UFJフィナンシャル・グループが38.9%と、彼らも物申すだけの資格は備えているということです(2014年3月末)

さらに、すかいらーくグループは外国人株主が99.7%、中外製薬が75.4%、日産自動車が72.5%、昭和シェル石油が67.5%と、株の比率だけで見ると、もはや日本の企業とはいえない状況となっています(2015年1月時点)。

こうした中で終身雇用は崩れ、従来型の日本企業の特色は徐々に失われつつあります「給料は右肩上がり」「老後の面倒も会社が見てくれる」という日本企業の姿は消え、思いがけないリストラや給与カットで、老後のメドが立たない人が増えているのです

●格差を押し進める、国の政策

日本では、グローバル化が進んだことで、格差や貧困率も米国に近づきましたが、これに対して国はなんらかの施策を打ってきたのでしょうか

答えは、ノー。貧困の対策としては生活保護がありますが、増え続ける生活保護者に対して、国は給付の実質切り下げと、保護の対象を厳しくするということで対応してきました

自民党の提示する憲法草案の中には、生活保護になるような身内は家族で面倒を見るということまで書かれています

さらに、社会のセーフティーネットである社会保障については、財政難を理由に国は、2015年度予算で介護報酬の引き下げや年金のマクロ経済スライドの発動、協会けんぽの国庫補助金の引き下げなども行い、社会保険費を約3900億円削りました。加えて、2016年度から3年間は「骨太の方針」で、さらなる社会保障費の削減が進められていきます。具体的には、9000億~1兆5000億円規模の削減を行います

安倍政権が発足して3年になりますが、その間に企業の内部留保は約70兆円も増えました特にグローバルに展開する輸出企業は、国の円安誘導政策でもうけ、消費税のアップでもうけ(輸出企業は消費税を払うのではなく還付金として消費税をもらいます)、法人税引き下げでもうけてきましたアベノミクスでは大企業がもうかったらそれが中小企業や庶民家庭にトリクルダウンする(上からしたたり落ちる)という説明でしたが、家計は円安誘導政策での物価の上昇でダメージを受け、消費税のアップでダメージを受けました

加えて、老人家庭の場合には、ここに年金の実質目減りという大きなファクターも加わるので、富める老人と貧乏な老人の格差はますます広がる一方ということです。そういう意味では、国の政策で明るい老後を予見するのは難しくなってきています。

どうやって「老後」を守ればいいのか

こうした状況の中、どうやって自分自身の老後を守っていけばいいのでしょうか。

財産については、インフレになるという前提で、株などの有価証券や土地の購入を勧めている人もいますが、私は、しばらくはインフレにならないと考えています。

それは、日銀のインフレ政策がことごとく失敗していることからも分かります年間80兆円という巨額な国債買い入れで大量の資金を銀行に流したにもかかわらず、そのお金はあまり貸し出しには回らずに日銀の当座預金に預けられましたその当座預金の残高を減らすために行われたマイナス金利政策では、資金が国債に流れて、インフレで金利が上がるどころか国債がマイナス金利に陥りました

なぜ、こんなことが起きているかと言えば、資金需要が少ないからです。それを、日銀がはっきりと自覚しない限り、デフレからの脱却もないでしょう。だとすれば、いま取らなくてはならない財産保全方法は「借金を減らして、現金を増やす」というデフレ対策ですデフレの中では、借金のマイナス面は相対的に膨らみ、現金の価値は相対的に上がるからです

しっかりと資産防衛をすると同時に、もう一度、家計を見直してみることも必要です。給料は企業にとっては最も大きなコストなので、グローバル化が進む中では、最も削られやすいところです。ですから、給料は下がることはあっても上がることはないということを前提に、その給料の中から少しでも将来のために貯蓄できるように家計をダウンサイジンズしておくべきでしょう

こうして、少しでも多くの資金を老後のために確保しておけば、それだけ老後の安心が増え、貧困に陥らずに済むかもしれません

ITmedia ビジネスオンライン2016.03.22

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