風俗嬢も真っ青!→主婦に蔓延する謝礼交際

高学歴主婦たちのあいだで最近、ひそかに流行っているのが「謝礼交際」売春と紙一重ではあるが、知的な話術とプロ顔負けのサービス精神で月間40万円も稼げる人もいる。(フリージャーナリスト 秋山謙一郎)

● 「誰かから必要とされたい」 芦屋マダムがのめり込む「謝礼交際」

 「援助交際? とんでもない! わたしの女としての価値、それが謝礼という形に結びついただけです。」――。高級住宅地で知られる兵庫県芦屋市に住む主婦のユウコさん(43)。関西ではお嬢様大学として知られる4年制大学卒の書道教師でもある。

ユウコさんは、ここ10年、SNSが普及してから知り合った男性たちと週に3回程度のデートを楽しんでいるデートが終わると男性たちからは、時折、「3万円から5万円程度」(ユウコさん)の謝礼を受け取っているそうした謝礼だけで月に40万円くらいの額になるそうだ時には謝金を受け取らず高価な食事を共にするだけのこともあるという

これは援助交際ではないのか。そう感じる読者も多いだろうが、ユウコさん本人は、断じて違うと主張する。「わたしのほうから謝金をお願いしたのなら、それはおっしゃる通り援助交際かもしれません。でも、お相手のほうから共に過ごした時間へのお礼として是非に…という真心です。それをお断りするのも気が引けますから」。

最初は謝礼をいただく理由はないとお断りしましたでも、わたしも時には“自分の意に沿わない尽くし方”も受け入れています。だからそれに対する謝礼という意味で受け取っていますそのほうがお互いに楽ですから――

ユウコさんがいう、“自分の意に沿わない尽くし方”とは性の相手をする、とりわけ特殊性癖の受け入れを指すこれまで「縛る・縛られる」「手錠をかける・かけられる」「尿を飲む・飲まされる」「複数人での性行為」…といった特殊嗜好をも受け入れてきたという時には性行為中の写真や動画撮影にも応じてきた

もともとこうした性的嗜好はないと語るユウコさんだが、男性の要望を可能な限り受け入れることで「自分が誰かから必要とされている」と感じるという。それが嬉しくて男性との逢瀬を重ねてきた

あくまでも異性の友人関係として“ごっこ遊び”に付き合っているだけです。大っぴらに話すことでもございませんが、誰しも人には言えない一面をお持ちではないでしょうか。わたしは子どもの頃から性への好奇心が強かったので。好奇心を満たしているに過ぎません。体を売っているという意識はございません

ユウコさんの“友人”のひとりで大学教授のツトムさん(51)は、時折、謝礼を渡す理由についてこう語った。

「風俗店は業としてサービスを行っています。だからそのサービスに対する対価を支払うのは当然です。しかし彼女と僕との関係は商売人と客ではない。あくまでも友人です。その友人に僕の趣味に付き合ってもらう以上、何か、具体的な形でお渡ししたほうが互いに割り切れます。それが謝礼です」

● 高学歴でも性産業で働きたい プロ業界を侵食する「セミプロ」主婦たち

そもそもツトムさんが“謝礼交際”を好むのは、風俗店では、自分の理想とするプレイは行えるものの相手女性に気持ちが入らなかったことが大きい

風俗嬢はプロとしての接客です。僕は女性との会話も楽しみたい。その女性がどんな生き方をして、なにを考えているのか――そうした背景も含めて付き合ってもらうとなると、SNSで探したほうが理にかなっている僕は高学歴、もしくはお嬢様大学といわれるところの出身の女性が好みなので。風俗店では風俗嬢の細かいプロフィールまではわかりませんから

社会のIT化の成熟、SNSの発達で、こうした謝礼交際を行う女性は今、増えているという。大阪市内にある30代後半から40代、50代の熟女専門ファッションヘルス店長が、その一端をこう語った。「面接にお越しになる方のなかには、『プロ並のサービスができる』とアピールされる方がいます。どういうことなのか詳しく聞いてみると、『SNSで知り合った男性の要望に応えて風俗嬢が行うようなサービスを行ってきた』『謝礼を取れるほどだ』というのです概ね、高学歴で生活に困っていないような方が多いです

このファッションヘルス店長によると、そうした謝礼交際を行っている女性たちに共通した特徴があるという

本気で店で働く気はないようなのですどうやら風俗店で採用されることが、なにか『プロに認められた』という感覚なのでしょうか。不採用の連絡をしても、『研修だけ受けさせてください』といわれたことがあります。ここまでくると店舗でこそ働いてはいないものの、プロの風俗嬢と思わざるを得ません

自分の見た目やサービスレベルがプロにも認められたと、確認したいだけなのだろうか? 事実、“セミプロ”ともいえる謝礼交際を行っている既婚女性もいる。愛知県内の有名私立大学を卒業した専業主婦のチカコさん(44)は、私立中学に合格した子どもの教育費が嵩むことから謝礼交際に励んでいる。そのチカコさんに“援助”と“謝礼”、それぞれどう違うのか聞いた。

「援助交際はこちらから対価を要求するものです。謝礼交際は、男性の側から謝礼を支払ってもいいというだけのサービスを提供した結果、こちらから言わずとも謝礼をいただけるのです。プロのセックスワーカーの方よりも営業努力していると自負しています。接した男性が、『謝礼を支払わなければならない』と思わずにはいられないサービスを提供しています

明確に金銭を目的としているところが、冒頭部で紹介したユウコさんとは大きく異なっている。しかし、生活に苦しんでいるという状況ではなく、現在の裕福な生活を維持するために、謝礼交際で稼いでいるようだ。しかし、そんなリスクを冒さずとも、パートで働く選択肢はなかったのか。

コンビニやスーパーでのレジ打ちのパートだと、時給800円くらいです。いただく時給の額よりも、そうして働いている姿を、ママ友や大学の同級生たちに知られたくないのですそれに謝礼をいただいて男性に愛されるほうが楽しいですから」(チカコさん)

高学歴で、裕福な暮らしを営む主婦たちは、一般的な風俗嬢には望みにくい知的な話術や、優雅な存在感などを提供できるこうした強みに加えて、性風俗業界顔負けのサービスもするのだから、同じく高学歴・高収入の男性たちからウケがいい。先に紹介したユウコさん、チカコさんのように機転が利く女性はこうした自らの強みを熟知しており、わざわざ店舗や派遣で、性風俗業界に身を投じなくとも十分に稼げることを知っている

 ● 12時間拘束でも日給はたったの5000円 この20年でプロの時給は暴落

こうした謝礼交際の蔓延に頭を悩ませているのが性風俗業界だ今、性風俗業界は、かつてのような「女性が稼ぐ最後の砦」ではなくなりつつある意を決して性風俗産業に身を投じたところで、生活していけるほど稼げなくなってきているのだ。兵庫県神戸市内にあるソープランド店長が明かす。

今では、女性が客を1人とってもせいぜい5000円程度です。でも1日で5000円稼げれば、まだいい方です。なかにはお茶引き――まったく客がつかない子もいますから

性風俗産業で稼げたのは、せいぜい20年くらい前までの話だ。当時、格安店でも90分・3万円くらいの店が多かった。そこに平日、それも雨の日でも30人くらいの客がやってきたという今では平日なら7、8人ということも珍しくはない。加えて客単価もバブル崩壊後の「失われた20年」で大きく下がった。20年前のソープランド料金は、先述の通り、90分・3万円が格安とされていたが、今では60分で1万2000円、なかには1万円の店もあるという。性器間接触こそないが濃厚な性的サービスを提供するファッションヘルス店だと格安店の場合、1時間8000円が相場だ。

客が支払う代金のうち6割が店側、4割が女性側の取り分だかつては折半が常識だったが、近年ではこの割合が相場だという。冒頭部で紹介したファッションヘルス店長が語る。「1日12時間店舗に拘束され、それでも5000円も稼げない女性も多いです。しかしSNSを使えば、うまくいけば1日で1人相手をするだけで2万円くらいになりますねこれでは性風俗店で働こうという女性はいなくなってしまうのも頷けます

さて、謝礼交際を行う既婚女性たちの最大のウリは、プロはだしのサービスと、時には特殊性癖をも厭わない姿勢だ。従って、こうした特殊性癖を扱う店舗型SMクラブも、謝礼交際主婦たちに侵食されている。大阪市内のSMクラブで働く既婚女性、アカネさん(41)が語る。

「相場は1時間・1万2000円です。私の取り分は店と折半で6000円。しかし道具は自前で揃えなければなりません。コスチュームや鞭などの諸道具も一式揃えるとなると20万円くらいかかります。この費用を回収するだけでも大変です」。SMクラブでは、客をいじめる役割を演じるS(サディスト)役のみならず、いじめられる役割を演じるM(マゾヒスト)役でも、衣装、縄、鞭、蝋燭などの道具代は女性側が負担するケースが多い。店側とは雇用契約ではなく、店との“請負”契約だからだ

一方、冒頭部で紹介したユウコさんは、「(SMプレイなどに使う)道具、衣装のすべては友人(交際相手)が全部揃えてくれた」と話す。プロであるアカネさんの自己負担とは対照的だ。

援助交際にも似た謝礼交際を行う女性たちの出現で、ただでさえ市場がシュリンクしている性風俗産業は、ますます斜陽化が進んで行くのかもしれない実際、業界関係者の危機感は相当なものだ

● 謝礼交際は売春とは違うのか?  弁護士が語る法的問題点

さて、この謝礼交際という形態、実態はやはり売春に限りなく近い。法的には問題はないのだろうか。複数の弁護士に聞いてみると、皆こう口を揃える。

女性の側から謝礼を持ちかけるような言質がない限りは、法的に問題があるとは言えないのではないか。ただし、謝礼を受け取る前提で行っているのならその限りではない。もっとも、それを立証することは捜査当局も女性側も難しいだろう

しかし、ある弁護士は、「現実の話として謝礼交際が表沙汰になるのは、不倫関係がそれぞれの配偶者に露呈したときなどに限られるのではないか」と付け加えた。売春として摘発される可能性は低そうだが、主婦が多いだけに、バレた場合には大トラブルに発展する危険性は高いということだ

SNSという便利なツールの出現によって、可能になった「謝礼交際」という新たな社会現象。かつてはハードルが非常に高く、それ故に「女性にとっての、最後のセーフティネット」として機能していた性風俗産業を確実に侵食する秘かな勢力に成長しつつある

※本文中、カタカナ名は仮名です。

秋山謙一郎

ダイヤモンド・オンライン2016.05.21

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