韓国大慌て、製造業の凋落が止まらない

韓国では今造船や鉄鋼、石油化学、建設など、いわゆる重厚長大産業の構造調整が進んでいる好景気に酔い、未来に対して何の準備もせず、信用不安を隠してきた企業、そして企業の信用不安が積み上がりながらもあえて無視してきた政府系金融機関、そんな事態を傍観していただけの政界では、責任の押し付け合いが熾烈だ

韓国が足踏みをしていた間に米国など先進国は産業の高付加価値化や新産業の構築に邁進し、中国を筆頭とする新興国は必死になって競争力を付けていた今後、韓国の製造業は、ただ黙って立っているだけなのだろうか

政府や金融当局、KDB産業銀行によれば政府は構造調整が何よりも必要な業種として造船と海運業を指定し、強力な構造調整を推進中だ。政府関係者は「造船や海運、鉄鋼、化学産業の状況を再点検し、構造調整の方向性を決めることが至急の課題」と述べた。

■ 1997年の金融危機の時より、現在の状況は深刻

政府は構造調整に大騒ぎしているいったい、韓国の製造業が置かれた状況は、どれだけ深刻なのだろうか

韓国のシンクタンクである現代経済研究院によれば史上最悪とされた1997年の金融危機の時より、現在の状況は深刻だと判断する韓国の製造業の生産増加率は6四半期連続で低下している生産増加率が前年同期比で3四半期以上連続して減少したのは、1997年の金融危機の影響を受けた1998年第1四半期から同年第4四半期、そしてリーマンショックが発生した2008年第4四半期から2009年第2四半期以降3度目のことだ

 特に、その長さは、以前の危機よりもさらに深刻だ。1998年には4四半期連続で、2008年には3四半期連続で製造業生産が減少したが、その後反騰している。しかし、現在は6四半期連続で続いており、しかも不況以前の生産水準から回復できずにいる

市場での需給面から見ても、赤信号が灯っている出荷は減少した反面、在庫が積み上がり続けているためだ金融危機とリーマンショック当時、出荷は急速に減少したが、そのまま反動が来ただが、現状を見ると、製造業の出荷増加率が平均マイナス0.5%を記録している。内需(マイナス0.02%)、輸出(マイナス1.0%)と、どちらも減少傾向にある

さらに在庫増加率も2.7%と、供給過剰まで重なった。現代経済研究院のチュ・ウォン経済研究室長は「韓国の製造業が直面している問題は、不況の強さではなく、市場での需要沈滞が長期化していること。これにより、主力製造業の大部分が崖っぷちに立たされている」と分析する

■ 出荷は減少、在庫は増加

 韓国の成長エンジンだった製造業が伸び悩んでいるため、経済全体も不安定になっている。韓国開発研究院(KDI))は、16カ月も輸出減少が続いている製造業が経済成長にとってネックになっていると診断する

KDIが最近発表した「経済動向」5月号では、「輸出が減少している製造業に加え、設備投資も奮わず、韓国経済全体の成長が依然として低い水準に留まっている」と明らかにしている実際に、今2016年3月の韓国製造業における平均稼働率は、同年2月の73.5%から73.2%と低下した。設備投資もまた、1年前より7.8%減少した

状況がこれほど深刻になったのは、かつて高成長が続いているとされてきた時期に、韓国製造業が規模の成長に酔ってしまい、警告を無視したためと多くの専門家は指摘する。専門家らは15年以上も製造業に対して警告をしてきたが、彼らは無視したというのだ。

実際に、2002年にサムスン経済研究所が発表した「韓国の主力産業における競争力分析」という報告書では、韓国の主な輸出産業が競争力において先進国との差を狭めることができなければ、中国など後発国の追撃に直面し、製造業が危機に陥ることを警告していたそれからすでに14年が経っている

当時の警告は、現実のものとなっている。造船業では造船所のドックが空いている状況は、以前からは想像もできなかったことだ。韓国の製造業は、2000年代初頭に世界最高水準のの技術力を誇った。1999年、世界の造船受注量で韓国は40.9%を占め、2位の日本(30.0%)を突き放していた

この当時も、一部からは高付加価値のある船舶をつくる必要性を力説し、中国を警戒すべきという指摘が出ていた。ところが、仕事が増えてうれしい悲鳴を上げていた状況に、そんな警告は届かなかったようだ。結局、韓国造船業は本業である船舶より海洋プラントに目を向けざるを得ず、大規模な損失を招く危機に直面した

■ 海運業も悲惨な状態に

海運業も同様だ2008年には海運会社が定める運賃の基準となる「バルチック海運指数」(BDI)が上昇し、1万1000を記録した、海運会社は好景気に酔い、高い価格で船を借りた最近話題となっている高価格リース料の背景となった海運会社は儲けたカネで省エネルギーの船舶などを発注して競争力を強化するよりは、ただカネを払って船を借りるほうを選択した。もちろん、政府もこんな判断に重要な役割を果たしたのは否定できない事実だ

海運と造船業の構造調整は、密接な関係のある鉄鋼業にも大きな影響を与えそうだ。鉄鋼の販売価格は上がらず、費用だけが増えている。鉄鋼価格が上がらない、あるいは需要が増えなければ、収益性はさらに悪化する。ゴールドマン・サックスの分析では、韓国の鉄鋼設備稼働率は、現在の80%台から2018年には78%に下がるという

需要が減少しているため鉄鋼会社は日本や中国のライバル会社と生き残りをかけた競争が繰り広げられている。日本最大の鉄鋼会社である新日鉄住金は、日本4位の鉄鋼会社である日新製鋼と合併した中国も、現在12億トンに達する中国の鉄鋼生産能力を、5年以内で10 %減らす計画を発表した

 2008年のリーマンショックで、最も早く構造調整という名の手術台に上がった建設業はその後も悪化が続いている

韓国建設産業研究院によれば、ゼネコンの社数は2008年の1万2590社から2014年に1万0972社へ、1618社減少した。毎年270社ほどが消えていることになる。構造調整は長い期間行われたが、業績は悪化した。実際に、利子補償比率(営業利益/利子費用)は2008年の387.4%から2014年には201.9%まで下がった

石油化学業は、他の業種よりも状況はましなほうだ。業界トップのLG化学は、今年第1四半期には4577億ウォン(約418億円)、2位のロッテケミカルは4736億ウォン(約433億円)と高水準の営業利益を出した。とはいえ、中国の自給率上昇と設備投資による過剰供給もあり、競争は熾烈だ。政府が構造調整業種に選定したのも、これが理由だ

最近の業績好調も、韓国の石油化学業界の競争力が高まったというよりは、原油価格の下落という要因が大きい

■ 需要が奮わず、長期化の兆しも悪材料

構造調整の対象となった業種に共通するのは、需要が奮わず、しかもそれが長期化しているということだ。そのため、不況という沼にどっぷりとはまっている。さらに、韓国の製造業が未来に備えることができずにいるというのも事実だ。また、より大きな問題は、韓国の製造業が厳しい現状に汲々として、成長の潜在力を拡充できずにいるという点だ

最も重要なことは、構造調整の過程において高付加価値や新産業の創出へいち早く転換できるかどうかだ縮小一辺倒の構造調整は、他の産業にも否定的な影響を与えうる。そうなると、韓国製造業全体の基盤も揺らぐことになるというのが、専門家の指摘だ

 投資の拡大も切実な問題である。現代経済研究院は「規制を緩和し、経済の成長力と雇用創出力の源泉となる投資を活性化すべき」と助言する。企業の投資対象が、既存事業よりも新技術・新産業へと移行できるように、政府が先頭に立って支援すべきということだ

製造業の中でも、研究開発投資を拡大して、同時に人材を確保すべきという主張が出ている。LG経済研究院のイ・ハンドク研究委員は、「韓国と北欧諸国の場合、価格競争力と労働生産性が同時に弱まっている」と指摘、核心的な競争力を高めるための投資拡大を強調する

■ 投資額も伸びず、潜在成長の源泉も先細り

実際に、研究開発への投資額が多い順に選んだ世界1000社の中で、韓国企業は2004年の9社から2014年には24社に留まった。これとは対照的に、中国企業は同期間中に4社から46社と、10倍以上増えた日本もまた、2014年には168社が1000社以内に入っている

金融当局は5月から大企業への定期信用リスク評価を6月中に終え、7月上旬には構造調整対象企業を選定する方針だ中小企業の場合、大企業での選定作業が終わり次第、7~10月に評価し、11月には構造調整対象が発表される

現代経済研究院のチュ・ウォン経済研究室長は「補正予算の編成を早め、金利引き下げを行って景気の安定化に努力し、新産業や高付加価値産業への転換をいち早く進めることが必要」と助言する。

(韓国「中央日報エコノミスト」2016年6月6日号)

ムン・ヒチョル

東洋経済オンライン2016.06.05

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