電磁波による宇宙輸送機打ち上げ→米国

地上から大出力のマイクロ波を機体に照射し、それをエネルギー源にしてロケットなどの宇宙輸送機を衛星投入軌道まで打ち上げるーー宇宙ベンチャーの米エスケープダイナミクス(コロラド州)が、こんな電磁波推進による次世代宇宙輸送システムの技術開発に挑戦している

現在のロケットのように機体に推進用の化学燃料を大量に積み込む必要がないため、安全性が高く軽量化でき、推進装置の単段化も可能現状で1kgあたり2万5000~5万ドルかかる小型衛星の打ち上げコストも大幅削減できる可能性があるといい、最終的には1kgあたり150ドルを目指す機体もスペースシャトルのように再利用でき、宇宙輸送機の大変革になるとしている。当初は1~200kgのペイロード(有料積載物)の打ち上げ用にシステム開発を進める

原理は地上にマイクロ波を照射するパラボラアンテナをフェーズドアレイ方式で多数設置打ち上げ時にそれらが連携して宇宙輸送機にマイクロ波を連続照射するロケット側では受け取ったマイクロ波を効率良く熱に変換し、推進用に搭載された水素を加熱、ノズルから噴射して打ち上げ時の推進力に使うこれまでのように地球の重力に打ち勝ち、高い推力を得るための多段式エンジンが必要なくなり、単段エンジンで地球周回軌道まで打ち上げられるという

衛星の軌道投入後は、大気圏に再突入し、スペースシャトルのように空を滑空して滑走路に着陸する。たぶん整備は必要になると思われるが、推進用の水素を補給すれば再び宇宙に飛び立てるという

7月17日には水素の代わりにヘリウムを使ったラボでの推進実験の結果を発表した。ここではまず、電子ビームを大出力マイクロ波に変換する「ジャイロトロン」を使い、周波数92.3GHzの電磁波を連続照射する出力100kWのマイクロ波システムを開発。離れたところから対象物にマイクロ波を当てて発生させた熱でヘリウムを加熱し、ノズルから噴射させた。実機が空間を移動しながらではなく、あくまで固定実験だが、結果としては推進装置の効率が現在主力の固体燃料ロケットおよび液体燃料ロケットのそれを上回ったという

通常、ロケットエンジンの燃焼効率は比推力(Isp)であらわされ、固体燃料ロケットが200~300秒、液体燃料ロケットが300~460秒とされる。それに対し、今回のヘリウムの噴射実験では、500秒のIspを達成。同社によれば、同じ条件で水素が使われていた場合、600秒を超える可能性があるという。Isp600秒は多段式ロケットのような切り離し機構を必要とせず、構造が簡単な単段の推進装置で地球軌道まで行ける境界値に当たる

同社では、軌道投入の条件を満たす打ち上げ設備に必要な出力500kWのマイクロ波システムの開発にも入っているという

考 ニュースイッチ 2015.07.26

 

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