隠し切れない、中国経済の低迷

 ウォールストリートジャーナル紙は、3月16日付で「中国の経済的不調:全人代は表面を繕っているが、困難の兆候は積み上がっている」との社説を掲げ、中国経済の先行きへの悲観論を展開しています。社説の要旨は次の通り。

全人代は第12次5カ年計画を採択し、共産党は堅実にやっていくと約束し、終了した。李克強首相は雇用を維持し構造を変える、来年6.5%成長を達成しないことは考えられないと述べた。

中国経済落ち込みの理由とは

 今回の全人代で黒龍江省知事の陸昊は国営のロングメイ鉱山会社を、雇用を維持したうえでの構造改革のモデルであるとし、解雇された労働者の収入は新規雇用もあり、少しも減っていないと述べた。これに対し炭鉱夫たちが本当ではないと抗議の声をあげた。陸氏はすぐ、虚偽の報告をしたものを罰すると前言を取り消した。中国の指導者は経済状況について誤った情報を得ている。会社の経営者は融資を受けるために財務上の問題を隠している

中国の経済困難の核心には賃金の高騰につながっている労働力の減少がある。労働争議も増加している

金融上の問題もある実質金利が上がっている。中国人民銀行は信用供与を拡大しようとしているが、銀行融資はゾンビ企業の延命や不動産投資投機に回っている

2008年の金融危機に際し、中国は大きな刺激策を実施した。インフラ整備や工場建設がなされた。これはうまくいき、経済は成長を続けた。しかしコストも高かった。今、工場の操業は能力以下になり、債務レベルは倍増し、多くの投資は回収できなくなっている

今の構造改革は1990-2000年代の朱鎔基の時(4500万人解雇された)より厳しくないと楽観論者は言っている。しかし今回の失業者の状況はもっと悪くなろう。15年前、中国は国有住宅を払い下げ、国民の懐を温めた。民間住宅の建設がブームになり、雇用が増加し、輸出も増えた今回は、都市の住宅需要は満たされており、輸出は昨年、減っている

今年の全人代は良い恰好をしているが、当局は今後、その見かけを維持しえなくなるだろう。習近平のメディアや反体制派への締め付けは困難な時代への準備のように思える

出典:‘China’s Economic Rumbles’(Wall Street Journal, March 16, 2016)

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中国経済の減速懸念は、先の全人代の結果、後退したように思われます。しかし、この社説は、労働力不足による賃金上昇、実質金利の上昇、債務問題など、問題が山積していること、その問題が虚偽報告や情報の歪曲のためによく認識されていないことなどを指摘し中国経済の将来への悲観論を展開しています。一つの見方でしょう。

中国経済の光と影

 ただ、中国経済には巨大な外貨準備があり、財政支出を増大させる余地、強権的に産業の構造改革を進める力など、強みもあります

中国経済の光と影を総合してどうバランスよく見ていくかの問題です。輸出主導高度成長の時代が過去のものになったこと、今後は内需主導の経済に移行していく必要があることは明らかです。この転換を中国が成功裏に行っていけるかどうかは、多くの要因が絡み合う話であって、簡単に結論めいたことは言えないように思われます。さらに、中国の統計資料が信頼できないことは判断を著しく困難にします

中国経済については、中国政府が言うように、2020年まで平均6.5%の成長をするとの前提をおきながらも、減速した場合にもそうでない場合にも備えておくしか手がないように思われますさらなる中国の巨大化は好ましくありませんが、中国経済が混乱、減速すれば、その世界経済に与える影響も大きく、やはり好ましくありません

いずれにせよ、中国は経済的にも政治的にも不安定な国であることを認識し、将来大きな影響を受けないように、対中エクスポージャーをできるだけ抑えておくことが得策ではないかと思われます中国経済のハードランディングへの警戒心は、李克強の「ハードランディングはない」との発言にもかかわらず、持ち続けておくのが正解と思われます

岡崎研究所

Wedge2016.04.20

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