限界を迎えた国家システム→構造改革

5日に北京で開幕した中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)。冒頭、政府活動報告を読み上げた李克強首相は「中国は、ずっと挑戦に立ち向かいながら前進してきた。どんな困難でも乗り越えられる」と述べ、経済減速下で痛みを伴う構造改革への断固たる覚悟を訴えた習近平国家主席らは、高度成長を支えた国家システムはもはや限界に来ているという危機感が強いものの、改革実現への道のりは険しい

◇「脱貧困」で格差是正
李首相は2時間近い政府活動報告の中で「改革」というキーワードを68回連呼した。経営困難となった鉄鋼・石炭関連の「ゾンビ企業」を再編・清算し、安定成長を阻害する「つくり過ぎ」の解消に全力を挙げる意向も強調したが、利益をもたらさない国有企業の問題は歴代指導部が認識しながら放置してきた負の遺産だ
自転車操業が可能だった高度成長時代には表面化しなかった。しかし景気減速が本格化する中、痛みの伴う構造改革を断行すれば、大量の失業者があふれ、社会の不満が高まる懸念が強まっている
7000万人以上の貧困層を抱える農村の現実も深刻だ李首相は農村活性化のため、「ブロードバンドネットワークを農村に普及させる」と訴えた。しかしネットサービス大手・騰訊(テンセント)の馬化騰会長は記者団に対し、「農村の農産物はネットを通じて既に販売されているが、包装や流通の問題があり、実現できることから始めている段階だ」と指摘する
「農村の貧困は一生忘れられない記憶を私に残した」。習主席は昨年10月、文化大革命(1966~76年)時代に陝西省に下放した経験を基にこう語った「脱貧困」は「反腐敗」と並ぶ習氏の中心的な政治課題となっており、2020年までの第13次5カ年計画期間中に「地域的な貧困を解消する」(李首相)決意だ。
◇戸籍制度の弊害
李首相が、長年の難題である格差是正に向け、貧困層の底上げのほかに訴えたのが「(農民の)都市戸籍への転籍」「(内陸の)中西部地域で1億人の都市化を進める」と掲げた
中国では都市と農村を隔てる戸籍制度があり、農村戸籍で北京などに出稼ぎに来た労働者の子供は正式な教育や社会保障を受けられないこのため親と離れて暮らす「留守児童」は全国で約6100万人に上り、その実態は深刻な社会問題となっている
習指導部も、社会活性化に向けた弊害となっている戸籍制度の大幅緩和の必要性を認識しているしかし移動の自由が実現すれば、農業の衰退のほか、大都市の不安定化をもたらすという懸念が強い
国務院(中央政府)は今年2月、地方の小都市で一定期間定住していれば、出稼ぎ労働者も都市戸籍を取得できる規定をようやく制定しかし北京など大都市では逆に、安定した仕事や住居、高い学歴などでポイントを積み重ねないと戸籍を取得できない制度の導入を進めており、真の戸籍制度改革にはほど遠いのが現実だ
社会問題に詳しい北京理工大学の胡星斗教授は「(人の移動を制限する)戸籍制度は国家・社会の安定を維持するためのものだが、制度を改革しなければ、都市化ばかりか経済の効果・利益にも悪影響をもたらす」と解説した。(北京時事)

時事通信  2016.03.12
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