都会の下流老人にならないいために

家賃に生活費、介護の費用……東京で暮らす場合、こうした費用は地方よりはるかに高くなる下流老人」にならないためには、少しずつ「風呂敷をたたむ」準備をする必要があるようだ

都心で暮らす人々が抱える大きな支出のひとつが、教育費。メーカー営業職の女性(53)は、力を込めて話す。

「教育は、土地や株やお金と違って誰にも取られることがない唯一の財産これだけは子どもに残してあげたいと思う。だから私は何が何でも65歳までは働かなくてはいけないんです」

30歳で結婚したが、仕事に熱中し、長女を産んだのは40歳のとき。高額をつぎ込んだ不妊治療の末に45歳で次女を産んだのは、大人になったら互いに支え合って生きていってほしいと願ったからだ。

 下の子が大学に入学するころ、自分は64歳、自営業の夫は65歳になる希望すれば、海外留学もさせてあげたい。そのために学資保険や貯金など、やれることは始めた。だが最近になって、「都会での子育ては予想以上にお金がかかる」と痛感している

共働きだと、学童保育がなくなる小学校4年生からは、放課後の時間を埋めるために塾や習い事に通わせる家庭が多い女性の長女も学習塾とバレエ、水泳などで週4日を埋めていた。その影響もあるのだろうか。東京では私立中学に進む子どもが多い。ファイナンシャルプランナーの有田美津子さんによると、小学校からずっと公立校に通って4年制の国立大に進めば、総費用は677万円。一方、すべて私立で4年制大学の理系学部に進めば2050万円。医学部進学や留学となればさらに負担は増える。

女性の長女も中学受験をしたいと言い始め、塾代で計200万円、さらに受験料と滑り止めの学校に支払う頭金で50万円の出費。家計簿は月約50万円の赤字が続いた

都会のライフスタイルも家計に大きく影響している。家計再生コンサルタントで、ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんによると、家族にはお金の貯め期が3度ある最初は夫婦2人で子どもがいない期間、次に子どもが生まれてから低学年までの期間、そして子どもが独立してから親が定年退職するまでの期間だ。だが、特に都心部で進む晩産化によって、老後の家計が変化していると、横山さんは指摘する。

最後の貯め期が短くなったり、なくなったりする家族が増えていますさらに、30代よりも収入の多い40代は、余裕があるがゆえに教育費をかけすぎてしまう。老後資金と教育費はトレードオフの関係にあるので老後が苦しくなりがちです

都会の下流老人にならないために、今からできる備えはあるのだろうか。多くの専門家が口をそろえるのは、「ダウンサイジング」の大切さだ。前出の横山さんは言う。

「広げた風呂敷を急にたたむことはできません。なるべく早く家計や住居をダウンサイジングすることです遅くとも定年の10年前、50歳までに家計の見直しが必要です

参考 ※AERA  2015年9月14日号より抜粋

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