選手村に最先端のエネルギー技術

 2020年に開催する東京オリンピック・パラリンピック(東京2020大会)の選手村を対象にしたエネルギー事業のプロジェクトが始まる。東京都は2016年度内に事業計画を策定するために、計画づくりに協力する民間企業の募集を5月19日に開始した。7月中に事業協力者を決定して、具体的な計画策定に着手する。

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東京湾岸の晴海(はるみ)地区に整備する選手村と周辺エリアを対象に、最先端の水素エネルギーを活用した街づくりを進める計画だオリンピック開催後に防災能力の高い自立分散型の「スマートエネルギー都市」を確立する狙いで、水素ステーションや水素パインプライン、さらには電力・熱・水素を供給できる次世代燃料電池を導入する

 対象の地域は晴海ふ頭や中央清掃工場がある「晴海五丁目西地区」で、選手村を建設した後は住宅に転換することになっている。東京都の構想では中央清掃工場の横に水素ステーションを設置するほか、水素ステーションと地区内をつなぐ水素パイプラインを敷設する予定だ。都心の主要な拠点と結ぶ「バス高速輸送システム(BRT:Bus Rapid Transit)」も導入する計画で、水素で走る燃料電池バスを大量に配備する

東京都は2016年度中に策定する事業計画をもとに、水素ステーションをはじめとする主要な設備を建設・運営する民間企業を2017年度に決定する方針だ。オリンピックを開催する1年前の2019年度にはBRTの運行を開始して本番に備える。さらに大会終了後にはエネルギーマネジメントセンターを設置して、地区内の電力・熱・水素の需要と供給を制御できるようにする

すでにBRTの運行では京成バスが事業者に決まっている。2016年度内にBRTを運行するための新会社を設立したうえで、2018年度に燃料電池バスを調達する計画だ。2019年度から2系統の路線で1時間あたり最大6便程度を運行する予定で、オリンピックの終了後に路線と便数を増やして輸送能力を高めていく

水素パイプラインで地区内の燃料電池へ

選手村を構成する住宅棟と商業棟には次世代燃料電池を導入して、電力・熱のほかに水素も供給できる「マルチエネルギーステーション」の構築を目指す。高性能のSOFC(固体酸化物形燃料電池)をベースにしたシステムで、都市ガスから水素を生成して発電・熱供給に加えて燃料電池車などに水素を供給できる

このほかに都市ガスではなくて水素をそのまま燃料に使える純水素型の燃料電池も導入してCO2(二酸化炭素)の削減に取り組む。水素ステーションから地区内の水素パイプラインを通じて、各施設の燃料電池に水素を供給する仕組みだ。

さらに東京都は福島県で作ったCO2フリーの水素を活用するための研究開発プロジェクトも推進していく。福島県内の太陽光発電や風力発電で作った電力から水素を製造して、液化した状態で東京都まで輸送する計画だ。福島県などと共同で実証研究を進めながら、2020年のオリンピックまでに水素の製造・輸送・貯蔵の体制を構築する

これまで東京オリンピック・パラリンピックの開催準備にあたっては、競技場の設計やロゴの制作などで問題が噴出してきた。協力者になる企業や専門家を選ぶプロセスに不透明な部分があり、選定のやり直しを余儀なくされている。もしエネルギー事業でも同様の問題が発生した場合には、オリンピックまでに準備が間に合わなくなるおそれがある。

東京都は6月下旬に選考委員会を開催して、応募者によるプレゼンテーションとヒアリングをもとに事業協力者を選定する考えだ。問題になった競技場の設計やロゴの制作と基本的には同様のプロセスである。選考委員会のメンバーも現時点では明らかになっていない。

事業計画の策定に参画した民間企業は実際に設備を建設・運営する事業にも加わる可能性が大きいことから、透明性の高い選定プロセスが求められる東京オリンピック・パラリンピックは日本の水素・燃料電池の技術の高さを世界にアピールする重要な場であり、その後の水素社会の進展にも影響を与える

スマートジャパン2016.05.25

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