追いつめられる北朝鮮国民

米韓に挑発繰り返すが、国内は不安定化
 北朝鮮の目の前で、米韓の合同軍事演習が続いている北朝鮮の反発ぶりが尋常ではない

 5回目の核実験を行うと宣言しただけでなく、23日には朴槿恵・韓国大統領に対して「正義の報復戦に向かう」と攻撃を匂わせた合同演習に対する金正恩第1書記のいらだちはピークに達しているようだ。そんな中、筆者の元に北朝鮮内部で何が起こっているのかを知らせる連絡が入ってきた。党の幹部は中国に逃げ出し、住民は絶望に陥っているという

 これは、今月上旬、中朝国境の中国側の都市・丹東で、北朝鮮の労働党幹部と接触した脱北者からの連絡であるこの脱北者は元軍人で、数年前韓国に亡命した。北朝鮮の体制を変えようと、北朝鮮内の仲間にさまざまな支援をしている

 その党幹部は今の北朝鮮の内部情勢について、
「今、わが国の住民たちは、2月23日に始まった70日戦闘という活動のため、試練にさらされている工場、企業所の労働者は毎朝5時に出勤を強いられ、最高指導者に対する忠誠を誓わせられる1日の労働時間は12-14時間にもなる。疲れがたまって死にそうだという声をよく聞く」。

 学校でも事情は同じだという朝5時に、児童、生徒は小学校、中学校に行かなければいけない。そこで、金正恩氏を賞賛する歌を歌い、授業を開始する

 今年は、5月上旬に36年ぶりとなる朝鮮労働党の党大会が開かれ、経済や統一問題についての展望が発表される見通しだ

「こういう大がかりなイベント前には、100程度の政治スローガンがつくられ、住民は暗記を強いられるが、今回は350もある。とても覚えきれず、仕事や勉強も手につかない状態」(前出の党幹部)だという

 国内の締め付けを逃れるため、中国に出てくる党の幹部もいる。労働党の「民防114指導局」の局長は女性2人を従え、ホテルでカードゲームにふけったという

 事件も起きている。

 丹東では、北朝鮮のチョン領事(1963年生まれ)が2月7日に酒酔い運転のあげく、他人の車にぶつかり、中国人3人が死ぬ事件を起こした

 本来なら外交特権があるはずだが、1人当たり10万ドル相当の賠償金を支払うよう中国当局から求められ、帰国できなくなっている。しかし、北朝鮮の外務省は何も助けてくれない

 この領事は、北朝鮮が人工衛星(長距離彈道ミサイル)の打ち上げに成功したため、酒を飲んだと話しているという

 住民たちは、金正恩氏について「住民の犠牲をいとわない指導者」と陰口をしており、米韓軍が北朝鮮の最高首脳の「斬首作戦」の訓練を行っていることに関して、「言葉だけでなく(作戦を)はやく実行しろ」とまで話しているという

 北朝鮮は弾道ミサイルやロケット弾の発射を繰り返しているほか、国営メディアは、核弾頭の爆発実験と弾道ミサイル発射実験の準備を指示したと伝えている

 金正恩第1書記は、無謀な挑発を繰り返すより、北朝鮮の国内に目を向ける必要がありそうだ

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にしたが、現在は連絡が途絶えている。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

五味洋治 (ジャーナリスト)

ニュースソクラ 2016.04.06

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