農林水産物の輸出目標→2~3倍

九州経済連合会が農林水産物の輸出促進に本腰を入れる平成32年度までの中長期事業計画では、農産物で2倍、水産物は3倍にすると強気の姿勢を示した。こうした数値目標を掲げるのは初めてだ。九州は関係者の努力もあって高品質の農林水産物を産出してきたが、輸出産業化は掛け声倒れに終わることが多かった九経連は数値目標を打ち出すことで、第1次産業関係者の意識改革をねらう。(九州総局 津田大資)

九州には、(輸出の)目標を達成できる能力があると認識してもらうことが大切。そして人口減で国内市場が縮小する中、輸出拡大が遅れれば、売り上げ減と雇用減につながり、人口減少に拍車をかける。関係者にはその危機感を抱いてほしい

九経連で第1次産業を担当する産業第1部の真次(まつぐ)一満課長はこう語った。

九経連は今月2日、中長期事業計画を発表した。外国人入国者数やアジア各国との経済交流件数といった数字が並ぶ。中でも目を引くのが、農林水産物輸出額の数値目標だ

九州・山口・沖縄9県の32年度末までの輸出額を、農産物150億円(24年実績72億円)、水産物700億円(同235億円)、林産物40億円(同19億円)とした。農林水産物全体では2・7倍になる

こうした目標は、農林水産省が策定した輸出促進戦略をベースにした。国全体の農林水産物輸出額を、24年の4500億円から32年に1兆円とする目標だ

農産物輸出については、具体的な動きもある。

九経連などは、海外での直売所開設を目指し、農林水産省が6次産業化への取り組みに出す補助金に申請、昨年度に採択された。この補助金2300万円を活用し、現地の市場調査を進めた

その結果、香港とシンガポールが有望として、今年度中の開設計画を進めている。直売所は九州各県のJAグループなどが出資した会社で運営する。事業が軌道に乗れば、台湾や東南アジアに店舗網を広げる

水産物輸出については、農産物を上回る伸び率を目標とした。海に囲まれ、輸出先のアジアに近い九州の地理的優位性を考慮したという。

平成24年の全国の漁業生産額は1兆3541億円で、このうち九州は3618億円(沖縄、山口含む)と3割近くを占める。一方、水産物の輸出額は約1700億円のうち約230億円と全国の1割程度にとどまっており、輸出への取り組みが十分とはいえない。

輸出に向け九経連は、サケ・マスの輸出大国・ノルウェーの取り組みを参考とするノルウェーでは国が中心となって、ニーズの高い魚種を調べ、その魚種の養殖から加工・出荷を産業化した。九経連は、こうした機能を担う組織設置を、国に働きかける

水産物は青果物と比べて単価が高い。海外における和食ブームの主役でもある。九経連は「現在の円安傾向も追い風になる」と分析する

輸出増の恩恵にあずかるのは、既存の業者だけではない。

九経連の試算では、水産物の輸出目標が達成できれば、養殖業を中心に3300人分の雇用が創出されるという。一方、輸出が増えないままでは、国内消費の落ち込みや漁業者の高齢化が影響し、水産業関連だけで32年度までに1千人の雇用が失われる。

九経連が農林水産物輸出に力を入れる背景には、人口減少社会への危機感がある

民間シンクタンク、九州経済調査協会が先月末に公表した「人口予測調査」結果は、自治体や財界関係者に衝撃を与えた。25年後の平成52年のシュミレーションでは、九州の居住地域5万5千地点のうち、2割で人口が半減し、現状維持・増加はわずか4%にとどまるという

九経連の麻生泰会長(麻生セメント社長)は今月2日の記者会見で「人口減で国内市場が煮詰まっていくのは避けられないが、危機感はまだ薄い。スピード感を持って実行してもらいたい」と語った

九州は全国の「1割経済」といわれるが、農業産出額(平成25年産)は全国8兆5742億円のうち、九州・山口・沖縄で1兆8271億円と2割を占める輸出拡大に成功すれば、この強みが、九州経済をさらに力強く牽引することになる

■九経連による農林水産物輸出の目標

平成24年実績 32年度目標

農産物  72億円   150億円

水産物 235億円   700億円

林産物  19億円    40億円

(九経連と税関の資料より作成)

■農業産出額(平成25年)

全国     8兆5742億円

九州     1兆8271億円

■漁業生産額(同)

全国     1兆3541億円

九州       3618億円

(農林水産省の統計より)

※いずれも山口、沖縄を含む

参考 産経新聞 2015.06.13

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