軽くて柔らかい電気自動車→原付免許

原付や自転車の延長で、大人2人が乗れる新しい乗り物を――。起業して1年9カ月のベンチャー企業「rimOnO(リモノ)」は2016年5月20日、2人乗りの超小型電気自動車のコンセプトモデルを発表した一般的な乗用車の約4分の1とコンパクトなサイズで、外装や骨格に樹脂材料を多用して軽量化を測った。外板はウレタンフォームを布で包んだ柔らかいもので、取り外して好みのものに付け替えることができる。「小さくてスピードが出なくて、人に優しい乗り物が必要だ」という社長の伊藤慎介氏の思いに賛同した、設計会社や材料メーカーが協力。市販は2017年夏を予定している

小さくて軽くて柔らかいクルマ

2人乗り超小型電気自動車「リモノ」とデザイナーの根津孝太氏2人乗り超小型電気自動車「リモノ」とデザイナーの根津孝太氏 (クリックして拡大)

今回発表したコンセプトモデル「リモノ」は、「小さくて人に優しい」「クルマに興味ない人も含めて、いろいろな人が乗りたいと思う乗り物」(伊藤氏)を目指して開発した。そうした新しい乗り物が、歩行者や高齢者に優しい街に必要だという考えに基づいている。デザインはトヨタ自動車を経てznug designを立ち上げた根津孝太氏が、製品化に当たっての詳細な設計はドリームスデザインが担当した。

コンセプトモデルの車両サイズは全幅1.0m×全長2.2mで、後部座席に大人1人もしくは子供2人が乗車できる最高速度は時速45kmを検討しているバッテリーは交換式で、1つのバッテリーで走行距離50kmを目標とする。ステアリングホイールではなく、自転車や原付のようなバーハンドルとした

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リモノがどのような車両カテゴリーに属するのか、運転にはどのような免許が必要かについては後述する。

三井化学が提供したのは外板のウレタンフォームやドアパネルの変性ポリアミド、骨格のポリアミド樹脂、シートのクッションや受け材、窓の曇りを抑える親水コート、床材だ。これらの材料はこれまで自動車向けに採用されたことがなかった

例えば、床材のネットは樹木の根もとの保護に、シート受け材は土砂崩れ防止に、構造部材のコーティングはコンクリートを水分から守り強度を上げる用途で使われている。「これらの素材をクルマに使うという発想は全くなかった。自動車用は自動車用に、土木用は土木用に商談するという固定概念で仕事をしてきたが、リモノと組むことで新しい使い方に気付かされた」(三井化学の説明員)という。

678リモノに使われた樹脂材料のサンプル (クリックして拡大)
91011土木用として使われている材料が中心で、車載用としては採用実績がないものばかり (クリックして拡大)

布製の外装

外板のウレタンフォームは布でくるんだ柔らかいものだこの布はテント用のファブリックで帝人フロンティアが提供した。色やデザインなどさまざま取りそろえており、使う人の好みに合わせて着せ替えが可能になる。

121314外板は取り外して着せ替えできる(左)。帝人フロンティアのテント用ファブリックのラインアップ。さまざまなデザインの着せ替えに対応する(中央、右) (クリックして拡大)

リモノの本来の仕様は、運転に必要な免許を含めて日本には当てはまるカテゴリーがない。市販を予定している2017年時点では、やむを得ず仕様を変更して1人乗りで普通免許が必要なミニカーとして発売する計画だ。また、制度上の制約が多い超小型モビリティでは本当にいろいろな人が乗れるとはいえないとの考えのもと、超小型モビリティとしては販売しない

 リモノは日本に向けた製品だが、欧州の制度「L6eカテゴリー」をにらんで開発した。同制度には伊藤氏と根津氏が考える“より多くの人に乗ってもらうための条件”がそろっているが、日本には同制度に相当するカテゴリーがない。

L6eカテゴリーは、以下の条件がそろった超小型電気自動車を指す。

  • 車両重量350kg以下
  • 最高速度時速45km以下
  • 最大連続定格出力4kW以下
  • 定員2名

同制度はフランスやイタリア、スペインなどで導入されており、原付免許があれば14歳から運転できる

一方、日本には原付免許で運転できる4輪の乗り物はない。リモノ市販時の仕様となるミニカーと、超小型モビリティは普通免許が必要だ。伊藤氏と根津氏は定員もネックだと考えるミニカーは1人乗りとなり、超小型モビリティであれば2人乗りにはなるものの、地方公共団体が指定した地域内でしか走行できないという最大の制約がある

より多くの人に運転してもらうという点で原付免許で運転でき、夫婦や親子で移動できることを考えると1人乗りではなく後部座席に大人1人(子供2人)が乗れるというのが伊藤氏と根津氏が考える本来のリモノの仕様だもちろん、地域限定でしか走行できないという制約もなくすべきだと考えている

このようなコンセプトのリモノが該当するカテゴリーを日本に作るため、伊藤氏と根津氏は日本版「L6e制度」の導入を呼び掛ける。

販売計画は

リモノは日本版「L6e制度」が導入されるまで、1人乗りのミニカーとして販売する目標販売価格は購入補助を除いて100万円、販売台数は50台を計画している。コンセプトモデルと同じ仕様の2人乗りモデルは、協力を得られる自治体で実証実験として先行的に導入し、日本版「L6e制度」が確立されてから市販する。目標価格は月販1000台の場合に40万円前後を見込んでいる

日本版「L6e制度」の導入以外にも資金調達や基幹部品の調達など課題は残る。量産モデルの開発費用は、クラウドファンディングなどを通じて出資を募る計画だ。基幹部品についても、「インホイールモーター化を前提としたモーターと、高エネルギー密度で低価格なバッテリーを探しているバッテリーは交換式で、リモノ以外にも使えるような仕様としていきたい」(伊藤氏)としている。

2016.05.23

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