走れ、熊本の誇り→市電運行再開

 熊本地震に見舞われた熊本市で19日、市電が運行を再開した生活に欠かせない「市民の足」であり、熊本城をバックに疾走する光景は熊本の街並みのシンボルでもある。熊本の市街地に復活した市電に乗車した。(南九州支局 谷田智恒)

市電は健軍町から田崎橋・熊本駅前を結ぶA系統、健軍町と上熊本駅を結ぶB系統の2方向のラインがある

支局近くの西辛島町電停はB系統にある。ここからまず、上熊本駅方面へ向かった。乗車すると、アナウンスが流れる。「路面電車は環境に優しい乗り物です。市電を利用し、地球温暖化防止へのご協力をお願いいたします

耳になじみの声と文言に、どこかホッとした。

旧城下町の庶民的なエリア、新町界隈(かいわい)を通ると、商店街の食品店や花屋などが営業を再開していた。明治7年の創業で、建物が国有形文化財に登録されている老舗の「長崎次郎書店」も無事で安心した。しかし、沿線には全壊した被災家屋も散見された

乗客は年配とみられる女性が3人。病院からの帰路に市電を利用した同市西区の大塚キヨミさん(77)は「タクシーを利用したら時間もお金も多くかかる。市電が運行を再開してくれて本当に良かった」と語った

上熊本駅で折り返し、今度は中心市街地へ向かう市電に乗った。車窓をながめていると、災害ごみが随所にうずたかく積み上げられている光景に出くわした。市によるごみ回収も、ままならないのだ。オフィス街でもある花畑町界隈には窓ガラスが割れたままの建物もあり、気分がめいってしまう。

それでも、市電に並走したり、すれ違う車の中には、支援物資を山積みした救援車両も目立ち、勇気づけられた

そして、熊本市民の誇りである熊本城が視界に入ってきた城も長塀が倒壊、石垣が崩壊するなど大きな被害を受けた。瓦の落ちた天守閣の姿に、揺れの大きさを改めて痛感した。

やがて電車は熊本市役所前へ。陸上自衛隊の給水車が市民への給水を展開していた。市中心部の商店街や百貨店は、閉店したまま閑散としていた。

熊本市の大西一史市長は市電延伸を打ち出し、現在は3方面5ルートの候補を挙げて、調査研究を進めている路面電車は高齢者ら社会的弱者の“足”として有用であるほか、市の拠点性向上にもつながる。今回の早期復旧で、災害に強い利点も判明した

悠然と街中を走る市電が、熊本の復旧・復興を牽引(けんいん)する大きな力になってほしいと願う

産経新聞2016.04.20

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