貧困状態→明日は我が身

単身で暮らす女性の3人に1人が「貧困状態」-。こうした調査結果が注目され、「女性の貧困」にスポットを当てた書籍が昨年来相次いで刊行されている。労働市場で女性の活用が叫ばれる一方、社会から見えない場所で苦しむ女性は少なくない。貧困は女性だけの問題ではないが、実態が見えにくい分、議論や支援が遅れている現状がある。(戸谷真美)

国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩部長が平成25年国民生活基礎調査を基に分析したところ、所得格差を示す相対的貧困率は、20~64歳の1人暮らしの女性で33・3%。男女別にみると40代以降で格差は広がり、70代の1人暮らしの女性では46・3%が貧困。女性の苦境が際立っている

阿部部長は「日本で貧困問題が注目されるきっかけになった平成20年末の『年越し派遣村』にいたのはほとんどが男性。女性はホームレスになる前に、性産業などに取り込まれてしまうので、貧困問題は従来ほとんど議論されてこなかった」と指摘する

◆差別の対象に

こうしたなかで昨年9月に刊行された鈴木大介さんのルポ『最貧困女子』(幻冬舎新書)は、出会い系サイトで売春して子供2人を育てるシングルマザーや、性産業の底辺で生きる知的障害の女性たちの悲惨な実態を描く。「セックスワークをすれば困窮状態は一時的に緩和されるが、その時点で公的支援や分析の対象からこぼれる。貧困が自己完結して表に出ず、不可視化されてしまうんです

ルポライターの鈴木さんは犯罪現場の貧困をテーマに、裏社会や触法少年少女らを取材し、『援デリの少女たち』(宝島社)、『出会い系のシングルマザーたち』(朝日新聞出版)などを刊行。社会の裏側や底辺を歩くなか、危険な性風俗や売春で生き、差別の対象とさえなっている「最貧困女子」に出会ったという。「いまの日本は階層社会になり、別の階層にどれほど悲惨な現実があっても人ごとのように感じてしまう。中間層が最底辺層の存在を認識することが、彼女たちの『見える化』や支援につながると思う」と鈴木さんは言う

◆100社で不採用

一方、『失職女子。私がリストラされてから、生活保護を受給するまで』(WAVE出版)は、職を失い、100社近く不採用になった後、生活保護を申請した大和彩さんが、一連の出来事を詳細につづった記録だ。生活保護を申請する直前の一昨年4月、「鬱気味で眠れず、昨日の出来事も思い出せなくなって、備忘録的に始めた」というブログに加筆したもので、ハローワークや役所の福祉課などでの実際のやり取りが、自身の心境とともに詳しく語られている。

ブログの読者だったという担当編集者の三浦ゆえさんは「日々生きづらさを抱えている女性は今も多い。『今これを読んで、人ごとだと思える人がどれだけいるだろう』と思い、本にしたいと考えた」と説明する。

円安や物価高、消費増税で家計は苦しい。手取り月収10万円台の“貧困予備軍”の女性は多く、貧困層に落ちてしまうケースも増えていると感じます」。こう話すのは、『「貧困女子」時代をかしこく生きる6つのレッスン』(KADOKAWA)の著者で、ファイナンシャルプランナーの花輪陽子さん。同書では派遣切りに遭ったOLを主人公に、節約術をはじめ救済制度や保険などが漫画でわかりやすく紹介されている。

◆あすはわが身

『失職女子。』の大和さんは「仕事も家庭もあって私から見れば満たされている読者から『あすはわが身』という反響が多かった」。就労や家庭のあり方が多様化した現在、単身女性だけではなく、貧困は誰にでも起こりえる問題だといえるだろう

国立社会保障・人口問題研究所の阿部部長は「日本では女性が1人で生きることへの反感が強いが、家族のかたちは変わっている。労働環境の改善がまず必要だが、多くの人が女性の貧困問題を認識することは大切だ」と話している。

 参考 産経新聞 2015.01.18

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