警視庁、ストカー相談として受理せず

アイドル活動をしていた東京都武蔵野市の大学生冨田真由さん(20)がファンの男に襲われた事件で、事前に冨田さんから相談を受けた警視庁武蔵野署が「ストーカー相談」として受理せず、「一般相談」として扱っていたことが分かった。冨田さんは、男からのツイッターでの執拗(しつよう)な書き込みを訴えていたが、こうした行為は内容によってはストーカー規制法の規制の対象外となる

冨田さんを刃物で襲ったとして殺人未遂容疑などで逮捕、送検されたのは京都市右京区太秦中筋町の会社員岩埼(いわざき)友宏容疑者(27)。

捜査関係者によると、冨田さんは事件12日前の5月9日に武蔵野署を訪れ、岩埼容疑者の名前を挙げて「ツイッターで執拗な書き込みがされている」と相談書き込み内容を印刷した紙を署の担当者に渡し、「友達にまで迷惑をかけているから、やめさせてほしい」と訴えた署では3人が対応し、書き込み内容を確認した上で「一般相談」と判断したという

ストーカー規制法では電話やメールを執拗に繰り返す行為を「つきまとい等」として規制しているがツイッターなどSNSを使った同様の行為は対象としていない。ストーカー行為の規制のあり方を検討した警察庁の有識者会議は2014年8月、SNSによってしつこくメッセージを送る行為も規制対象に加えるよう提言同庁は国会議員と協議しながら検討しているが、法改正には至っていない

今回、岩埼容疑者が送ったとみられるツイッターの書き込みは、冨田さんのツイッターに直接送るものだった。送信は1月18日に始まり、冨田さんが送信を受け付けない「ブロック」を設定する4月28日まで、101日間で計340件に上っていた

岩埼容疑者は、冨田さんへのファンレターで自分の名前や住所を伝えており、冨田さんは署への相談でその住所も伝えたが、署は電話での連絡ができなかったため接触していなかったという

■署から対策本部への報告なし

ストーカー対策をめぐっては、2013年10月に東京都三鷹市の女子高校生が元交際相手に殺害された事件で、事前にストーカー行為の相談があったのに防げなかったことから、警視庁が新たな取り組みをまとめ、現在の「人身安全関連事案総合対策本部」となる部署も新設した

 三鷹市の事件では危害を加えるとの言動が事前に把握されておらず、危険が切迫しているという判断をしていなかった。このことを教訓に、警視庁は、警察署がストーカー相談を受けた場合、新設された対策本部の専門チームに報告し、そこで事態の危険性や切迫性を評価することにした

 しかし今回は女性の訴えを受けた武蔵野署が「ストーカー相談」として扱っていなかったため、署から対策本部への報告はなかったというある捜査幹部は「憧れるアイドルに近づきたいというファン心理と、ストーカーの心理との線引きは難しく、一般人同士の関係性と比べて判断しにくいケースもある」と話す

武蔵野署に相談する前の5月4日には、冨田さんの母親が、岩埼友宏容疑者の自宅を管轄する京都府警右京署に「嫌がらせを受けている場合、どう対処すべきでしょうか」と電話で相談右京署員は岩埼容疑者の名前や詳しい住所を確認せず、冨田さんの自宅近くの警察署に相談するよう伝えたという

警視庁は今回の対応について、相談内容が岩埼容疑者によるツイッターの書き込みをやめるよう求めるものだったことなどから、「ただちに相談者の身に危険が及ぶ可能性は低いと判断した」と説明。今後、今回の対応が適切だったかどうかを検証するという。

朝日新聞デジタル2016.05.24

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