誤ったがん理論にだまされるな

近藤 誠

僕の外来に来られた、上皮内がん患者のGさん(29歳)との相談内容を引きつづき紹介します。

放っておいていいものを検診で見つけだされ、子宮を取られたうえに、治療死して……。心が痛みます。上皮内がんは、放っておいても何も起きないし、死なないのです

証拠をあげると、日本では、20歳代の女性100人が検診をうけると、1人に上皮内がんが見つかります。つまり、100万人につき、1万人にがんが発見され、それを手術しないで放っておくと、進行し、転移して命を落とす、というのが現在の誤った“がん理論”ですね

「はい」

「検診がなかった1975年、20~24歳の女性人口は450万人。このうち何人が頸がんで死亡したと思いますか?」

「数千人でしょうか?」

「誤ったがん理論にだまされるな。

同じ年、ひとつ上の世代である25~29歳の人口は530万人。何万人もが上皮内がんを持っていたはずなのに、頸がん死亡は7人。上皮内がんは、放っておいても死ぬことはないのです

「それなら、なぜ亡くなった人がいるのですか?」

「先ほどと同様、死亡した原因は2つで、ひとつは治療死。検診がない時代、不正出血などがきっかけで見つかった子宮頸がんでも治療死した人たちがいて、統計上“頸がん死亡”とされてきたのでしょう

もうひとつは、肺や肝臓などの臓器への転移のため。転移する性質のがんは、1ミリ以下の大きさのときに転移してしまうから、転移する前に発見できないのです

「そうなんですか」

正常組織に“幹細胞”があるのを知っていますよね。京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞をもらって有名になったiPS細胞は、幹細胞の一種です。実はがんにも“がん幹細胞”があり、がん組織の起源になっています

子宮頸部でも、「本物のがん」の場合は、正常細胞ががん幹細胞に変わり、それが分裂してがん細胞を増やしていくわけだけど、がん幹細胞に転移する性質があれば、早々と転移してしまいますなにしろ1ミリでも、100万個のがん細胞が詰まっているわけですから

他方で上皮内がんは、いつまでたっても上皮内がんのままか、もしくは、そのうち消えてしまいます

幻冬舎plus  2016.03.20

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