若者の間で「焼肉女子」が増える意外な理由

 若者が消費しないと言われるようになってからもう久しく経ちます。ところが、SNSのインスタグラムを開いてみるとお気づきになると思いますが、消費しないはずの若者たちが、たくさんの「肉」の写真を掲載するようになっています。しかも、結構高い値段の焼き肉屋さんの肉の写真が載っていることもしばしばです

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消費しない若者たちがなぜ、値段の高い肉の写真をSNSにアップするようになっているのか? 今回はこの疑問を、若者研究所の現場研究員たちが解説してくれます。

■ じわじわ増える「焼肉女子」の実態とは?

「焼肉女子」という言葉を聞いたことがあるだろうか。焼肉女子というのは「月に何度も高級な焼肉店に通い、そこで撮影した写真(生肉)をインスタグラムなどに投稿する女子」のことだ

「車離れ、旅行離れ、お酒離れ」と、とにかく消費しないといわれる近頃の若者ですが、なぜか若者女性は肉に対しては、かなりの消費を行うようだ。今回はその実態について迫ってみる。

都内の私立女子大学に通う、大学4年生のAさん。先日は、卒業旅行としてサークルの友人たちとハワイに行ったそうだ。そんな彼女は焼肉女子のひとりである。

インスタグラムを見てみると、生肉が掲載されていた。ちなみに、この記事を執筆するにあたり、取材した当日も、友人たちと焼肉に行く予定があったそうだ。

 実際に彼女の焼肉事情について尋ねてみると、

「焼肉には月に3回ぐらい大学の友だちと行って、1回あたり平均8000円ほど使うことが多いです。焼肉マスターを目指している訳ではないけれども、ここ最近は色んな焼肉店に訪れていますね」と教えてくれた。

彼女はこうも続ける。

「でも何だかんだ、結局3、4店舗、自分のお気に入りの店があって、そこに行くことが多いです。具体的には、ジャンボ、コバウ、うしごろ です。値段は張るのですが、この3店舗は美味しいので、よく行っちゃいます

では、なぜAさんはこれほど焼肉店に通い、生肉の写真を撮影し、インスタグラムに投稿するのか聞いてみた。

すると、「『色効果』によって、SNSでの投稿を少しでも目立たせられればと考えたからです。インスタで少しでも多くのいいね数をゲットしたいなと思っていて、そのためには地味な色の写真よりも、生肉の赤身のような鮮やかな色が写っている写真をポストすれば良いのではと思うから」
と答えてくれた。

実際に、彼女がよく通っているという飲食店「うしごろ」というキーワードでInstagramを検索してみると、生肉の写真ばかりが投稿されていて、画面が一気に色鮮やかになった。

■ 周囲との差別化アピール

都内の私立大学3年生のBさん。趣味は旅行だそうで、昨年には友人とベルギーやオランダに訪れた。そんな彼女も焼肉女子のひとり。彼女のインスタグラムを覗いてみると、1カ月の投稿のうち、実に4分の1が生肉の写真で締められることもある程の、焼肉女子なのである。

実際にどれくらいの頻度で肉を食べに行くのか尋ねてみると

「基本的に週に1回は友達と焼肉を食べに行ってますね。使う金額は多い時は1回あたり8000円くらいです。先日も、私のお気に入りNo.1の焼肉店である、金舌で食べてきました。金舌は美味しいだけでなく、お土産を頂けるのも嬉しくて通ってしまうポイントなんです」とのこと。

また、最近では焼肉だけでなく、ローストビーフの名店である鎌倉山にも訪れた際の写真が掲載されていた。

彼女に、なぜこれほど焼肉店に通うのか尋ねてみたところ、

「正直、周囲と差別化したいからかな。。。もちろん、私は食べることが好きだから焼肉にも行くけれど、高級な焼肉店で食べていることをSNSに投稿すると、周囲と差別化できる狙いもあることは事実ですし、グルメアピールをしたいという思いもあります

SNSは自己演出に最適なツールであり、彼女自身はインスタグラムでの投稿を通じて「周囲とは違う自分」というイメージをブランディングし、普通の大学生との差別化を図りたいと考えているそうだ。チェーン店で食事をすることもあるそうだが、それはSNSには投稿せず今回の焼肉のように一目で高級だとわかる店の写真を投稿するのだという

■ 焼肉を食べるときだけの「焼肉友だち」も出現

都内在住の大学生Cさんも焼肉女子である。主に表参道の金舌などの焼肉店に週1回ほどの頻度で通っている。1度に飲み物を除いた食事代だけで1万円程度使うという

彼女には、焼肉を食べるときだけ会う「焼肉友だち」がいる。その友だちも焼肉女子であり、2人で色々な焼肉を食べ歩いているという。

最初はSNS上でしか面識のなかった2人だが、インスタグラムで焼肉の写真を投稿しているのを偶然見たことがきっかけに2人で会うようになった。昨今の若者は、趣味嗜好によってLINEのグループが作られるなど、コミュニティが今までよりも細分化される傾向にある。焼肉女子もそのひとつであり、彼女たちの友人関係は「焼肉が好き」という共通点だけで形成されている

また、彼女に聞いてみると、SNSに投稿するのには一種の自虐要素も含まれているという

一般的に「焼肉=デブ活」というイメージが強くあり、「あー、またデブ活をしてしまった、笑」という自虐をすることで、ネタにしようという意図があるらしい。しかし、周囲で見かける焼肉女子たちは、これほどまでに焼肉を食しているにもかかわらず、スレンダーな体型を維持している事が多い

実際にCさん自身も痩せている。

その裏には影でのダイエットという努力があるのかもしれないが、彼女たちが焼肉写真を頻繁にSNSに投稿するのには「こんなに焼肉食べてデブ活をしているにもかかわらず、体型は維持できているのよ」という間接自慢も含まれているのではないだろうか

さて、ここまでSNSにて焼肉・生肉の画像を投稿する若者の実態を紹介してきた。自身の彼女たちにインタビューを行う過程で、焼肉女子が増加している3つの主な理由が見えてきたので、ここでまとめてみる。

まず第一に、生肉の写真を投稿すると「SNS映え」するという点だ

若者は、FacebookやTwitter、そしてInstagramなどのSNSに様々な投稿を行っているが、その中で、ラテアートやパンケーキなどの地味な色合いの写真だけを投稿しても目立たず「いいね!」は稼げない。そこで、周りと差別化するために、今回紹介した焼肉女子たちのように鮮やかな色彩でフォロワーの目をひく生肉の画像を使いたいと考えるのだ。他にも、上記の理由から生肉だけではなく、ウニやイクラの画像を投稿する若者も増加している

第2に、「周囲とは違う私アピール」が挙げられる

焼肉女子はいわゆる「大衆店」ではなく、前述したような金舌、うしごろなどの価格帯が高めのお店を訪れる傾向がある。綺麗な店舗は女性でも入りやすく、さらに名の知れた高級店で焼肉を食べる様子をSNSに投稿すれば、間接的に友人との差別化、また自身の金銭的な余裕やグルメもアピールすることができるのだ。常に人間関係に気を遣っている最近の若者は、直接アピールより間接的な自慢を好むというのも、高級焼肉店を利用する大きなポイントである。

最後に、「太らないアピール」という点もある。前述したように、「焼肉=太る」というイメージは一般的に浸透している。そこであえて、痩せている女子が焼肉・生肉の写真を投稿することによって、自分はこんなに太りそうなものを食べているのに体型を維持している、という間接自慢を意識している。今後も消費しなくなっていると言われる若者がどんな消費をしていくのか注目である。

■ 原田の総評:ポスト焼肉女子をつかめるか?

焼肉女子のレポートはいかがでしたでしょうか。

もちろん、皆が皆、高級な焼肉店に行っているわけではありません。しかし、学生なのにそうしたお店に行く子は増えていますし、少なくとも、焼肉の写真をSNSにアップする子は増えており、かなり一般的な行為になりつつある、ということは言えると思います

とはいえ、肉の写真をアップする女子が増え過ぎてしまっているので、やや飽和状態になってきつつあることも事実です

今後、肉の次に女子たちの心をつかむ写真の素材は何になるのか? これを言い当て、自社や自社商品・サービスのプロモーションなどと絡めることができる企業は、若者たちに、しかも自発的に、SNS上で自社商品等の情報を拡散してもらえることになるのではないでしょうか。

原田 曜平

東洋経済オンライン  2016.03.25

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