若い看護師と結婚したモテ男の不安

晩婚さんに限らず、様々な人に「なぜ好きになったのか」「この人と結婚したいと思った理由は何か」と問いかけるのが日課のようになっている。それが筆者の趣味であり仕事でもあるからだ。

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■ 「若さ」「美しさ」にとらわれる人々

「眼鏡&ヒゲで、礼儀正しい人ならばたいていOK!」

このように明確かつ広いターゲットを持っている人は幸せだ。眼鏡&ヒゲの人に礼儀正しくなってもらうのは難しいが、礼儀正しい人に眼鏡とヒゲを装着してもらえればいいのであれば、恋愛対象となる男性は膨大な数になるだろう。なお、この発言をした女性は年上のオタク男性と結婚し、笑いの多い生活を送っている

たいていの人はあいまいかつ狭いターゲットに固執して迷走をする。「年齢も見た目も自分より若くて美しい(かっこいい)人」かつ「生活力があって賢い人」を目指し続けるのだ特に30代の独身男女にこの傾向が強い。ちゃんと恋愛をし、なおかつ不安要素の少ない結婚をしたいのだろう

結果として、男性は28歳~35歳、女性は25歳~32歳ぐらいにモテ期を迎える。ただし、男女ともに爽やかな外見で安定した仕事に就いていることが大前提だこの「奇跡の7年間」のうちにお互いを見つけ合って結婚する人たちは、学校を卒業した直後ぐらいに勢いで結婚する「早婚さん」に比べても結婚生活の安定度は高い気がする。離婚して再び独身に戻る人は少ない。いずれにせよ、モテ期がとっくに終わっているというのは、われわれ晩婚さんにとっては嬉しくない現実である。

未婚者にインタビューをすると反論が返ってくる。「外見は問わない。話が合う人がいちばん」とか「財産よりも自分をしっかり持っていることが大事」などと答えるのだ

しかし、それらは実際の恋愛感情や結婚への決断にはあまり大きな理由にはならない。見た目が若々しく美しければ黙って微笑んでいるだけでモテるし、好きになったら会話は自然と盛り上がる。そして、豊かな家庭生活を営める見通しこそが結婚への決め手となる

大手IT企業で正社員として働いている小林文雄さん(仮名、37歳)は典型例である。3年間も同棲していた同い年かつ同じ業界の恋人と別れ、昨年末に9歳年下のかわいい看護師である絵里子さん(仮名、28歳)と結婚した。文雄さんは上記の「あいまいかつ狭いターゲット」を攻略したともいえる。ただし、結婚するまでには2つの壁があったらしい。

タレントのケイン・コスギを醤油顔にしたような颯爽とした風貌の文雄さんだが、なぜか声が小さくて何を言いたいのかわかりにくいことが多い。照れ屋なのかもしれない。誰とでも会話が弾むタイプではないが、人懐っこいところがあり、独身時代はいわゆる女遊びも盛んなほうだった。美人姉妹が切り盛りする新橋の小料理屋に誘い、話を聞くことにした。

■ 震災直後のプロポーズで砕け散る

「3年間同棲していた同い年の彼女と別れたのは東日本大震災のあった2011年の秋でした。震災直後にプロポーズしたのですが断られてしまったんです。待たせすぎたのかもしれませんし、途中で僕が浮気をしてしまったことが原因だったのかもしれません。気立てのいい女性でした。彼女の信頼を裏切ってしまったんです……

新婚なのになぜか暗い調子になる文雄さん。筆者も経験があるが、別れてから半年後ぐらいに腰が抜けるような寂しさや後悔を感じる恋愛がある。文雄さんの場合は、そのタイミングで衝撃的な噂を聞いてしまった。

「翌年の春には、彼女は別の男性と結婚をしていたんです。しかも、すでに妊娠中。思わず逆算してしまいました。僕との同棲中に出会っていた可能性が高いですよね。こういうのってショックを受けます」

自分は浮気していたけれど彼女の浮気は許せない、認めたくない――。自分がいま独身で、元恋人と寄りを戻したいのであれば理解できる心情だが、文雄さんはすでに幸せな結婚をしている。元恋人のことは「自分とは遠いところで勝手に暮らしていてほしい」と思えばいいのではないか

常にちょっとウジウジしている文雄さん。そんなところが女性の心をくすぐるのだろうか。同棲を解消した直後の冬に、現在の妻である絵里子さんと合コンで出会い、年内には付き合い始めた

「男3、女5の合コンでした。男が少なかったので必死で盛り上げましたよ。最初は口説いたりする余裕はありませんでした。3軒目でようやく酔いが回って、連絡先を交換できた記憶があります。彼女のほうからメールが来たので脈があるなと判断したんです。クリスマスにプレゼントを渡して、4回目のデートで告白して付き合い始めました」

優柔不断のように見える文雄さんだが、女性との接し方に関してはスマートである。最大の成功ポイントは「自分に関心がある女性にアプローチする」ことだろう。絵里子さんのほうから「感じのいいメール」が来るのを待ったうえで行動を起こしているのだ

■ モテ男は玉砕覚悟のアタックはしない

筆者を含めたモテにくい男女はまったく逆のことをする。「たぶん自分に関心はない」もしくは「まだまだ遊びたいので真剣に付き合うつもりはない」人になぜか魅力を感じて、労多くして功少ない戦を仕掛けてしまう。勝率などを考えることはない。突進あるのみ。恋愛に対して純粋だと言えないこともないが、見方を変えると相手の気持ちを考慮しない身勝手な人間なのだ。下手をするとストーカーになってしまう

文雄さんは違う。玉砕覚悟の恋愛などはしない。同棲していた元恋人との別れを反省材料にして、結婚前提に付き合える女性を探していたのだ

「その合コンは、友人の結婚式で司会を一緒にやった看護師さんにお願いして開いてもらいました。そういうつながりであれば変な遊び人が来る可能性は低いですからね。ヨメ(絵里子さん)は専門学校を出てからすぐに働いているので、当時24歳でしたけれど考え方がしっかりしていました。若いからすぐにやらせてくれる、みたいな女性ではありません。人として尊敬しています

文雄さんと絵里子さんが付き合い始めたのは2012年。2人はすぐに婚約をしたが、2つの高い壁が立ちふさがっていた。両方に共通するのは、絵里子さんの親族は九州の田舎に集まっており結束が極めて固いことだ。絵里子さんは病床の祖母を自分が看取ることを決めていた。

「そのために看護師になったようなものだと聞いて、僕も遠距離恋愛を覚悟しました。彼女は本当に病院を辞めて実家に戻り、おばあさんが亡くなるまでの2年間を一緒に過ごしたんです

絵里子さんが東京に戻ってきたのは2014年の春。ようやく結婚できるのかと思ったが、もうひとつの壁に挑戦しなければならない。長女の絵里子さんは家を継ぐことを期待されていて、九州の人間ではない文雄さんとの結婚は両親から強い反対を受けたのだ

ただし、2年間の遠距離恋愛を乗り越えた後なので、その反対姿勢も少し緩和していた。1年以上同棲しても大丈夫なようならば、という条件付きで結婚を許された。妻のほうの両親が結婚前の同棲を強制するというのは珍しい。

■ 表情がさえない理由

同棲期間を無難に終えて、昨年末に念願の結婚を果たした文雄さん。表情がさえないのは、結婚生活のせいではない。現在のIT企業には転職して1年ほどしか経っていないが、前職で養ってきたスキルを生かせる職場ではないのだという

「結婚するためにも大手企業に入ろうと思って転職したのですが、正直に言って仕事は充実していません。だからこそ、僕のためにご飯を作って待っていてくれるヨメがいる家は、自分を安定させてくれる場所です。僕は恋人にも素の自分をさらすことが苦手だったのですが、ヨメにだけは自分を見せられている気がします

いま、さらなる転職に向けた活動が正念場だという文雄さん。仕事が充実すればもっと元気になるのだろう。しかし、苦しい今でももう少しだけ明るく堂々とするべきだと思う。「素の自分」をさらして甘えるだけでは、いくらしっかり者の女性でもうんざりしてしまう。

われわれ晩婚さんは、「人生楽ありゃ苦もあるさ」を経験的に知っている苦しみや悲しみもあるからこそ人生は面白いのだとわかりつつある。不安や焦りは尽きないが、日々の生活を楽しむ気持ちを忘れずにいたい。それが結婚相手にも安心と励ましを与えることにつながる

大宮 冬洋

東洋経済オンライン2016.03.18

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