舞い上がれ! 小型飛行機

東京都墨田区の町工場の技術を結集し、有人の小型飛行機を組み立てて大空に飛ばすプロジェクトが進められているさまざまな業種の“職人”たちが集まって、昨年3月から始まり、週1回のペースで作業を進めている。「ものづくりのまち」として知られる同区だが、町工場の数は減少傾向にある。しかし、職人たちは「いつか墨田で作った飛行機を飛ばすぞ」との熱い思いで作業に取り組んでいる。

■短滑走で距離可能な2人乗り飛行機

組み立てているのは、短距離で離陸可能な2人乗りの「STOL CH-701」の製作キット。完成すると、機体の重量は約500キロ、全長は約6メートル、全幅は約8メートルになる

購入したのは、高速通信機器の製造などを行っている「ソネット」(同区業平)の小林博昭代表(71)。「災害時に短い距離の滑走で飛び立ち、物資が届けられる飛行機があれば」と、10年以上前に米国で手に入れた

ただし、キットと言ってもアルミ合金の板や骨組み、エンジンなどが入っているだけで、ほとんどの材料は加工が必要なものばかり。ドリルで穴を開けたりする必要もあるが、図面は英語の上、材料に穴を開ける場所を示す印などはない。

■いい年したおっさんたちが…

小林さんは何度か製作しようと考えたが、「仕事が忙しくてできなかった」と、手付かずの状態が続いていた。

そんな中、町工場からの相談などに応じる「すみだ中小企業センター」(同区文花)の相談員が、小林さんを訪ねた際に製作キットの存在を知り、一緒に組み立てる話が持ち上がった

区内の工場主や町工場の作業員らに呼び掛け、飛行機作りのプロジェクトはスタートした

「みんなで、他ではやっていないようなことをやろうって盛り上がった。いい年したおっさんたちが集まって作業しているよ」と小林さん。

作業は毎週水曜日の夜に、同センターの一角で行われている。訪れたこの日は、午後7時ごろから作業着姿の人たちが集まり出し、約10人で水平尾翼の骨組みに、アルミ合金をかぶせる作業を行っていた

板金工や金属加工、電気関係など、さまざまな職種の人が1つの作業に取り組む

プロジェクト代表で、プラスチックの真空成型を行っている「吾嬬製作所」(同区立花)の松村昌幸専務(41)は「いろいろな業界の人と、知恵を出し合うことで、新しい加工方法が生まれるなど、面白い化学反応が起きている」と笑う。

■「つくる楽しさ」がものづくりの原点

「ものづくりのまち」として知られ、多くの町工場が並ぶ墨田区。しかし、昭和45年に約9700あった区内の工場も、平成25年度の区の調査では約3千軒にまで減少するなど、“町工場の衰退”が進んでいる

松村さんは「この作業が仕事につながるかは分からない」とした上で、「ただ、ここに集まっている人たちの活性化にはつながっている」と力を込めた

同センター近くに住み、建設機械会社に勤める40代の男性は「飛行機が作れるのは幸せ。みんな、お互いに刺激を受けながら、いつか飛ばすぞっていう強い思いでやっている」と話した

「『つくる楽しさ』を感じることが、ものづくりの原点だと思う」と同センターの瀬戸正徳館長(49)は語る。

このプロジェクトから新たな発想やビジネスチャンスが生まれたり、見学にきた子供たちが、ものづくりの素晴らしさや楽しさを知ってもらえるきっかけになれば」と期待を寄せている

飛行機の完成にはまだまだ時間がかかるが、完成後は小型機操縦訓練などを行っている国内の飛行場で、飛ばしたい考えだ。

参考 産経新聞 2015.06.02

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