臭いに敏感な犬→お尻の臭いをかぐ

犬はにおいからさまざまな情報を得て、処理する能力に長けている精密機械を凌駕する性能を持っているのだ

気候:嗅覚で天気予報ができる

犬は室内にいても外の天気がわかる最も優れた感覚器である嗅覚を使って探っているのだろう。雷が苦手な犬は、雷鳴が聞こえる前から怖がり始めることがある。犬の聴覚は人の約4倍なので、人には聞こえない雷鳴に気づいた可能性もあるが、聴覚よりはるかに優れた嗅覚で気候の変化を察知している可能性が高い

周囲の状況:散歩は好奇心を満たせる

犬にとって散歩はさまざまなにおいに出会える時間。人が景色を楽しみながら歩くように、犬はにおいを楽しみながら歩く。時には気になるにおいを嗅いで周囲の状況を確認。優れた嗅覚の能力を思う存分発揮でき、好奇心も満たすことができる。散歩は心身に満足感を得られるのだ

獲物:酢酸や酪酸を嗅ぎ分ける

犬は捕食動物なので、獲物(生物)に関するにおいによく反応する。例えば酢酸(体臭)には人の1億倍、酪酸(脂肪のにおい)には約80万倍の精度で感知する。警察犬が人の足跡を追跡する時、靴の縫い目から足跡にわずかに残された汗のにおいを嗅ぎ分けてたどっているのだ。精密機械も及ばぬにおいの世界を感じている

個体を識別:遺伝的なにおいを感知

人は他者の容姿で個体識別するが、犬はにおいで個体識別している。犬に人の個体識別をさせる研究によれば、遺伝子的に近い双生児の区別は難しいとか。飼い主の服装が変わっても識別できる理由は、変化しにくい遺伝的なにおいを手がかりにしている可能性がある視覚よりも嗅覚に頼っていることもうかがえる挨拶代わりににおいを嗅ぐのは、相手の情報を収集して記憶する意味もあるのだろう

性別:子孫を残しライバルを判別

犬は鋤鼻器というフェロモンを敏感に感じ取る副嗅覚器を備えている。人は退化してしまった器官だ。においで個体識別する犬にとって、子孫を残すためには、相手の性別を判断することが特に重要だ。また、同性であればライバルとして戦わなければいけない場合もある。生きるために必要な器官だったのだろう

食べ物:嗅覚で好みを判断する

 犬は食べられるものと食べられないものをにおいで区別している。視覚や味覚は人のように発達していないので、好みのにおいであれば食べる。散歩中の拾い食いは飼い主を悩ませる行動だろう。野生動物であれば慣れないにおいのものは口にしないが、現在の犬は危機管理の本能が薄れぎみ気になるにおいのものがあると、確かめるためにとりあえず食べてみる、という犬もいる。逆に、おいしそうに見えても好みのにおいでなければ口にしない

特定の臭気:体の部位を嗅ぎ分ける

警察犬や麻薬探知犬など、特定のにおいに反応する訓練を受けた犬は、無数のにおいが混じり合った中から目当てのにおいを嗅ぎ分けることができる。鼻腔内の優れた構造に加え、情報の分析を司る脳の嗅覚野も発達しているからだろう。日数をかけて訓練された犬は、人の「ひじ」と「手」のにおいを嗅ぎ分けられるようになる。嗅覚が優れた犬にとっては、嗅ぎ分けるべきにおいを理解する方が難しいかもしれない。

敵味方:家族群で暮らした名残

祖先のオオカミは家族群で生活する動物だ。両親を中心とした小規模の群れを作っていた。マーキングによってテリトリーや自分の存在をアピールしていたので、敵と味方を判断することは重要だった。それは現在の犬にも本能的な部分で受け継がれている。

ウンチ:食べ物のにおいを感知

子犬は自分のウンチを食べてしまうことがある食糞と呼ばれるこの行動には、食べ物のにおいが残っている、未消化物の食べ物が混ざっている、といった理由があるきれい好きな日本犬でも子犬の頃は食糞をする犬も見られるが、成長と共に自然に収まるケースが多い。しかし、他の犬や猫のウンチは別。食べ物のにおいを感じれば食べてしまうことも

存在感:無臭のものは認識しない

においの世界に生きる犬にとって、においがしないものは存在を認識できないのかもしれない。例えば、テレビに映った犬を「生きている犬」とは思わないようだ。動体視力は優れているので、動いているものに反応はするが、視覚は人のように発達していないので、「正体不明の何か」という認識になるだろう。

◇嗅覚で情報を集めて分析し自らのにおいで個体識別

犬の嗅覚が極めて発達した理由は、祖先であるオオカミの頃から嗅覚が優れた個体が生き残り、子孫を増やしてきたからだ。犬の嗅覚の感度はにおいの種類によって異なり、特に動物には敏感に反応する野生で生きていた頃から、獲物を追跡したり敵から逃れたりするために、優れた嗅覚が必要だったのだろう。生きるために必要な能力を持つ個体が、生存に有利だったことは間違いない。家畜化されるはるか以前から、強い自然選択を受けてきたと考えられる。

また、嗅覚とにおいはコミュニケーションにも使われてきた。監修の獣医師である山下國廣先生に詳しくうかがった。

「肉食獣は肛門の左右に『肛門腺』という臭腺の袋があります中には強いにおいの分泌物が入っていて、個体識別の役割を果たします犬は挨拶の時にこのにおいを嗅ぎ合い、互いの情報を確認しているのです自分のにおいを嗅がれることを嫌がる犬もいますが、挨拶が下手なわけではありません。神経質な犬や防衛意識の強い犬は、無防備なお尻を嗅がれることを嫌うので、犬の気持ちを尊重しましょう。肛門腺の分泌物のにおいはマーキングにも使われます。肉食獣以外にも臭腺はあり、カモシカは目の下なので『眼下腺』と呼ばれます。動物園に行けば、カモシカが木に顔をこすりつけている様子が見られるでしょう」

参考 sppo 2015.10.02

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