腎臓病偽陽性→中高生で後絶たず

子どもの腎臓病を早期発見するため、国が小中高校に義務づけている「学校検尿」早期の治療を可能にし、腎不全になる子どもを激減させた一方で、採尿の知識不足などにより、異常がないのに陽性になるケースが後を絶たず、再検査の費用と手間が自治体財政や児童生徒の負担となっている小児科医らは「正しい方法で検尿を」と呼び掛けている。(田中伸明)

【表】学校検尿での陽性率

腎臓はおへその少し上辺りに左右1対あり、動脈から流れ込む血液の老廃物を除き、尿をつくる。尿にタンパク質や血液が混じる場合は、腎臓病の恐れがある

学校検尿は1974年、腎臓病や糖尿病の早期発見を目指し、全国の学校で始まった腎臓病関連ではタンパク質の検査が義務づけられているが、神戸市などのように潜血を追加する自治体がほとんどだ

家庭で採取した尿が2回連続で陽性だった場合、2次精密検査を行い、さらに腎臓の組織検査などを経て確定する。治療が必要な腎臓病と最終的に診断されるのは千人に1人程度という。

神戸市の2015年度学校検尿で、家庭での採取による1次検尿の陽性率は、中学女子、高校女子で1割近くに上る中学男子も約3%、高校男子は約2%で、小学生より高かった=表。2次検尿を経ても、中学、高校の女子は約2%が陽性だった。

神戸大医学部小児科の野津寛大(のづかんだい)准教授(43)は「中高生は尿に生理の血や精液が混入することが多く、偽陽性の割合が跳ね上がる」と指摘する

偽陽性による再検査を避けるためには、家庭での採尿を正しく行う必要がある。各自治体が周知を図るが、前夜に排尿する▽出始めの尿は捨て中間尿を採取する-の2点が守られないケースが目立つという

 子どもの腎臓病には、腎臓の糸球体(しきゅうたい)にタンパク質が沈着し機能低下する「IgA腎症」、血中のタンパク質が減り全身がむくむ「ネフローゼ症候群」、腎臓に球状の袋が多発し機能を妨げる「多発性嚢胞(のうほう)腎」などがある

いずれも有力な治療法が開発され、学校検尿と相まって、腎不全を起こし人工透析が必要になるケースは激減した。「以前は腎臓病の疑いがある子どもは厳しく運動を制限したが、現在は限定的になった」と野津准教授。

神戸大小児科では、飯島一誠(かずもと)教授(59)らが中心になって、IgA腎症に対し複数の薬を併用する「カクテル療法」や、ネフローゼ症候群へのリツキシマブによる薬剤治療の確立に貢献してきた。飯島教授は「IgA腎症で腎不全になる子どもは昔は多かったが、今はほとんどいない」と振り返る

家庭での採取による1次検尿、2次検尿が陽性になった場合、神戸市などでは学校が取りまとめて2次精密検査を行っているが、保護者に受診を委ねる市町も多い。

野津准教授は「腎臓病は症状が出る前に治療を始めれば、治したり進行を遅らせたりできる。1次検査が陽性の場合はなるべく早く受診を」と話す

<家での採尿の注意点>

前日夕からビタミンC入りの薬やスポーツ飲料を飲まない→潜血反応の偽陽性を防ぐ

前日、寝る前に必ず排尿する→運動後は健康な人も尿にタンパク質が混じるため

朝起きてすぐの尿を採取する。ただし出始めの尿は捨て、中間尿を取る生理の血や精液の混入を防ぐ

<学校検尿>

1973年の法令改正で健康診断の項目に加えられ、翌年から全国の小中高校で実施。尿中のタンパク質と糖分の検査が必須で、潜血検査も望ましいとされる。家庭で採取した尿が2回連続陽性だった場合、学校で取りまとめて精密検査を行うA方式と、家庭に受診を促すB方式がある。学校検尿は韓国や中国でも一部行われている

神戸新聞NEXT2016.04.24

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