能の発達を左右するのは

筑波大学と理化学研究所のチームによる、睡眠のメカニズムに関する研究が22日の米科学誌サイエンスに掲載されました。この研究にはいくつもの発見が含まれています。まず、レム睡眠とノンレム睡眠の切り替えを司る神経細胞を発見しました。そして、遺伝子操作技術によって、この神経細胞を強めたり、弱めたりしたマウスを作り出しました。このマウスによって、レム睡眠の働きを詳しく調べることが可能になりました。その結果、レム睡眠は学習や記憶形成に貢献し、胎児の脳の発達に関わっていることなどが示唆されました

◆哺乳類と鳥類だけにある複雑な睡眠

大多数の生物においては睡眠と覚醒が単純に入れ替わるだけですが、哺乳類と鳥類に関しては睡眠がさらに「レム睡眠」「ノンレム睡眠」に分けられ、複雑化していますレム睡眠とは睡眠時に眼球が素早く動いている状態のことで、人が夢を見るのはこのレム睡眠においてです。これまでもレム睡眠の存在が脳の複雑な進化と関連があると考えられていましたが、その仕組みについては分かっていませんでした。

◆レム睡眠と学習との関係

脳波には、リラックス時に現れるアルファ波、集中時に現れるベータ波などがありますが、デルタ波も脳波のひとつで、学習や記憶形成に関わっていることが知られていました。今回の研究はレム睡眠・ノンレム睡眠とデルタ波の出現の関係を明らかにしています

デルタ波はノンレム睡眠中に生じやすい脳波です。実験では、レム睡眠を人為的に強めたマウスと、人為的に弱めたマウスを比較しています。その結果次のことが分かりました。

・レム睡眠を減らすと、ノンレム睡眠中のデルタ波が弱まる
レム睡眠を増やすと、ノンレム睡眠中のデルタ波が強まる

このことから、レム睡眠がノンレム睡眠中のデルタ波を増やし、その結果、学習や記憶形成が促されることが分かりました。これまでも、新生児における急速な脳の成長が、レム睡眠の多さと関連付けられていましたが、今回の研究結果はこれを裏付けるものとなりました

私たちを悩ませる疾患のなかには睡眠や脳の発達と密接に結びついたものがあります自閉症スペクトラムはしばしばレム睡眠の減少を伴います。また、アルツハイマー病やうつ病、睡眠時無呼吸症候群ではデルタ波の減少が知られており、レム睡眠の低下の影響が予想されます。今回の研究は、今後、こうした疾患の解明にも役立てられるものとして期待されています。

参考 Mocosuku編集部 2015.10.25

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