耐水素脆性のばね用ステンレス鋼線

日本精線(本社・大阪市中央区、社長・近藤龍夫氏)はこのほど、耐水素脆性ばね用ステンレス鋼線「ハイブレム(HYBREM)」を水素ステーション用部材で初納入したハイブレムは約6年前に開発した環境配慮型のオンリーワン製品高圧水素環境下でSUS304並みの強度を持ち、靱性・ばね疲労特性に優れる。水素ステーションは既に稼働中で、数量的にはわずかだが初めての実用例となる。水素社会の到来でハイブレムに対する注目度は高まりつつある。10年後には年間50~60トンの生産・販売を見込んでいる。

ハイブレムは主な用途がステーション関連(カプラ・ディスペンサー)、燃料電池関連(定置型燃料電池システム・燃料電池自動車・水素高圧ガスボンベ用の各種弁)。既に実機試験を重ねている。価格はSUS304の2・5倍程度を想定している
ハイブレムはオーステナイト系ステンレス鋼に属し、特殊元素を微量添加することで冷間加工後の結晶組織の変化を防ぐ同時に水素環境下での絞り値を安定させた炭素と窒素のバランス最適化により、コットレル雰囲気による転移の固着を制御した
高圧水素環境下での引張試験では、大気中のものと比べ絞り低下率はSUS304が64%、ハイブレムが3%程度と軽微だった水素チャージを行ったばねサンプルの疲労試験(大気中)でも疲労限の低下率はSUS304が26%だったのに対し、ハイブレムは3%で、耐水素脆化特性に優れる。
ステンレス鋼線のトップメーカー、日本精線では環境・省資源・情報化・高齢化をキーワードに、社会に貢献することができるオンリーワン、ナンバーワン材料の開発を進めている
燃料電池自動車をはじめとした水素社会では水素の安定供給が不可欠水素ステーションは商用化の段階に進みつつあるが、そこでは高圧水素ガスの流量調整用ディスペンサーやバルブ弁が装備されている。素材のばね用ステンレス鋼線は高圧水素環境下での高い信頼性が求められる。現状はSUS304が使われているが、使用期間や条件によっては水素脆性が危惧される
「今年に入り水素ステーションの具体的な引き合い案件が複数あり、サンプル提供など対応を進めている。国内外での展示会などでも積極的にPRしている。耐水素脆性が特長のSUS316Lなどより、ハイブレムの性能はさらに一段上だ。主力製品の一つに伸ばしたい」(同社)。

参考 鉄鋼新聞 2015.10.15

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