米国のハイテクすぎる近未来戦の全容

ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、国防副長官と統合参謀本部議長を取材し、米国のハイテクにおける優位を最大限に活かす「第三の相殺戦略」についてのペンタゴンの見解を報告しています。要旨は次の通り。

先進的“超強力兵士”製作に奔走する米国

 ほとんど注目されていないが、米国防総省はロシアや中国を抑止し得る、新奇な武器を追求している。国防総省の当局者は、ロボット兵器、ヒューマン・マシン・チーム、先進的「超強力兵士」を作るための、人工知能や機械学習の最新ツールの利用を公然と語り始めている。当局者たちは、こうしたハイテクシステムがロシア軍や中国軍の急速な発展に対抗する最善策であると言う

ワーク国防副長官とセルヴァ統合参謀本部副議長へのインタビューで、これらの革命的な米兵器システムについて説明を受けた。数か月前までは軍の最高度の秘密研究だった内容である。

ワークは「ハイテクは我々の戦闘ネットワークを強化する。ロシアと中国に十分な不確実性を与え、両国が米軍と戦うことになった場合に、核を使わずに打ち負かすことができるだろう」と言っている

超ハイテク技術が対中露抑止力回復に資する

 国防総省内では、このアプローチは、「第三の相殺戦略」として知られている。それは冷戦中にソ連の軍事的進歩に対抗した二つの相殺戦略第一は戦術核、第二は精密誘導通常兵器)に倣うものである。同省は、第三の相殺戦略は、高性能のロボット兵器が、ロシアと中国の技術発展により損なわれている抑止の回復に資する、としている。

国防総省の2017年度予算には、米海軍への中国の長距離攻撃に対抗する先進的兵器に30億ドル、潜水システムの向上に30億ドル、ヒューマン・マシン・チーム及びドローンの「群れ」による作戦に30億ドル、人工知能を用いるサイバー及び電子システムに17億ドル、ウォーゲームその他の新たなコンセプトに基づく実験に5000万ドルなどが含まれている。オバマ政権は米国の最善の戦略は技術という最大の長所を用いることだと結論付けたようである

ロシアと中国にメッセージを送る意味もある。ワークはロシアを「甦る大国」中国を「長い戦略的チャレンジとなり得る潜在的な技術力を持った台頭国」と表現している

カーター国防長官は、予算教書において、「戦略的戦力室」による、小型カメラとセンサーを用いたスマート兵器、超高速発射体を用いたミサイル防衛システム、高速で抗堪性の高いドローンの群れ、などの研究を紹介した

ワークは、インタビューで、長さ1フィートに満たないマイクロ・ドローンPerdixを見せてくれた。ペンタゴンは、将来はこうしたドローンを組織的に用いる戦闘を考えている

ウクライナとシリアの戦場で、ロシアの能力が明らかになっている。今回のインタビューやその他の公開の発言で、ワークは、自動化された戦闘ネットワーク、先進的センサー、ドローン、対人兵器、電波妨害機器を含む、ロシアの軍事的前進ぶりを挙げている。ワークは「我々の敵は高度なヒューマン・オペレーションを追求しており、それは我々を大いに震えあがらせる」と警告している

出典:David Ignatius,‘The exotic new weapons the Pentagon wants to deter Russia and China’(Washington Post, February 23, 2016)

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第二次大戦後の米国の軍事的優位を支えたのは、米国の技術の優位でした。技術の優位は競争相手国の努力により、次第に弱まります。近年ロシアの軍事技術が著しく高まり、また、中国は20年にわたる軍事予算の大幅な拡大により軍事力を飛躍的に高めました。このように米国の軍事的優位が脅かされるに至ったので、「第三の相殺戦略」でその優位を再確立しようとしているのです

最先端のハイテク技術でも技術優位には限界

 「第三の相殺戦略」の柱はハイテクです。ハイテクは湾岸戦争で明らかなように「第二の相殺戦略」の柱でもありましたが、さらに最先端のハイテクを駆使しようというのが「第三の相殺戦略」です。具体的には、統制された多数のロボットの編隊(陸上及び海上)、小型レールガン(電磁誘導により音速の7倍で弾丸を発射)、より小型の高性能爆弾、などですレールガンは従来の高価な迎撃ミサイルに代わって、敵のミサイルの迎撃にも有効とされます。「第三の相殺戦略」は、中国に関しては、A2/ADに対抗するものとしても考えられているといいます。

「第三の相殺戦略」は中ロに対する米国の軍事的優位を再確立する重要な戦略であり、米国にとってのみならず、日本を含め同盟国の安全保障にとっても肝要です

しかし、「第三の相殺戦略」による米国の軍事的優位がどのくらい続くかという問題があります。中ロはこれに対抗するため必死の努力をするでしょう。技術優位はいずれ弱まるものですが、とりわけ、最近ではサイバー攻撃による技術の窃取があります特に「第三の相殺戦略」の柱である最先端のハイテク技術の一部は軍・民両用のいわゆるデュアル・テクノロジーであると言われます米国は国防省のみならず、民間企業もサイバー攻撃に対する備えを万全にする必要があります

岡崎研究

Wedge2016.04.04

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