競争激化→ロケットビジネス

人工衛星などを搭載して打ち上げるロケットビジネスの競争が激化してきている宇宙航空研究開発機構(JAXA)は将来的に需要増が見込まれる大型静止衛星など打ち上げの受注も視野に入れ、2020年をめどに1号機打ち上げを行う次世代新型ロケット「H3」の開発のゴーサインを出した。だが、ビジネスとして成り立つためにはロケットの価格の引き下げと、諸外国の顧客からの多様な要求に応えられる厳しい対応が求められており、ビジネスに勝ち残るためには航空宇宙技術のさらなるレベルアップが不可欠だ

日本の存在感

 JAXAは国際宇宙ステーション(ISS)に物資を届ける無人補給機「こうのとり」を積んだ大型ロケット「H2B」を8月19日に打ち上げ、予定の軌道に乗せることに成功し、ISSとのドッキングし無事に補給物資を届けられた。

エンジンなどが共通の「H2A」と合わせると、27回連続での成功で成功率は97%となり、米国やロシアのロケット打ち上げの失敗が続く中で、日本の存在感が増しており、ロケット売り込みのチャンスが到来しているこのためJAXAはロケットの組み立てなどを担当しているプライムコントラクターの三菱重工業などと協力して、商業衛星を打ち上げるビジネスを狙いたいとしている

無人補給機は宇宙に滞在している宇宙飛行士に食料や水などを運ぶ役割で、これまで運搬した補給機としては米国のシグナスとドラゴン、ロシアのプログレスなどがあるが、昨年の10月以降打ち上げロケットの失敗が相次いだ。このため、米航空宇宙局(NASA)からISSの飲料水の確保のため、「こうのとり」に水再生装置などを運んでくれるよう緊急の要請があった

この水再生装置のフィルターがISSに届いたことで、ISSは継続した運用を可能とした。奥村理事長は打ち上げ後の記者会見で「外国の物資輸送が必ずしもうまくいかなかった事例があった直後だっただけに、大変大きなプレッシャーの元で仕事をした。そういった中できちっと打ち上げは成功したということは、我々のロケット打ち上げ技術の信頼性を外国から一段と高く評価してもらえるのではないか

将来の宇宙については、例えば火星に行くとか議論が世界でされているが、遠方に行けば行くほど、どこかベースになるところから物を運ぶというプロセスというのは必ず入るんだろうと思う、そういう中で、我々の輸送機あるいはそのベースキャンプとのドッキングの仕方、キャプチャの仕方、そういったものがますますもって有人宇宙探査の世界でその存在感が高くなっていくのではないかと考える」と述べた

打ち上げ数を増やす

 日本の人工衛星の打ち上げロケットの開発は、1975年に打ち上げられた「N-1」から始まったがこの時は国産ロケットの技術レベルは十分ではなく、第2段ロケット以外の部品は米国からの技術を導入して作られた。86年に試験機1号が打ち上げられた「H-1」では約半分の部品が国産となり9機が打ち上げられ、ロケット技術のベースを築き上げた

94年に打ち上げられた「H-1」の後継機となる「H-2」では第1段エンジンや固体ロケットブースタ(SRB)を国産化できたことで、ロケットすべてが国産化された打ち上げ能力も4トンと大幅に向上、大型ロケットを自前で打ち上げられるだけの技術の蓄積ができた

2001年にはこれを改良した「H2A」を打ち上げ、外国の衛星を打ち上げできるまで技術が向上、現在までに28機打ち上げている09年には「H2A」を一回り大きくした「H2B」が登場、今回打ち上げた「H2B」はロケットの先頭部分(フェアリング)の長さが15メートルもあり、より多くの物資を運ぶことができる構造になっている

しかし、ロケットビジネスの将来を展望すると、新たな大型ロケットを開発しなければ、勝ち残れない時期に来ている世界の商業衛星打ち上げ需要のうち、静止トランスファー軌道打ち上げ能力4トン以上の需要は60%あるが、「H2A」ロケットではその需要を十分カバーできない

そのような状況を踏まえ、政府は将来的な宇宙ビジネスへの生き残りをかけて、20年に試験機1号を打ち上げるスケージュールを基に次世代新型ロケット「H3」の開発をスタートさせた

1986年に開発が始まった「H2」ロケットの開発に携わった技術者の多くがシニアになりつつあるため、新世代の技術者にロケット技術を継承する意味でも、このタイミングで新型ロケットの開発に着手しなければならない事情もあった

三菱重工業を主体とした機体メーカー各社はJAXAの意向を受けて、15年度からその「H3」の基本設計に着手、オールジャパンで最新のロケット技術を開発し、日本の航空宇宙技術のレベルアップにも役立てたいとしている「H3」ロケットの概要は、全長63メートルの大型ロケットで、「H-2B」よりさらに大きいサイズになる。メインロケットの外付けする固体ロケットは機種により4本まで付けることができる。6.5トン以上の静止衛星を軌道に乗せることができるなど、多様な衛星需要に応えられるスペックになっている

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世界の静止衛星などの打ち上げ需要を見ると、年間20機程度が見込まれる今後はスカパー放送など衛星を使った通信需要が伸びるアジア諸国の打ち上げが増えるとみられ、日本としてはこれらのアジア諸国の需要を積極的に獲りたいところだ。また、地球温暖化に伴う自然災害の増加で、台風や干ばつなどをリアルタイムで地域ごとに細かく観測できる衛星の需要も高まっている。だが、世界的のロケット市場を見まわすと、強豪ぞろいで日本が安定的に獲得できる保証はどこにもない

JAXAではロケットの生産基盤を維持し、信頼性を確保するため年間で6機以上の大型ロケットを安定的に打ち上げることを目指している。このため、そのうち3機程度は日本の観測衛星など官需で賄い、残りは海外を含む商業市場から受注したいとしている。官需である程度の採算を確保したうえで、海外受注を伸ばしたいという作戦だ

参考 Wed ge  2015.09.04

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