神戸製鋼所→圧縮空気蓄電システム

空気を使って電力を貯蔵する圧縮空気蓄電システム(CAES)の開発に、神戸製鋼所は早稲田大学スマート社会技術融合研究機構、エネルギー総合工学研究所と共同で着手した風量や風向きなどによって発電量が不安定な風力発電の出力変動の抑制や電力需要のピークシフトなどの平滑化・平準化を目指す

◆風任せから計画的に

CAESは余剰電力をためられるので、風力発電を風任せから計画的なものに変えられる」。開発に取り組んできた松隈正樹・神鋼テクノ産機本部開発室理事はCAESのメリットを強調する。

CAESは、揚水発電と同じ力学的エネルギー貯蔵と位置付けられる。蓄電池やリチウムイオン電池といった化学的電池と比べると、電池のような能力劣化による寿命はほぼなく20年以上持つまた燃えないし、危険な化学物質もないため安全な上、有害物質・劇物や希少金属も含まず廃棄性に優れる。ただ充放電効率(60~65%)や設置面積では劣る。

神鋼のCAESは「空圧電池」と名付けて商標登録を取得している。この空圧電池は、風力や太陽光で得られた電力を産業用のエアコンプレッサーで断熱圧縮し、低温圧縮空気と圧縮熱に分離。このうち低温圧縮空気はタンクに貯蔵し、電気がほしいときに空気を取り出して圧縮熱で高温に戻し、エアタービンを回して発電機を稼働させ放電する「圧縮機と発電機が独立しているので充電と放電を同時に行えるのは大きな利点。化学的電池は同時に作動できない」と松隈氏は強調する。

発電量が不安定な風力発電などで要求される平滑化やピークカット機能を満足させるためには、変動発電電力に応じて空圧電池が追随して俊敏に放電発電する機能が必要になるこのため発電用のエアタービンには回転速度を1秒で10%制御できる容積型スクリューエアタービンを使用。発電能力を要求に応じ10~100%で自在に回転数制御が可能だ

スクリューエアタービン発電機は、回転に伴い2本のスクリューのかみ合わせで構成されるV字形の空間が膨張。これによりタンクから圧縮空気が吸引されて大気へ減圧膨張して排出される。スクリューにかかるこの空気の圧力差の力で発電機を回す水力発電で水車を導水管内の水の重さで回転させ発電するのと似た発電原理だ

◆温冷熱活用し効率アップ

空圧電池は圧縮行程で温熱、膨張行程で冷熱が発生するこの温熱・冷熱を活用できればエネルギー効率が上がるこのため大型データセンターなど冷房需要や暖房需要、温水需要にも対応できるまた工場や焼却場などの排熱を膨張過程に取り込めば発電量を増加できる単に充放電効率という見方ではなく、トータルでのエネルギー効率として考えれば、化学的電池より効率が高くなる

また煤煙や二酸化炭素(CO2)などを排出せず、フロンなども使用していない。危険物がない上、環境保護の観点からも設置への反対運動は起きにくい。

 今後は60%超にとどまる充放電効率を高める。また設置場所は機械設備と鋼製タンクで構成されるので比較的自由度が高いが、化学的電池と比較して劣る設置面積は高圧化により縮小を目指す。コストは試験機ベースでは1キロワット時当たり30万円以上だが、将来的には十数万円、1キロワット時当たりでは数万円になる見込み

神鋼は神戸総合技術研究所(神戸市)で小型実証機を作って配線・配管し、制御など見直しながら先行実験を開始。今後は500キロワットを標準ユニットにして静岡県内に1000キロワットクラスの実証機を設置。2016年秋以降に稼働させ、17年度から本格拡販を図る計画だ。(松岡健夫)

SankeiBiz  2016.02.29
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