相次ぐ→薬の包装誤飲事故

高齢者らが薬の錠剤を包装シートごと飲み込んで、のどや食道を傷付ける事故が後を絶たない。製薬各社はシートを小さく切り離せないようにするなど防止策をとっているが、薬を飲む患者自身や家族、医療スタッフなどがハサミで切り分けることで事故が続いている。厚生労働省は製薬業界に改善を求めており、飲み込んでも安全な錠剤包装の開発も進んでいる

◆全身麻酔で摘出

大阪府の50代の女性会社員は2年前、温泉宿でうっかり高血圧薬の包装シートを飲み込んでしまった。薬と包装シートを持った手を間違えたのが原因だ。自分で吐き出せず、大学病院を受診。全身麻酔をして内視鏡と鉗子(かんし)を使って摘出した。包装シートは食道の粘膜に刺さっていたという

欧米など海外では、処方薬は薬瓶が主流。しかし、日本では、薬を保護するため1錠ずつプラスチックにアルミなどを貼り付けた「PTP(Press Through Package)包装シート」に収められているのが一般的だ

そのまま飲み込むと、角の部分がのどや食道、腸などを傷付ける恐れがある。かつては縦横にそれぞれミシン目が入っており、1錠ずつ切り離せる構造だった。だが、錠剤と一緒に誤飲する事故の多発を受け、製薬各社は平成8年、シートを1錠ずつ切り離せないようにする防止策をとった

それでも事故は後を絶たず、国民生活センターは10年と22年に「錠剤の包装シートは切らないで」と注意喚起している

◆死亡例も

埼玉医科大が17年から21年の4年間に消化管の異物の除去を目的に緊急内視鏡処置を行った83件について調査したところ、消化管内を傷付ける可能性がある「鋭的異物」の約4割が薬の包装シートだった。

名古屋市立大学病院総合内科・総合診療科の大原弘隆部長は「今も一定の割合で事故は起きている。正確な統計はないが、600床程度の規模の病院で年に3、4件あるのではないか」とみる。

大原部長が診察した患者の中には、包装シートの角が食道の粘膜に突き刺さり、3分の1ほど埋まっていた人もいた食道は肺や心臓に近く、食道の粘膜の傷が原因で胸部に膿がたまる縦隔炎を発症するリスクもあるという

命の危険もある。80代の男性が包装シートの誤飲が原因で消化管から出血、出血性ショックのため死亡したケースが報告されている

大原部長は「誤飲は、テレビを見ながらなど注意力が散漫になっているときに起こりやすい。日常的に薬を飲む人は誤飲で重大な健康被害となる危険性があることを認識してほしい」と呼び掛けている。

◆新包装登場

厚労省は22年、PTP包装の誤飲事故に対する警告と包装技術の改善要望を業界団体に出した。事故防止に向け、日本製薬団体連合会(東京都中央区)は、誤飲しにくい構造や飲み込んでも体への負担が少ない包装シートに変更できないか検討中だ。

こうした中、包装ごと飲み込んでも体内を傷付けない新包装が開発された

モリモト医薬(大阪市西淀川区)は、軟らかいフィルム製で、誤飲してもそのまま排泄(はいせつ)される新しい包装を考案した枝豆をさやから取り出すように軽く圧力をかけると、シールが剥がれ、錠剤が取り出せるため、高齢者にも使いやすいという

同社の盛本修司社長は「高齢化が進む中、認知症患者も増えており、誤飲の危険性が高まっている事故の防止に役立てば」と話し、量産・普及に向けた準備を進めている

参考 産経新聞 2015.07.06

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