白鷺電気工業(熊本)電力網を支える

インフラは造りっぱなしでは機能しない定期的に点検・補修を施す必要がある九州を文字通り網の目のように覆う送電・配電ネットワークを、メンテナンスの面から支えてきた

電気は電圧が高いほど、効率的に遠くまで運べる発電所では、生まれたばかりの電気を6万~50万ボルトの超高電圧に変換し、特別の送電線を使って送るそして、複数の変電所で徐々に電圧を下げ、家庭に届くころは100~200ボルトになっている

 九州電力管内には、約600カ所の変電所があり、変圧器をはじめ、膨大な機器が作動する

こうした機器では、いつ発生するか分からない故障に備えて、異常を検出する保護リレー盤などの装置が重要となる

巨大な施設の中で、「異常検知機」が、正常に稼働しているかを一つ一つ確認する

 特に、50万ボルトの電気が流れる変電所では、こうした点検作業も命懸けとなる10万ボルトを超えるような高圧の電気は、直接触れなくても、空中放電で感電するほどの“危険物”だ

九電と取引のある電気設備工事企業のうち、50万ボルトもの高圧電気の点検ができるのは、白鷺電気工業を含め、数えるほどだという

また、変電所は都市部に限らない。人里離れた山奥や離島にもある。社員は、こうした場所でも活動する

 来年、創業から70年を迎える

 創業者の沼田宇中(うちゅう)氏は明治44(1911)年、今の熊本県氷川町に生まれた。熊本高等工業学校(熊本大工学部の前身)を卒業後、京都電灯(関西電力の前身)に入社した。ここで変電所工事の設計や施工を身に付けた。

戦後直後、沼田氏は故郷にほど近い熊本・八代で電気機器修理業として独立した36歳の若社長を含め、7人でのスタートだった。社名は、八代城(跡)の別称「白鷺城」にちなんだ

九州配電(九電の前身)と、年間300台の変圧器などの修理契約を結び、着実に実績を重ねた

昭和48年には、九電から、九州全体の発電・変電や送電工事ができる登録業者に熊本県内で初めて認定された

この70年間、創業者から息子の吉輝氏(67)、3代目の幸広氏(39)へと経営をバトンタッチしてきた

平成26年に社長となった幸広氏は、JR東海に9年間勤め、新幹線の運転士にもなった。設備の工事や保守の経験もある。

幸広氏は今、本業以外の「種まき」にも力を入れる。電気設備だけでは、「100年企業」として生き残れないと危機感を持つからだ

 種まきの一つが農業だ熊本空港近くに約3000平方メートルの土地を購入した今年中に農業生産法人を設立し、野菜を栽培する。本社の屋上を活用し、イチゴ栽培も始めている

社長直轄の「イノベーション経営企画室」を昨年秋、発足させた。派遣社員から正社員に登用した女性社員も起用し、30年後を見据えた新事業のアイデアを練る

ただ、高い技術に根差した企業であることは、創業当時から変わりない

「企業は人なり。アットホームな会社で幸福度ナンバーワンの企業でありたいという『宇中イズム』で頑張る将来、人工衛星を打ち上げ、“宇宙”で太陽光発電を行い、地球に供給するような会社になるかもしれませんよ

幸広氏の夢は広がる。 (村上智博)

◆昭和22年、創業。平成27年6月期決算は、売上高25億円。最終利益1億円。従業員は110人。本社は熊本市東区石原1の11の29。熊本県八代市、福岡市中央区、京都市右京区に支社を置く。営業所は熊本県人吉市と水俣市、鹿児島市にある。

産経新聞  2016.03.03
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