疑惑のGDP→どのように報道しているか

2015年8月は国内の株式投資家にとってはまさに冷や水をあびせられる月だったに違いない。何しろ、今年に入ってからこれまで比較的順調に上昇を続け2万円を超えていた日経平均株価が一挙に1万7000円台に突入したのである

 原因は6月以降の連続的な株価対策実施や人民元切り下げにより中国経済に対する不安要素が広がったためで、日本をはじめ世界各国経済や株式市場へのマイナス要因となっているのである。これがいわゆる「チャイナショック」といわれる事象であり、世界中の多くの株式関係者が中国経済の動向に警戒感を示している

しかし、中国の経済指標を見ると少し様子が異なる。国内で生産された付加価値の総額であるGDP(国内総生産)は依然4~6月で前年比7%増と高い成長率を見せているこれに対し世界各国からは疑問の声が挙がっており、その信ぴょう性には疑念が持たれている

■実態経済とのかい離

そもそも中国のGDPの信ぴょう性が怪しまれたのはこれが初めてではない。

現在首相を務める李克強が「中国のGDPは信ぴょう性が低い。景気の実態を見るには電力消費量、銀行融資、鉄道輸送量を見た方がいい」と発言して以来、これら3指標が注目を集めるようになった。このうち電力消費量をみてみると、2014年以降0%付近の成長率を示すなど発表されたGDPとはかい離している。今年に入ってからも、地方政府から報告されるGDPの合計が全体のGDPを9.1%(54兆円)も上回るなど、相変わらず状況の改善には程遠い。

■現地メディアでGDPの信ぴょう性に触れるのはタブー

世界各国でこのような報道が続いているにも関わらず、現地メディアの報道は比較的楽観的なものが多い。例えば、中国の国営放送局である「中央人民广播电台(CHINA NATIONAL RADIO,CNR)」が運営するニュースサイト中广网(中国广播网)では、「今年の中国のGDPは7%成長と年初の想定内であり、この複雑な環境の下では十分な経済発展を遂げているといえる」という報道が見られる

中国のGDPについては経済の堅調さを示しほめたたえる内容が多い。7%という数字の信ぴょう性について疑問を表明するような記事は見当たらない。政府の意向を受けていることはいうまでもなく、中国政府にとっての生命線である国内経済の安定を維持するため、GDPが正しいか否かに触れることは国内報道においてはタブーとなっているのだろう

■今後、不透明感はさらに増す可能性がある

中国では以前から政府発表と実体経済とのかい離が疑われてきたが、ここにきてますますその疑念が強まっている。そしてその不透明感は今後さらに増す可能性がある

 その原因の一つが海外からの投資減少である近年中国の環境汚染や労働環境の悪化から、これまで中国に進出していた製造業の東南アジアへのシフトの傾向が強まっていることは周知の通りだ。加えてここ数カ月で中国政府が行った強引な株式市場への介入の結果、世界中の投資家が中国から資金を引き揚げてしまっているのであるこうした急速な資金の流出は、今後の中国経済の発展に対し深刻な影響を及ぼすだろうそれは海外だけでなく国民からの不信感の高まりにもつながり、やがて政権批判にも発展する可能性がある

今後、中国政府は依然として「高い成長率を示すGDP」と「伸び悩む実体経済」の間にどのようにつじつまを合わせていくのであろうか一歩間違えれば国内の不安定化につながりかねないこの問題にどのように取り組むのか。習近平政権にとって頭の痛い問題となることは間違いなさそうである

参考 (ZUU online 編集部) 2015.09.13

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