理容師のなり手不足→深刻

理容師のなり手不足が深刻になっている。昨年度の全国の国家試験受験者は2486人と、10年間で半数近くまで急減。九州では、宮崎県内で唯一の理容学校が来年3月で廃校し、長崎、大分県も養成施設の「空白地帯」になった。若者を呼び込むにはどうしたらいいか。危機感を強める業界関係者は模索を始めている。

 「地元から理容師を出せなくなるのは残念」。1955年に開校し、約2200人の卒業生を送り出してきた宮崎ヘアスタイリスト学園(宮崎市)の関係者は無念そうに語った。かつては毎年30人以上の新入生がいたが、近年はわずか4人という年も。学生不足から、在校生8人が卒業する来年3月で61年の歴史に幕を下ろす。
大分は昨年3月、長崎は2010年9月に理容学校が閉校鹿児島、佐賀、熊本も1校のみ福岡は4校あるが、いずれも学生不足に悩む
理容師を目指す若者はなぜ減っているのか20年ほど前からメディアを通して「カリスマ美容師人気」が世間に定着し、多くが美容業界に流れた。日本理容美容教育センター(東京)によると、14年度の九州の理容学校入学者は76人。対して美容学校は2092人
福岡県内の理容師などでつくる県理容生活衛生同業組合の小副川浩二理事長は「客も美容室に流れ、理髪店では生活できないと思う若者が増えた。職人かたぎなイメージも敬遠されている」と言う。
だが、カミソリでの顔そりは理容師の専売特許刈り上げや生え際の処理などミリ単位の技術も自信がある。小副川さんは「女性を対象とした顔そりも人気が出てきている。需要はある」と希望をつなぐ

「先進地」ニューヨークへ

 逆境を打開しようと、若手育成に力を入れる理髪店もある。福岡市中央区で「Beat」を営む指方未智男さん(52)は5月、若手理容師2人を伴って約1週間、米ニューヨークへ渡った独立を希望する2人に理容の「先進地」を肌で感じてもらうためだ
現地では驚きの連続だった。「店内にバーカウンターがあったり、スーツの仕立てもできたり。理髪料が数万円と高額な店も多く、バーバー(理髪店)に行くことが客のステータスになっていた
邦人経営者から、若手を住み込み研修で受け入れてもいいとの申し出もあった2人は「理容師の地位が認められ、プロ意識が高い」と刺激を受けた様子だった指方さんは「若い人が理容に夢を見られるよう知恵を絞りたい」と力を込めた

■理容師と美容師の違いは…

 理容師と美容師の違いは何か-理容師法は理容を散髪や顔そりなどを行い容姿を整えることと定義し美容師法は美容をパーマや結髪、化粧で容姿を美しくすることと定めている
1978年に厚生省(当時)が両法に基づき出した通知により、これまで理容師は女性のパーマができず、美容師はパーマをしない男性の散髪が禁じられていただが、実態に即していないとして今年7月、厚生労働省通知でそれぞれ解禁された。「違いは、顔そりができるかどうかだけになった」(福岡県理容生活衛生同業組合)
置かれた環境は対照的だ。厚労省によると、2013年度末の全国の理容師数は23万4044人で、03年度比で1万7937人減。理容施設数も12万8127軒で、同じ10年間で1万2003軒減った。10年度の調査によると、理容施設の経営者の6割が60歳以上と高齢化も進んでいる
一方、美容師数は同じ期間で9万3158人増、美容施設数も2万3294軒増えた。ただ、05年度に年間3万3千人を超えた美容師資格取得者数は、10年度以降、2万人を切っている。関係者は「カリスマブームが冷めつつある上、新規出店ラッシュによる営業競争激化を不安視する若者が増えているのではないか」と分析している

参考 西日本新聞社 2015.10.02

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