爆買い→中国人が飛びつく「神薬」

「熱さまシート」(額冷却シート)、「ナイシトール」(肥満症対策薬)、「サカムケア」(液体絆創膏)――

医薬品や日用品を展開する、小林製薬(本社:大阪府大阪市)は、一度聞いたら忘れられない、ダジャレのような商品名を武器に、今、ニッチ商品の市場を疾走している

「名前には最大の投資をする。いくらCMを流しても、名前を覚えてもらえなかったら、意味がない」。創業家6代目の小林章浩社長は熱を込めてこう語る。経営陣が結集し、月に1回開かれるアイディア会議では、100以上の候補の中から、社長が最終的な決断を下す。新製品発表会の前夜、社長の一声で、改名を命じられた商品もあるという。ここまで商品名にこだわる理由は、そのビジネスモデルにある。キーワードは「小さな池の大きな魚」だ。

ニッチな市場でシェアをもぎ取る

小林章浩社長は「名前には最大の投資をする」と豪語。「アンメルツ」の中国展開にも意欲的だ(1月15日の商品説明会)

小林製薬の主戦場は、規模の小さなニッチ市場にある。同社の看板商品、熱さまシートは、熱が出たら氷枕を使うのが主流だった1994年に発売され、冷却用シートという新市場を創出した。その後、ライオンの「冷えピタ」をはじめ、他社の参入が続くが、2015年に53億円あった市場(富士経済調べ)のうち、5割以上のシェアを維持している。その他でも、傷あと改善薬の「アットノン」がシェア95%、鼻うがい薬の「ハナノア」が同64%など、小規模市場での強さでは、他の追随を許さない

競合他社との開発、価格競争に巻きこまれることが少ないため、収益性は高い。前2015年3月期は、売上高1283億円に対して、営業利益179億円と、14%の売上高営業利益率だ。競合のライオン、エステーが4%未満であることを考えると、頭一つ抜きん出ている。今2016年3月期も、新商品のナイシトールや「さいき」(乾燥肌対策薬)など、ユニークな新製品が牽引し、売上高は4期連続増収の1370億円程度、営業利益は200億円程度に着地すると予想される

小林製薬がニッチ市場に参入した理由が、1956年から本社を置く大阪市道修町にある。ここは、江戸時代から続く「薬の町」。現在でも、第一三共や大日本住友製薬をはじめとした、大小の製薬会社がオフィスを構える。その中で勝ち残るために考え出されたのが、競争の激しい市場を避け、自ら新しい市場を作るという戦略だったのだ

 

1969年には当時まだ珍しかった水洗トイレ用消臭芳香剤「ブルーレット」の発売をもって、日用品市場にも参入。現会長の小林一雅氏が社長に就任した1976年以降は、熱さまシート(1994年)、「ブレスケア」(1997年)など、現在の看板商品が次々と生まれた

中国人が「薬箱にほしい」と熱望

「サカムケア」などは、ドラッグストアの中国人観光客向けコーナーで、いまや定番になった(スギ薬局神田駅東口店)

必需品ではないが、あると便利。そんな同社の製品に惚れたのは、日本人だけではない。2014年10月、中国の大手ポータルサイト『捜狐』に掲載されて以降、大きな話題となったのが、「日本に行ったら買うべき12神薬」の記事だ

そこに、小林製薬のサカムケア、熱さまシート、「アンメルツヨコヨコ」など、5つの商品が紹介された。同時に、中国人観光客が押し寄せる大阪や東京のドラッグストアで、これらの商品が”爆買い”の対象になる。一番人気のサカムケアは、「家庭の薬箱に1つほしい」(中国人消費者)とまで言われる人気ぶりで、2015年4~12月期に前年同期比3倍以上の伸びを示した。さすがに日本語の商品名は読まれないものの、「液体絆創膏」の漢字表記と、ささくれた指が書かれたパッケージが効いたという。同社全体では、同期のインバウンド売上高は、国内事業全体の4%で33億円程度にのぼる。今後は、ここで得た海外顧客情報を、現地展開の足掛かりにする考えだ。

小林章浩社長は「海外売上高を現在の1.5倍の200億円にすることが私の使命。まずは、訪日中国人に人気のアンメルツヨコヨコを、現地で展開したい」と息巻く。ナニワのユニーク企業が世界に羽ばたく日は来るか

東洋経済 オンライン  2016.01.27

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