熊本地震→生乳出荷できず

熊本県で16日未明、最大震度6強の地震が発生し、甚大な被害が広がっている14日夜の震度7の揺れよりも深刻で、農業への打撃も明らかになってきた。JA菊池管内では、激しい揺れで畜舎が倒壊し、多くの牛が死傷。乳業の工場が機能停止し、搾った生乳を出荷できないなどの影響も生じた。金銭的な被害にとどまらず、経営意欲の減退が懸念される事態となっている。

JA管内の大津町。亀裂が走る道路沿いの住宅に、折れた柱や瓦が散らばる。和牛繁殖を営む田上稔さん(69)、さよ子さん(68)夫妻の牛舎があった場所だ。11頭の繁殖牛が中にいたが、全頭が下敷きとなり、1頭は死んだ。

異変に気付いたのは16日午前2時前。激しい縦揺れと大きな鳴き声に、ただごとではない気配を感じた。だが、明かりのない中で揺れが続いたため、牛舎の惨状を目の当たりにしたのは夜が明けてからだった。「かわいそうばってん、自分たちも危なかけん……」。さよ子さんが顔を覆う。

死んだのは8歳の「なつこ」。妊娠しており、じきに子牛が生まれるはずだった。親子を同時に失った落胆は大きい。先月出荷した子牛には100万円ほどの値が付いただけに、経営的にも大きな損失だ。

生き残った10頭は全壊を免れた別の牛舎に移したが、余震が続き不安は絶えない。土砂災害で川が濁り、牛の飲み水が不足しそうだ。「もう、やめんといけん……」と弱音もこぼれる。経営を立て直すのは容易ではない

酪農の被害も大きい熊本県酪連の牛乳工場が止まった影響で、県全域で生乳を出荷できない事態になっている。JA菊池管内でも、酪農部会の156戸が販売できなくなった。15日夕から16日朝にかけて出荷できなかった生乳は240~250トン。出荷できない間も飼料費はかかるため、長期化すれば経営への打撃はさらに大きくなる。出荷正常化の見通しは立っていない

酪農部会長を務める大島洋さん(57)は「乳牛もストレスで乳量が減るなどの影響が出る」と話す。ただ、酪農家にとっても、搾れないのは心情的にも経営的にも負担が大きく、「離農を考える生産者が出る恐れもあり、経営再開資金の支援などが必要だ」と訴える

JAのまとめによると、16日昼現在で判明している管内の牛舎の倒壊件数は、酪農で2件、肉用牛で7件。その他、負傷して廃用にせざるを得ない牛が出たり、停電で搾乳用の機械が故障したりする被害もあった。調査が進むにつれ、被害がさらに拡大する恐れもある。(松本大輔)

日本農業新聞2016.04.17

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