海に浮かぶ風車→近く発電

福島県楢葉町の沖合約20キロで進められている浮体式洋上風力発電の実証研究が、新たな段階に入った2基目の巨大風車「ふくしま新風」が係留作業を終え、世界でも例のない複数の「海に浮かぶ風車」での発電が近く始まる。研究の成功は再生可能エネルギー普及への追い風となるか。【垂水友里香】

東京電力福島第1原発事故を受けた福島県の復興ビジョンは、2040年をめどに県内の全電源を再生可能エネルギーで賄うと掲げ、経済産業省は丸紅や三菱重工業、清水建設など10社と東京大の産学連合「福島洋上風力コンソーシアム」に実証研究を委託した。総事業費は約500億円。

水深約120メートルの海域に設置した1基目の風車(最大出力2000キロワット)は13年11月から運転を開始その1・8キロ南に8月に係留された2基目は、ブレード(羽根)1枚の長さが約80メートルで、最大出力は浮体式の設備として世界最大級の7000キロワット。さらに3基目5000キロワット)を今年度中に設置する。海底ケーブルを通じて送電し、3基で計1万2000世帯に電力を供給できる能力がある

これまでの洋上風力発電は海底に設備を固定する「着床式」だったが、福島沖では浮かべた設備に風車を取り付ける浮体式を採用したのが特徴陸地や沿岸部よりも強い風を利用でき、騒音や景観の問題も起きにくい。丸紅の福田知史・国内電力プロジェクト部長は「深い海が広がる日本では利点が大きい」と話す。

課題は、着床式の数割増しともいわれるコストだ揺れを抑えるために巨大な浮体が必要なためで、福島沖の研究とは別に、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がコンパクトで低コストな浮体の研究に取り組んでいる

環境省も13年から長崎県五島市の椛島(かばしま)沖で浮体式(2000キロワット)の実証研究をしており、海外ではノルウェーとポルトガルが研究を続けているが、いずれも風車は1基で、商用化に不可欠とされる複数基での発電は例がない。日本は18年をめどに実用化を目指す。浮体式に関する特許を取得し、設備の安全性などの指針となる国際標準規格も作成して世界市場をリードする戦略を描く

日本風力発電協会によると、ノルウェーのエネルギー企業がスコットランド沖に浮体式の風車5基(計3万キロワット)を建設する計画を進め、米国もオレゴン州沖で5基(計3万キロワット)設置する計画を発表している。フランスにも建設計画がある。いずれも16~17年ごろに完工予定だ。同協会の上田悦紀事務局部長は「欧米諸国は日本が成功するかもしれないと脅威を感じ、自国のプロジェクトに予算をつけ始めた」と解説する

風力発電の累積導入量は世界19位の日本。「先行設置した風車は順調に発電している。このまま浮体式の分野で世界をリードしていきたい」。研究の技術責任者を務める東京大大学院の石原孟(たけし)教授(風工学)は自信を示している。

参考 毎日新聞 2015.10.03

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