氷温熟成のお味とは?

寒仕込み…。冬の寒さを活用した日本が誇る食品加工技術だが、これを人工的な温度管理で再現する「氷温熟成」をご存じ? 凍る直前の「氷温域」で寝かせることで「うまみ」を引き出すといい、商品開発に頭をひねる食品メーカーの関心を集める。健康ブームで人気の食肉や発酵食品とも好相性で「氷温熟成」ブランドの新商品が続々登場。季節を問わず安定生産でき、手頃な価格で本格的な味わいが楽しめそうだ。

(重松明子、写真も)

岩手県産豚ロース通常の精肉と氷温熟成肉を、塩のみのステーキで食べ比べた。普通の肉も普通においしいが、氷温で寝かせた肉は甘味としっとり感が際立つ。「余計な調味料はいりませんね

「そうでしょう!」

東京都江東区の食肉卸「野村商店」加藤正俊社長(52)が声を弾ませた。「普通の豚肉が銘柄豚をも上回る味になり、われわれも氷温熟成のインパクトに驚きました

8月に氷温熟成を証明する「氷温食品」認定を受け、9月から出荷を始めたばかり。牛肉も認定済みだが、成果の顕著な豚肉に社員30人の全社を上げて注力している。

製造担当の小濱弘さん(32)は「マイナス1度で15日間熟成すると、うまみ成分のグルタミン酸が2倍、アラニンとグリシンも1・5倍に増加する日数をかけるほどうまみは強まるが菌も増えるため、安全性とのバランスで熟成期間を決めました」。

「卸先は1カ月間でイタリアンや肉バル、結婚式場など都内と近郊約50軒に広がっている」と営業担当の遠藤辰也さん(38)も手応えを語る。社内公募でブランド名を「氷温熟成 豚姫(ぶたひめ)」に決定。現在月間300キロを生産しているが、需要が高まる年末に向けて1トンまで増産する計画だ。墨田区の直営焼肉店「焼肉ニクマサ」でも150グラム1296円で提供を始めた。

氷温熟成加工した「氷温食品」を審査・認定する公益社団法人「氷温協会」の深堀大賢事務局長(49)によると、「天然の寒仕込みの再現と考えてもらっていい」。

食材は凍結点近くに気温が下がると不凍物質のアミノ酸や糖類を生成する防御反応が働く。この摂理を応用。併設研究所で「氷温域」での保存熟成法の開発が行われ、すでに累計687品目が「氷温食品」に認定されている。

「添加物を使わずにうまみを引き出せるため、こだわりや安全志向の食品メーカーからの相談が多い。30年来の活動が実り、近年『氷温熟成』がブランドとして認知されてきた」と深堀さん。キーコーヒー「氷温熟成珈琲」、ヤマキ「氷温熟成法かつお節」など大手の食品包装にも印字され、その名が知られてきた

ひかり味噌(みそ)は9月、業界初の氷温熟成みそ「華雪(はなゆき)」を発売した。「本格志向の消費に対応。製法に安心を感じていただける」と広報。甘くまろやかな味わいでツンとした塩角がとれ、そのまま野菜スティックで食べてもおいしい

同社のみその小売り価格は100グラムあたり、通常みそが30~120円、寒仕込みが240~340円に対して、氷温熟成は133円。自然まかせで品質管理が難しい寒仕込みよりも、価格的に優位だ

2年間の試行錯誤の末に商品化した自信作。21日に鳥取県米子市で開かれる「第31回氷温研究全国大会」で、同社の守谷光司営業本部長(47)が「開発経緯と全国販売への挑戦」を発表する。

和食で世界的に注目される日本独特の味覚「UMAMI」。酷寒をを逆手にとった先人の知恵に、古きを訪ねて新しきを知る。まさに「おいしい」技が生まれている

参考 産経新聞 2015.10.11

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