次世代発電[核融合炉」→日仏で本格化

原子核同士を融合させて巨大なエネルギーを取り出す核融合炉の実験施設の建設が、日本とフランスで本格化している

核融合炉は輝く太陽と同じ原理のため「地上の太陽」とも呼ばれ、環境にやさしく安全な次世代発電と期待されており、2040年代に原型炉の運転開始を目指して技術の検証を行う。(伊藤壽一郎)

日本原子力研究開発機構は今年5月、茨城県那珂市の那珂核融合研究所で、欧州連合(EU)と共同で建設している核融合実験装置「JT-60SA」の心臓部の組み立てを開始した

直径約10メートル、高さ6・6メートルの円筒形で内部にドーナツ状の空間があり、真空容器と呼ばれる。来年夏に組み立てを終了し、2018年に装置全体が完成翌年から容器に燃料を入れ、運転を始める

核融合炉の燃料は本来、水素の同位体の重水素と三重水素を使うこれらを1億度以上に加熱すると、原子核と電子がバラバラに飛び回る「プラズマ」という状態になる

プラズマは容器の外側に並べた超電導磁石の強い磁力線の殻で閉じ込め密度を高めると、超高温で運動が活発になった重水素と三重水素の原子核が毎秒1千キロの超高速で衝突して融合。大きなエネルギーを持つ中性子と安定した物質のヘリウムに変化する

プラズマの状態確認が主目的のJT-60SAは燃料に重水素だけを使うが、重水素同士の衝突で三重水素が少量発生するため、核融合反応も確認できる。同研究所の栗原研一副所長は「実用化に向けては、超高温で高密度のプラズマを安定的に長時間維持することが重要。その制御技術を確立していく」と話す。

JT-60SAの技術を踏まえ、エネルギーの発生実験を行うのが国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」だ。

EUと日本のほか米国、ロシア、韓国、中国、インドの国際協力により、フランス南部のカダラッシュで建設が進んでいる

07年に着工後、本体建屋などの基礎部分の工事はほぼ終わり、現在は主要部品などを製作する段階に入った。20年に運転を始める

プラズマを閉じ込めた真空容器のリチウム製の内壁構造材に、核融合で発生した中性子が衝突。リチウムはヘリウムと三重水素に分裂しながら熱エネルギーを放出する仕組みだ

連続運転の場合は外部から投入したエネルギーの5倍、短時間の運転では10倍以上のエネルギーを発生させることを目標に掲げている

最終段階の発電は原型炉で実証する。熱エネルギーを水やガスなどの冷却材で外部に運び、蒸気を発生させてタービンを動かし、電気を起こす。ITERの実験運転と並行して設計・建設に着手し、早ければ40年代半ばの運転開始を目指す計画だ

核融合発電は石油などを燃やす火力発電と違い、地球温暖化をもたらす二酸化炭素が発生しない燃料供給を止めれば停止するため原理的に暴走せず、原子力発電で問題になる高レベル放射性廃棄物も生じないなど利点が多い

燃料1グラムで石油8トン分に相当するエネルギーを生み出せる

燃料のうち重水素は海水1トンに33グラム含まれ、三重水素は海水1トンに0・2グラム含まれるリチウムから容易に作れるため、ほぼ無尽蔵三重水素は発電時にも回収する

核融合で生じた中性子を浴びた金属や三重水素は放射能を持つが微弱なため安全に管理することが可能。このため政府は今年4月に閣議決定したエネルギー基本計画で、核融合の研究開発推進を改めて盛り込んだ

ただ、課題は技術的な難しさに加え、高コストが指摘されている。発電換算で出力が17万キロワットのITERの総事業費は約2兆円とされるが、通常の100万キロワット級の原発の建設費は3千億~4千億円。環境負荷の低さや安全性を差し引いても、あまりに高い

栗原副所長は「最先端技術の塊であるITERは、全ての部品や機器を新たに作るため高額になる」と説明。

実用段階では100万キロワット級を5千億円程度で作れるとの試算があり、「最終的には発電コストも1キロワット時当たり約10円と既存の原発と同レベルに近づくだろう」と話している

参考 産経新聞 2014.12.04

【関連する記事】