来るか水素社会→普及拡大へ基金400億

 地球上に無尽蔵にある水素をエネルギー源とし、二酸化炭素を排出しない燃料電池車(FCV)に国や全国の自治体が熱い視線を注いでいる東北の水素社会実現の先駆者を目指す宮城県は4月に官民組織を設立したばかりだが、水素を供給するステーション設置に国が補助を出す4大都市圏では、既に多くの自治体が普及拡大に取り組む。先進地の東京と福岡を訪ね、水素社会実現の可能性を探った。(報道部・丹野綾子)

 <遠い採算ライン>

  東京タワーの足元に4月、水素社会を一足早く体感できる情報発信拠点が登場した

  産業ガス大手の岩谷産業が東京都港区の芝公園に開設した商用水素ステーション。トヨタ自動車が昨年末に発売したFCV「MIRAI(ミライ)」のショールームを併設し、大きな話題となった。

  6月上旬、ミライに試乗した男性は「音が静か。加速もいい」と絶賛。走行後に車体後部からガスではなく水が排出されると、目を見張った。

  ステーションでは千葉県の水素製造プラントから運んだ液化水素を気化し、FCVに補給する1日の利用は平均5台という。

  「鶏が先か、卵が先か」と例えられるように、FCVの普及にはステーション数が増えることが不可欠設置費用は1基当たり4億~5億円とされ、1億円程度とされる普通のガソリンスタンドを大きく上回る

  国は2015年度中に全国100カ所への整備を目標として掲げ、東京など4大都市圏を中心にステーション設置費用の一部を補助している。

  それでも、FCVの台数が限られる現状ではハードルは高い。15年度、全国20カ所の設置を目指す岩谷産業は「今は水素社会実現に向けた投資段階」と採算ラインには程遠いことを暗に示す

 <官民会議を設置>

  事業者の先行整備を誘致したい自治体は、独自の上乗せ補助を打ち出す東京都は20年の東京五輪を好機にすべく、14年に官民会議を設置。五輪までの目標をFCV6000台、ステーション35カ所とした

 豊かな財政力を武器にFCV購入、ステーション設置補助のための基金400億円を積み立てた。水素社会への理解を促すシンポジウムなども開催。担当者は「五輪を契機に集中的に水素エネルギーを普及させ、世界一環境負荷の少ない都市を目指す」と意気込む

  「水素ブーム」の様相だが、各自治体は、FCVの量産体制が整い一般に広まるのは五輪前後とみる

  宮城県では簡易なスマートステーションは15年度内の設置が決まったが、商用ステーションは国の補助など条件が整わず、名乗りを上げた事業者はまだない。

  国に補助対象の拡大などを要望する県は「他自治体に劣らない独自補助」(再生可能エネルギー室)も検討する。担当者は「成果が見えるのは先だが普及してからでは遅すぎるスピード感を持って整備に取り組む」と長期戦を見据える。

 <燃料電池車>燃料タンクに詰めた水素と空気中の酸素を反応させ、発生した電気でモーターを動かし走る。地球温暖化の原因の二酸化炭素を出さないため「究極のエコカー」と呼ばれるミライなら3分間で満タンにでき、1回の補給で650キロ走る水素の価格はハイブリッド車の燃料代並みミライは723万6000円で、国が200万円を補助する。現時点では量産できず、普及は「当面先」とされる

参考 河北新聞 2015.06.28

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