朝鮮労働党39号室→照準は絞られた

5回目の国連安保理制裁は本当に北朝鮮の金正恩体制を締め上げるのか? 過去4度の制裁は事実上、お題目に終わっていただけにその実効性に関心が高まる今回の特徴は、国連プラス各国の独自制裁で相乗効果を狙い、履行状況のチェックも強化されたことだ。だが、「抜け穴はいくらでも作れる」(北朝鮮関係者)と早くもイタチごっこが懸念されているまた金正恩氏の猛反発は必至で、5回目の核実験強行の可能性も取りざたされている。(久保田るり子)

■「39号室」を締め上げろ!

 制裁は、金正恩氏の統治資金そのものに照準が絞られている具体的には金正恩体制の外貨稼ぎの総元締め「朝鮮労働党39号室」である

39号室は、北朝鮮の鉄鉱石や金など鉱山をはじめ、100社以上の貿易会社や銀行など、資源や機関を網羅して傘下に収める金正恩統治の資金集めの司令塔だ鉱物資源の輸出禁止、貨物検査、金融制裁など制裁のいずれもが39号室に関わる内容だ

39号室は海外にも拠点を持っている合法的な貿易のほか麻薬や密輸、武器輸出など非合法活動も行っているのだ。また今回、韓国が操業中断した開城工業団地の労働者賃金(年間約1億ドル)も39号室が資金管理してきた

今回の国連決議は39号室自体を制裁団体に指定した。そのうえで、39号室の管理する鉱物資源の輸出を禁輸・制限し、39号室傘下の銀行に金融制裁をかけ、国連加盟国に北朝鮮を出入りする貨物の検査を義務付けた。つまり統治資金全体に網をかけて規制し圧力を強めたわけだ。

狙いは明白で金正恩体制の統治そのものを締め上げて核ミサイル戦略が“亡国”につながることを突きつけた格好だ。だが、北朝鮮専門家は「今回もシリ抜けになるのでは」と効果が疑問視している。

■中露が緩めれば“だだ漏れ”にならないか?

制裁には、中国の要請で鉱物輸出禁止に「生計目的」や「人道目的」の例外条項が認められたこれにより主力資源の石炭、鉄、鉄鉱石輸出に許容余地が設けられた。これらの鉱物輸出は中国向けであるため、「やはり抜け道が用意されていた」との評価なのだ北朝鮮貿易の約9割が対中貿易に占める鉱物輸出は約4割だが、鉱物に代わる物品に変えることも可能。現在、中国には約2万人の北朝鮮労働者が出稼ぎ労働者として“輸出”されているが、その数を増やせば稼ぎを増やすことも可能というわけだ

北朝鮮の違法取引を監視するため、国連加盟国には北朝鮮に出入りする貨物について各国が独自で空港、あるいは港で検査を義務付ける初の条項が盛り込まれた。だが、この効果も疑問視されている。検査が各国の主権事項であり、違反していても罰則はない。また制裁には禁止品目を積載したと思われる北朝鮮航空機や船舶の寄港、離着陸禁止条項もあるが、寄港地などの多くは中国、ロシアであるため実効性が疑わしい

今回の目玉は鉱物資源の禁輸と航空機やロケットのジェット燃料禁輸である。前者が統治資金の締め上げ、後者が軍への打撃という“急所”を狙う。ただ、日本政府筋はこう嘆息する。「すぐにひれ伏すような相手ではない。むしろ(36年ぶりに開かれる)5月の朝鮮労働党大会までいろいろなことが起きることを覚悟しておかないとならない」

■「第1攻撃目標は韓国大統領府、第2攻撃目標はアジア太平洋地域の米軍基地」

北朝鮮は2月末の朝鮮中央通信の論評で安保理決議に反発、「対応措置を取らざるを得ない」と威嚇。朝鮮人民軍最高司令部は重大声明で「青瓦台(韓国大統領府)を第1次攻撃対象、アジア太平洋地域の米軍基地と米本土を第2次攻撃対象」として「先制的な作戦遂行に入る」などと緊張を高めている。今月7日から米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」が始まるだけに韓国では特に警戒感が高まっている。

北朝鮮の挑発行為で警戒されているのは(1)韓国に対するサイバー攻撃(2)海上の軍事境界線「北方限界線」(NLL)や南北軍事境界線に接する非武装地帯(DMZ)での局地衝突(3)潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射や中長距離弾道ミサイル発射(4)第5回核実験-などだ。なかでも日韓関係者が懸念しているのは再度の核実験だ

北朝鮮の核戦略はあと2回の実験で技術的に完成するという北朝鮮情報がある。今年1月の4回目実験の際も、近くもう1回、実験の可能性があるとの情報があったようだ」(関係筋)

米韓両国は北朝鮮が挑発を仕掛けてきた場合、「厳しく報復する」としており、7日以降の北朝鮮の動向から目が離せない状況が続きそうだ

産経新聞  2016.03.05
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