春から格安SIMにこぞって移行する

専門家が「2016年のデジタル製品トレンド」を予測する、日経トレンディネットの1月特集。スマホに詳しいケータイジャーナリストの石野純也氏は、今年2016年のスマホをどう予測するのか?

【詳細画像または表】

石野純也氏の予測は……
【1】高性能スマホが売れなくなる
【2】3万~4万円スマホが主流に
【3】iPhone次期モデルは苦戦するかも
【4】iPhone 6sユーザーの格安SIMへの移行が進む

2016年は、スマホの多様化が進む1年になりそうだきっかけは、安倍晋三首相の鶴の一声で始まった、料金値下げのタスクフォースであるそこでは「料金の安い1GBプランの新設」や「過熱しすぎた販売奨励金の是正」などが議論されている。本稿執筆時点ではまだガイドラインが出ていないものの、おおむね、上記のような方向で決着しそうだ。

●【予測1】スマホの価格が上昇。高性能モデルが売れなくなる

今後、スマホそのものには、どのようなことが起こるのだろうか。

現在、大手キャリアが販売する端末は、ほぼすべての端末に割引が設定されている。NTTドコモでいえば「月々サポート」、auでいえば「毎月割」、ソフトバンクでいえば「月月割」がそれにあたる。本体価格からこの割引をすべて適用したと仮定した金額が、いわゆる「実質価格」となるこの割引の原資は、ほかでもない、ユーザーの通信料だ

 仮に、料金の安い1GBプランが創設されれば、既存ユーザーの通信料は安くなる。だがそれにより端末割引の原資が減り、今より割引はしづらくなる。また、販売奨励金に一定の歯止めがかかり、「実質0円」のような売り方もできなくなる可能性も濃厚だ

そのため、一時的にはスマホの実質価格は今より上がっていくものと思われる発売されたばかりの本来高価なiPhoneやAndroidのハイエンドモデルには、それなりの値段がつけられることになりそうだ

性能が高いハイエンドモデルの本来の価格は、安いものでも7万円、高いものだと10万円を超える。販売奨励金にどのような制限がつくのかは現時点では分からないが、奨励金の金額に上限が設けられれば、元々高い端末は高く売られるようになる。結果として、今より高性能モデルが売れにくくなることは、間違いないだろう

【予測2】「ミドルレンジ」が16年のキーワード

 とはいえ、大手のキャリア(通信事業者)は端末の販売価格を売り上げに計上しているため、単純に販売数が減るだけだと、大幅な減収につながりかねない。そこでキャリアや端末メーカーは何らかの対策を打ってくると考えられる。考えられるのが、より低価格で性能を抑えた「ミッドレンジ端末」の拡大だ

ミッドレンジ端末は、格安スマホや格安SIMを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)で販売されるスマホの主流になりつつあるハイエンドより性能を抑え、3万~4万円程度で販売されるのが一般的だ

スペックとしては、処理能力が高く低消費電力のチップセットSnapdragonの400番台か600番台クラスを搭載している代表的な端末として、エイスーステック・コンピューターの「ZenFone 5」やファーウェイの「P8lite」などを挙げることができる。こうしたモデルの比率が、大手キャリアでも増えていくだろう。

既に、その動きを先取りするように、大手キャリアは各社ともミッドレンジ端末のラインアップを増やしているドコモは2015年冬~2016年春商戦で、富士通の「arrows Fit」を発売。機種変更価格を他のハイエンドモデルより数万円安くするなど戦略的に抑え、フィーチャーフォン(ガラケー)からの移行を促す端末と位置づけている。2015年夏モデルでもシャープの「AQUOS EVER」を用意するなど、ミッドレンジ端末をテスト的に販売している様子がうかがえる。

ソフトバンクも、子会社であるワイモバイルで販売している端末は、販売奨励金があまり出せないことから、ミッドレンジ端末が多い。

【予測3】廉価版が出なければ、iPhoneは苦戦する

 予測の確度は少々低くなるが、こうしたミッドレンジ端末重視の流れに乗って、アップルですらミッドレンジ版のiPhoneを出してくる可能性はある

 2013年、iPhone 5sと同時に発売された廉価版iPhone「iPhone 5c」は、スペックが約1年前に発売されたiPhone 5と同等で、結果は鳴かず飛ばずだった。スペックが劣るぶん価格が安くなっていればよかったのだが、日本では割引合戦の結果、iPhone 5sと大きな価格差はなかった。iPhone 5cは割引合戦が過熱していない他の国でも売れなかった事例があるため価格差だけがすべてとは言わないが、日本での販売不振の一因だったことは確かだ。

 世界的なスマホ販売を見ると、iPhoneはAndroidに販売シェアで押されている。販売数を稼ぐためには低価格のミッドレンジ端末を売るのが主流だが、iPhoneはすべてハイエンドモデルで高価な価格帯に位置するからだ。ハイエンドモデル同士の戦いではAndroidより強いのも事実。だが、スマホは平均的に性能が底上げされており、もはやミッドレンジ端末でも普段使いには十分になりつつある。この現状にきちんと対応していかなければ、今後、シェアはますます引き離されてしまう可能性がある。

 海外では「廉価版の『iPhone 6c』が16年に出る」というウワサが飛び交っているが、筆者はこのウワサは実現する可能性があると考えている。上記のように、日本市場もミッドレンジ端末を受け入れる体制に変わりつつあるため、価格によってはiPhone 5cの失敗を繰り返すことにはならないはずだ。逆に言えば、もし「廉価版iPhone」が出ないとすれば、次期iPhoneは日本で苦戦を強いられるかもしれない

【予測4】3月以降、格安SIMへ移行する人が増える

 スマホのミッドレンジ端末が増え、端末の割引が抑えられるようになると、大手キャリアと、格安スマホ・格安SIMを提供する通信料の安いMVNOの競争は、よりし烈になるだろう

 現状、番号ポータビリティを使って他の大手キャリアに移ろうとすると、移行先のキャリアから数万円クラスの大幅な割引が得られる。そのため、ある大手キャリアからMVNOに移る場合と、他の大手キャリアに移る場合とでは、端末代金と通信料金を合わせたトータルコストは、あまり変わらなくなってしまうことがある。どうせキャリアを移るなら、MVNOではなく端末をほぼタダでもらえる大手キャリアに移ってしまおうというように、流出の歯止めがきいていた

 だが、総務省の指導によって端末への割引が少なくなれば、端末のスペックや価格は大手キャリアもMVNOも同じようになる同じような端末なら、より通信料が安くて、料金プランがシンプルなMVNOの格安SIM・格安スマホのほうがいいと考える人も増えるはずだ

 MVNOは大手キャリアに比べればサポートが手薄だが、そのぶん通信料は安い逆に大手キャリアは、通信料が高いぶん、サポートがしっかりしている。現状では、大手キャリアは端末を大幅に割引しているため、この料金差が見えづらくなっている部分がある。だが、端末への割引が制限されれば、通信料に対する本質がむき出しになり、大手キャリアとMVNOとの料金競争は激化するだろう

また、2015年は各キャリアに対して、スマホを購入した際にそのキャリアのSIMしか使えないという「SIMロック」の解除が義務づけられた。このSIMロック解除は、6カ月間はロックを外せないという猶予期間が設けられている

2015年9月に発売されたiPhone 6s、iPhone 6s Plusは、一部例外を除けば、ちょうど2016年3月以降にSIMロックが解除できる。つまり、日本で一番売れている端末が、3月から続々とSIMロック解除可能になり、格安SIMに差し替えて使えるようになるのだ

iPhoneなら、各通信事業者の周波数に合致しているため、SIMロックを解除して格安SIMを入れても非常に使いやすい。このタイミングに合わせ、格安SIMを展開するMVNO各社がキャンペーンを展開することも考えられる。例えばだが、2年契約の解除料を負担するなどすれば、そのMVNOに移るユーザーは多くなりそうだ。 石野純也

参考 日経トレンディネット 2016.01.04

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