早く死んでくれたら→貧困から逃げれない

■アラフォーの“傷跡”。ずっと誰かに言いたかった

「これまで誰にも言えずに、苦しんできたこと」をテーマに、アラフォー女性が背負っている様々な事情や悩みを聞いてきました。

両親が交通事故を起こしてから、人生が変わってしまった。掛け持ちする2つのパートと母の介護に明け暮れ、カオリさん(38歳=仮名)の日々はまったく先が見えない。

今年は「貧困」が、ひとつのキーワードになるかもしれないシングルマザーや高齢者の貧困について、私たちは毎日のように目にしている

独身女性の貧困も、見逃されがちなのだが、大きな問題である

「女はいいよ、結婚すればなんとかなる」

男性や、当の女性たちでさえそう思っているのだが、実際はどうにもならないのが現状。結婚したって相手に安定した収入があるとは限らない。相手の会社が倒産することもあり得る。不仲になって離婚することもある

誰かに頼って生きていこうとするのは、自分ひとりでがんばって生きていくよりリスクが高いのではないだろうか

そしてもうひとつ。今のこの国では、一度「正社員」の道をはずれると、安定収入は得にくくなる。自分のせいでなくても、道をはずれざるを得ない人もいる

そんな社会の荒波の中で、つつましく生きているカオリさん。一度は大手企業の正社員だったが、両親が交通事故を起こしてからは、「地べたを這いずり回っているような生活」だそうだ

■夏休みはどこにも行かない

――カオリさんは大学を出て、いい会社に就職したそうですね。

カオリ:ええ。一部上場の大手企業です。社風が自分に合ったのか、仕事も楽しかったんです

――そこを辞めたのはなぜですか?

カオリ:仕事を始めて6年目、28歳のときに両親が交通事故を起こしてふたりとも入院しまして。父が運転を過って、近所の建物に激突。他にけが人はいなかったんですが、父と助手席の母はしばらく意識不明ふたりとも、半年ほどで退院できたものの、介助がないと生活できなくなってしまって

当時、父がやっていた小さな会社も結局、倒産。もう、どうにもならない状況で、私が会社を辞めてふたりを家で看るしかなかったんです

――収入的には大丈夫だったんですか?

カオリ:一軒家を売って、社員の方の最後の給料と退職金に充てました生命保険から若干、保険金が下りましたが、それは両親の入院費に消えた。あとは貯金を取り崩して、細々と生活するしかありませんでした

――大変でしたね。

カオリ:毎日、両親の介護をして1日が終わっていく。私は20代なのに遊びに行くこともなく、恋人もなく、絶望的な日々でしたいや、恋人はいたんですけど、そんな状況だから、当然のように逃げていきましたね。立場が逆なら、私もそうしますよ。支えきれないもの。

――その後、どうなったんですか。

カオリ:2年後に父が亡くなり、今は公営住宅で母とふたり暮らしです収入は母の国民年金と私のパート代だけ。母も介助が必要なんですが、相当わがままになっているのか、若干、認知症が入ってきているのか、他人をすごく嫌がるのでヘルパーさんにも頼めない。

――カオリさんは、どういう仕事をしているんですか?

カオリ:今は近所の弁当屋さんとファミレス、ふたつをかけもちです。午前中は弁当屋、午後はファミレス。それでも15万にもなりません。家賃と光熱費を払ったら、切りつめてなんとか食べていける程度

夜は母にごはんを食べさせて、嫌がるのをなんとかお風呂にいれて寝かしつけていつまでこんな生活が続くんだろうと思うと、本当に体だけじゃなくて、気持ちが疲れてしまって

――ケアマネージャーさんなどに相談はしました?

カオリ:しました。本当は母にどこか施設に入ってもらいたいけど、そのお金もないんですよ。特別養護老人ホームは3年待ちだそうで、一応、予約は入れてあります

――カオリさんはどうやって息抜きしてるんですか。

カオリ:最近は、母が嫌がっても、ヘルパーさんに来てもらうことにしているんです。とりあえず看ててくれる人がいるだけで、気持ちがラクになるから。それで、10年ぶりに友だちに会いました。お金がないからと言って、場所は安い居酒屋にしてもらって。情けないけど、友だちに会えただけで嬉しかった

■ときどき、すべてから逃げ出したくなる

――先が見えないのがつらいですよね。

カオリ:ええ。すべて捨てて逃げ出したくなることもあります。去年だったかなあ、一度、新幹線に乗ってしまったことがあるんです。東京から静岡まで行って1泊して、母をひとりきりにして……。

だけどやっぱり気になって、すべてを捨てることはできなかった。帰ってきたら、家の中はめちゃくちゃ。母が手当たり次第に物を投げていて

――お母さんは、話ができない?

カオリ:事故で脳をやられたみたいで、こっちが言っていることはわかるんですが、自分が言いたいことがうまく整理できないみたいちゃんとリハビリすればよかったけど、父とふたりだったので、私もなかなかそこまで手が回らなくて。支えれば歩けるんですが、私を頼るから、なかなかひとりで歩けるようにならない

――日々、何を考えて生活していますか?

カオリ:日常生活を送るだけ手一杯。体が重くてもだるくても、仕事に行かなければ食べられない。頼る人もいないし、息抜きできるほどのお金もない

自分が辞めたくて仕事を辞めたわけじゃないけど、もしこの先、母が死んでひとりになっても、おそらく正社員の道なんてないわけですよ。今度は私が生活保護を受けなくてはいけない。お先、真っ暗です

――理不尽な人生だと思ったりします?

カオリ:思いますよ。結婚はおろか、恋愛すらできないんですから。私はもともと母とはあまり折り合いがよくなかった。それなのに、こんな人生を送るはめになるなんて

ーーそれでも、なにか先に夢は抱けませんか。

カオリ:先に希望が見えたら、もう少し頑張れるような気もしますけどね、具体的に何がしたいとか思わない。今は、本音を言うと、母に早く死んでほしいと思う。そして、そう思うそばから、私は人間として終わってるとも思います……

*****

人間、どこでどうなるかわからない。ここでカオリさんが倒れたら、母娘共倒れである。大学を出て、意気揚々と社会人になり、生き生きと働いていた10年前の自分を、カオリさんは「もう忘れた。思い出したくもない」と吐き捨てるように言った。

励ます言葉も、慰める言葉もない

参考 ネタりか 2015.09.20

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