日本最大級のダムや全面稼働

中部電力で最大の水力発電所(揚水式の水力を除く)が3月24日に営業運転に入った岐阜県の西部を流れる揖斐川(いびがわ)の上流に建設した「徳山水力発電所」である(図1)。2基の発電機のうち2号機が2014年5月に運転を開始してから、2年近くかかって1号機が稼働した。

tokuyama1_sj.jpg図1 「徳山水力発電所」の位置。出典:中部電力

建設場所は日本で最大級の規模を誇る「徳山ダム」の直下にある。徳山ダムは2008年に運用を開始した治水用のダムで、総貯水容量は日本で最大の6億6000万立方メートルにのぼる(図2)。堤の高さも161メートルに達する

tokuyama5_sj.jpg図2 「徳山ダム」の全景。出典:水資源機構

大規模なダムの上部から堤の直下に建設した発電所まで、導水路で水を引き込んで発電する方式だ。発電所の建屋は地上にあるが、2基の水車と発電機は地下に設置されている(図3)。1号機は地下90メートル、2号機は地下30メートルにある

tokuyama2_sj.jpg図3 「徳山水力発電所」の建屋。出典:中部電力

 深い場所にある1号機の発電能力は13万9000kW(キロワット)で、浅い場所の2号機は2万4300キロワットだ。両方を同時に運転する場合には水量の制限があるため、合計で16万1900kWになる。これまで中部電力の水力発電所では長野県で運転中の「平岡水力発電所」の10万1000kWが最大だった

 水力発電の出力を決めるのは水流の有効落差と水量である徳山水力発電所の1号機は有効落差が182メートルで、2号機の146メートルよりも36メートル大きい使用できる水量は1号機が最大で毎秒82立方メートルに対して、2号機は約4分の1の毎秒19立方メートルに抑える。両方の合計で毎秒100立方メートルまで発電に使うことができる

徳山水力発電所は1・2号機ともに2014年6月に運転を開始する予定だった。2号機は予定よりも1カ月早く稼働できたが、1号機は1年9カ月も遅れて稼働にこぎつけた。その間に運転開始を3度も延期している。

1度目の延期は着工から約2年後の2011年11月のことで、地下の掘削工事が難航したことによる。徳山水力発電所の設備は水車と発電機を設置する地下室のほか、ダムから水を取り組む導水路や発電後の水を川に送り出す放水路など、大半の設備を地下に埋設する構造になっている(図4)。

tokuyama6_sj.jpg図4 「徳山水力発電所」の設備イメージ。出典:中部電力

地下に設備を建設するためには岩盤まで掘削する必要があるが、事前の調査よりも岩盤の位置が深かったために工事期間が延びてしまった(図5)。その間に豪雪で工事を中断した時期もあり、1号機の運転開始を当初の予定から1年先の2015年6月に延期することになった。

tokuyama4_sj.jpg図5 工事中の様子(2011年11月時点)。出典:中部電力

その後も営業運転を開始する直前の試運転中に発電機に不具合が発生した。水車と発電機の回転部分を支える「スラスト軸受」の温度が上昇したためだ。新たに冷却器を増設する対策などを実施して、3カ月後の2015年9月に営業運転を開始することになった。2度目の延期である。

ころが対策を実施した後もスラスト軸受の温度上昇は収まらなかった。3度目の延期を余儀なくされて、運転開始を半年後の2016年3月に再設定した。その間に原因を調査した結果、回転部に微妙な突起があることが明らかになった(図6)。

tokuyama3_sj.jpg図6 1号機の不具合の原因(画像をクリックすると拡大)。出典:中部電力

回転による摩擦熱で突起が膨張して温度を上昇させていた突起を除去する対策を施して、ようやく正常に運転を開始することができた。2009年10月の着工から6年半を経て全面稼働にこぎつけたそれでもCO2(二酸化炭素)を排出しない大規模な水力発電所の効果は大きい

スマート・ジャパン 2016.03.25

images-3-48-150x150images

 

【関連する記事】