日本のロボ技術→露軍事転用の恐れ

ロシアの軍需産業と関係の深い同国の閣僚が今月初旬、日本の産業用ロボット製造最大手の企業を視察し、この会社に技術移転を求めていたことがわかった。ロシアでは民間の最先端技術が軍事転用されるケースが多く、専門家からは、日本のロボット技術がロシア製兵器の近代化改修に利用されるとの懸念も出始めた。欧米や日本は2014年、対露経済制裁で同国への軍事用途品の輸出を禁止したが、制裁が形骸化する恐れも指摘されている。

関係筋によると、来日したのはロシアのデニス・マントゥロフ産業貿易相を団長とする代表団一行で、今月1日、産業ロボットで日本最大のシェアを誇る大手電気機器会社ファナック(本社・山梨県忍野村)の富士山麓にある工場を視察した。同社は年間7千億円以上を売り上げ、製造業の自動化分野で世界をリード世界43カ国に拠点を置き、ロシアにも03年に合弁会社を設立した

一方、マントゥロフ氏は、軍用ヘリや航空機のエンジンなどを製造する国営企業「オボロンプロム」総裁を07年まで務めていた。視察では産業用ロボットの調達に加え、ロシアの機械工業全体のハイテク化と近代化に向けた技術移転をファナックに強く要請し、ライセンスの取得や合弁企業の設立などを提案した

代表団を案内したファナックの稲葉善治社長はこれに対し、自社製ロボットのロシア進出で協力する意向を示したという。協力の中身は明らかにしていない

マントゥロフ氏は視察に先立ち、日本の対露制裁は両国間の経済協力に「否定的な影響を及ぼしてはいない」と述べていた。

ファナックの広報担当者は産経新聞の取材に、今回の件について「公表できない」とした上で、「法令に反するようなことはしていない」と語った

日本の産業機械の対露輸出をめぐっては1987年総合機械大手の東芝機械が旧ソ連に輸出した工作機械が原子力潜水艦のスクリュー加工に使われて静粛性が増したとして、対共産圏輸出調整委員会(ココム)の協定違反で摘発されたココムは旧ソ連崩壊後の94年に解散しており、今回の件が何らかの輸出規制に抵触するわけではない

しかし、ロシアの軍需産業に詳しい英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の専門家、イーゴリ・スチャーギン氏は、「ロシア産業界では民需と軍需の垣根はなく、民間で導入した技術でも軍事に転用される」と指摘。「技術力や生産性で劣るロシアの軍事産業は日本の最先端ロボット技術が欲しい老朽化した戦略爆撃機Tu160の近代化改修に日本の技術が使われる恐れがある」と警鐘を鳴らした。 (内藤泰朗)

産経新聞  2016.03.13
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