日本では絶滅のカワウソ→釜山で目撃

日本では皮革目当ての乱獲や河川の環境汚染で1990年代に絶滅したとされるカワウソが海を挟んだ韓国・釜山市の市街地で相次いで目撃されている韓国でも絶滅危惧種なのに、国内第2の大都市、釜山は「カワウソの楽園」なのか? 実態を探ってみた

コツメカワウソの赤ちゃん ぬいぐるみのような愛らしい姿

■通勤中に目撃

 「死の川でカワウソ発見!」-。2月、釜山市のテレビニュースで、カワウソの目撃情報が放送された。通勤中の男性が川で泳ぐ姿を見つけた。

その川は市中心部を流れる水営江。全長約19キロの両岸に工業団地や住宅街が広がり、60年代以降の工業化で汚染が深刻化した水が黒く濁り、悪臭が漂う「どぶ川」と呼ばれ、大量の魚が変死したこともあった

しかし、88年のソウル五輪で下流の湾がヨット競技会場として使われたことから汚染が社会問題化。市は環境浄化の取り組みを始めた。2012年からは約20キロ離れた韓国最大級の洛東江から水を引き、大規模な再生事業を行った

98年に韓国の絶滅危惧種1級に指定されたカワウソ。市の河川再生担当者は「水質が浄化され、生息環境も良くなったのだろう」と喜ぶ

■開発で追われ

 釜山市内のカワウソ目撃情報は年に5件程度に上る。ところが、市で特別な保護活動は行われていないという。カワウソは本当に増えているのか? 市の研究機関、釜山発展研究院は14年から3年計画で調査に乗り出した。

調査では市を三つのエリアに分け、河川周辺に無人カメラを設置したり、排せつ物を分析したりしている。これまでのデータでは、15~20匹が生息していると推測される

カワウソは一般に、人間の干渉が少なく、自然が美しい場所に生息している。生態系全体の把握はこれからだが、研究院の金泰佐(キムテジャ)研究員は「大都市の釜山で見つかることに驚いている」と話す

頻繁な目撃を心配する声もある。人間の接近や餌の減少で本来の生息地から追われつつあるとの見方だ

本来、カワウソは人が多い場所には行かないはず。人がカワウソの生息地に近づいているのだ」。河川環境保護に市と共同で取り組む環境保護団体「生命網」の崔大鉉(チェデヒョン)事務局長は、こう言い切る。

市は河川の環境浄化とともにウオーキングコースなども整備した。崔さんによると、開発で餌場が減り、行動範囲が市街地まで広がった可能性があるという

■本物の「楽園」

 韓国には、本物の「カワウソの楽園」もある

釜山市から西に100キロ程度離れた慶尚南道晋州市にある晋陽(ジニャン)湖。飲料水の水源として利用される面積23平方キロの湖で、国がカワウソ保護の取り組みを進めている

湖は69年、水源保護区域に指定された。自然が豊かで、アナグマやヤマネコ、カワセミ、ハヤブサなど数多くの野生動物がいるカワウソの保護活動が始まったのは05年。メディアで生息が紹介されたことなどから、野生生物の特別保護区域に指定された

日本の環境省に当たる韓国の環境部の研究者が06年から無線による追跡調査を行い、生息地と行動範囲を確認した。保護区域を設け、釣りや船の出入り、人の遊泳を禁止。餌の魚を放流したり、他の動物に邪魔されずに餌が食べられるいかだを浮かべたりした

こうした努力が実り、生息数は05年の13匹から、10年は23匹まで増えた。17年から新たな生息地も造成する計画だ。環境部の呉(オ)キチョル研究員は「カワウソは生態系の最上位に位置し、その生息状況が水環境の指標にもなる」と、保護の必要性を強調する

 韓国のカワウソは絶滅したニホンカワウソに近い種類生命網の崔さんは数年前、韓国から日本へのカワウソ寄贈を提言した今も、日本の団体と共同で研究、保護する計画を温める日本で絶滅した教訓を、釜山での保護に役立てるためだ

カワウソへの関心が高い日本と一緒に勉強できれば、日韓交流にもつながる」と、崔さんは期待する

=2016/04/04 西日本新聞=

西日本新聞

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