新鋭潜水艦「じんりゅう」が就役

海上自衛隊の潜水艦「じんりゅう」の引渡式が7日、兵庫県神戸市の三菱重工神戸造船所で開かれた建造を担当した三菱重工の“スリーダイヤ”の社旗が下ろされると、代わりに自衛艦旗が国歌演奏に合わせて艦尾に掲げられた。じんりゅうのキャリアが、正式にスタートした瞬間だった

【フォト】海上自衛隊の潜水艦「じんりゅう」

広い海のどこかで人知れず、深く、静かに潜行している間も、われわれは皆さまのことを忘れることはありません。潜水艦『じんりゅう』はただ今から出港し、国家防衛の任務に就く!」

初代艦長に起用された梅原淳2等海佐は声高に宣言し、乗組員とともに乗艦。音楽隊の演奏に見送られながら、配備先の呉基地(広島県)へと向かった。式典では海自の“歌姫”として知られる三宅由佳莉3等海曹が儀礼曲「海のさきもり」を披露し、乗組員らを鼓舞する場面もあった

じんりゅうは日本政府が豪海軍への売り込みを図る海自の最新鋭「そうりゅう」型潜水艦の7番艦だ長時間の潜行を可能とする大気非依存型推進(AIP)システムを搭載するのが最大の特徴で、水中運動性能が高い「X型」かじも備える

 他のそうりゅう型潜水艦と同様、全長84メートル、乗員数65人、排水量2950トン、速力20ノットで、原子力を使わない通常動力型では世界最大級建造費は約545億円で、艦名は「仁愛の徳を持つ龍」に由来する

艦内に入るためのハッチには、緑色のカバーがかけられていた。海自幹部によると、「ハッチの大きさや厚さから、潜行可能深度などの能力が露呈するのを防ぐため」だという。“機密情報のかたまり”とされる潜水艦の一端といえる

漆黒の艦体に白字で施された「じんりゅう」の文字と「507」の艦ナンバーは、近く消される。隠密行動を基本とする海自の潜水艦部隊にとって、どの艦が、どの海域で、どんな任務に従事しているかは秘中の秘。敵対する第三国に識別を許さず、任務データを蓄積させないためにも、全ての潜水艦から艦名などを消去するのは鉄則だという

じんりゅうの就役により、海自の潜水艦は17隻態勢となった海自の潜水艦は平成6年3月から16隻態勢が続いていたが、22年ぶりに増強された形だ。これまでは新型の潜水艦の就役と同時に、老朽化した潜水艦が退役してきたが、今年からは順次増えていく防衛省は平成33年度末までに22隻態勢を整える計画で、海自内では今年を潜水艦の“増勢元年”と位置づけている

海自幹部は「潜水艦の増強により、日本周辺海域の防衛態勢や偵察任務の遂行能力などが手厚くなる」と強調。武居智久海上幕僚長も8日の記者会見で「活動するエリアが今後はより広くなっていく」と指摘した

 念頭にあるのは、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める中国海軍であることは明白だ。世界でも有数の能力を持つ海自の潜水艦が増強され、周辺海域を秘密裏に潜行しているとなれば中国海軍にとっては脅威となり、近海での身勝手な行為を封じる抑止力となる

さらに、隻数が増えることで友好国海軍や自衛艦との共同訓練にも戦力を回せる余裕も生まれ、潜水艦部隊の練度がさらに増すことも期待されている。厳しさを増す安全保障環境を乗り切るためには、「潜水艦による静かな威圧」(海自幹部)が不可欠といえる。(政治部 石鍋圭)

産経新聞 2016.03.17

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