新国立競技場→妹島和也プラン②

猪瀬直樹都知事もブエノスアイレスでの歓喜絶頂から急転直下のご難続きで、自身の選挙“裏金”疑惑が浮上してどうにも言い逃れ出来ないところに追い込まれつつあるのに加えて、東京五輪のメインスタジアムとなる新国立競技場の余りにバブリーで不細工かつ無思慮な建設プランに対する批判が大きく広がって、少々の手直しでは済みそうにない重大事態に直面している。新国立劇場はまさに国立で、直接に都知事の問題ではないが、それにしても福島第一原発の汚染水ダダ漏れ危機とも併せて、ケチがつき放しの五輪騒動である

●著名建築家ら100人が見直し要望

批判の先頭に立っているのは、建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞はじめ内外の多くの賞を得て世界的に知られる大御所の槇文彦=元東京大学教授で、彼が発起人代表となって、著名な建築家に加えて赤坂憲雄(民俗学者/学習院大学教授)、小中陽太郎(国際大学理事長/元富士ゼロックス会長)、中沢新一(多摩美術大学教授)、御厨貴(政治学者)、宮台真司(社会学者)ら著名文化人も含む約100人の発起人・賛同者の連名で、11月7日、下村博文=文科/東京五輪担当相に「新国立競技場に関する要望書」を突き付けた

その要点は、新国立競技場がロンドン、アテネ、シドニー大会の主会場と同程度の8~10万人の収容力でありながらそれらより2~3倍(東京ドームの2.5倍超)の延べ床面積のものを、それらよりも狭い敷地に建てようとする過大なもので都市景観、観客の安全、五輪後の維持管理が懸念されるので「計画条件を根本から見直されることが必要」というものまたその行動に至った経緯と心境について、槇は、「日経ビジネス・オンライン」11月27日付に緊急寄稿している

★要望書全文と発起人・賛同者名簿:

http://world-architects.blogspot.jp/2013/11/nationalstadium-news2.html

★日経ビジネス・オンライン:

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20131122/256189/?n_cid=nbpnbo_mlp&rt=nocnt

こうした声に押されて、27日に開かれた日本スポーツ振興センター(JSC)の「有識者会議」は、

(1)延べ床面積を29万平米から2割減らして22.5万平米とする

(2)そのため貴賓席やスポーツ博物館、ショッピング施設など付帯設備を縮小する

(3)8万人収容の観客席は縮小しない

(4)五輪史上初の開閉式ドームも当初計画通りに設置

─などの見直しの方向を決め、それによって当初は概算3000億円とも言われた総工事費を1800億円程度まで圧縮することになった

しかし、縮小された延べ床面積はそれでも五輪史上最大であるし、高さは最大70メートルで変更はないので、最大の懸念である都内有数の緑多き空間である明治神宮外苑の景観を害するという問題は消えない8万人規模の死守は、それが国際標準でありIOCとの約束であることが理由とされて、「6万人で十分」「足りなければ一部仮設で」という槇らの提案は退けられた。また開閉式ドームは、それだけで100~150億円ほどを費やすことになりそうだが、五輪の開会式・閉会式の悪天候対策に万全を期す、その後の文化イベントには必須、などの理由で設置の方向が固まった

要望書発起人の1人である古市徹雄=千葉工大教授が言うように「苦し紛れに面積をカットしただけで本質的な問題は何も解決されていない」(東京新聞28日付)というのが本当である

28、29両日には自民党の「無駄撲滅プロジェクトチーム」(河野太郎座長)がJSCや文科省の担当者を呼んで、「デザイン案決定の経緯が不透明」「五輪後の利用について、競技場の年間収入45億円というが、市場調査もしておらず非現実的などと計画のずさんさを質したが、答えはしどろもどろだった

これを検討しているJSCとは要するに文科省の天下り機関で、そこで組織された有識者会議は、佐藤禎一元文部事務次官をトップに、猪瀬都知事、竹田恒和JOC会長ら政界、スポーツ界関係者ら14人で、建築の専門家は同プランの国際コンペの審査委員長を務めた安藤忠雄だけである。安藤は、自分の責任で選んだプランを擁護するに決まっているし、他のメンバーは「あれも欲しい、これも欲しい」という立場だから、この場で抜本的な見直しが行われるはずもない。

参考 高野 孟 2015.07.18

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